2007年4月発売
淫行事件で仕事も家族の絆も失くした僕は、故郷・宮崎を訪ねる旅に出た。生き別れた実の父が暮らす土地。無軌道な生き方を変えられず、妾だった母に深く依存しながら母を責め、最後は捨てられたあの男を、僕は受け入れ「殺す」のだー。自分の血と過去に向き合う決意を固めた主人公を待つ衝撃の結末。芸人・そのまんま東が「東国原英夫」としての素顔を赤裸々に綴った自伝的家族小説。
井上孫四郎は、将来を有望視される南町奉行所の風烈廻り与力だったが、父親との反目からお役儀返上し、しがない浪人の身となった。貧乏ゆえの金欲しさで町のご隠居の愛犬捜しを引き受けた孫四郎だったが、ある日「お父ちゃんが迷子になった」と言い張る少年に出会う。孫四郎はその父親を必死に捜し出そうとするが、少年親子には並々ならぬ曰く因縁があった…。愛妻や仲間たちの助けを得ながら、はぐれ与力・孫四郎が人情の町、江戸を駆け回る。
世の邪悪に、容赦ない剣を振るう浪人・鬼怒玄三郎。理不尽な悪党を断罪する死斬人を裏稼業に持っていた。豪商・紀伊国屋文左衛門の影の用心棒を務める玄三郎は、幕府御用達を笠に着て、儲けた金で女を泣かし悪逆無道を繰り返す札差商・中内屋竜之助の始末を密かに依頼された。そして同時に、ふとした縁で繋がった女の窮状を救うことになる…。中内屋があぶく銭で雇った無頼漢や、闇の刺客人の凶刃を撥ね返し、玄三郎の剛剣が悪を斬撃する!好評シリーズ第3弾。
甦る連続殺人の恐怖。列島を震撼させ、捜査陣を翻弄し続けた稀代の凶悪・知能犯罪を綿密な取材で再現したノンフィクション・ノベルの金字塔。直木賞受賞作を大幅改稿した決定版。
“日本最強”の堕剣士・錆白兵から叩きつけられた挑戦状。無刀の剣士・鑢七花と奇策士・とがめは、薄刀『針』を所有する錆から、その刀と、日本最強の称号を奪い取ることはできるのかー?伝説の刀鍛冶・四季崎記紀が完成させた“刀”は十二本ー残るは九本。刀語、第四話の対戦相手は、日本最強の称号をほしいままにする錆白兵。衝撃の12カ月連続刊行企画“大河ノベル”第4弾。
竹本京子、20歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、引っ越しを機に変わり者のおばあさん杉田万寿子に出会った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通して、意外にも二人は仲良くなってゆく。やがて、気丈だった万寿子に認知症の症状が出てくるようになり、京子は自ら万寿子を介護する決意をするが…。
戦国大名がしのぎを削った乱世の日本。その裏側で、忍びの者たちは熾烈な闘いを繰り広げていたーみじめな生活から逃れるべく伊賀を抜けた若き下忍の運命を描いた「下請忍者」、武田信玄が織田信長のもとに送り込んだ謎の忍者を取り上げた「忍者四貫目の死」、優れた術者二人が死力を尽くして対決する「伊賀の四鬼」等、司馬遼太郎が世に送り出した忍者小説五篇を収録した短篇集。文庫オリジナル。
高校生になった加那子は、幼なじみの栄順と再会。加那子の兄・セイリョウの「バンドやるどー」の一声で、太陽が照りつける牛小屋での練習が始まった。栄順が歌、マコトがギター、セイリョウがドラムで、加那子のパートは、恥ずかしがり屋でうまく歌えない栄順を励ますこと…「ずっと歌った方がいいさ、栄順の歌で幸せになる人がいるから」。四歳のときに「うた」を探しに奄美大島に行ったきり音沙汰のない父・セイイチと共に母・澄子がつくったバー“インタリュード”と、おばぁの美容室を手伝いながら、栄順との恋を育んでいく加那子。バンドには同級生の浩がキーボードに加わり、東京行きをかけたバンド大会で優勝を勝ち取るも、その夜セイリョウに思わぬ運命が降りかかる-。みんなの東京デビューの夢は?そして、ふたりの不器用な恋の行方は?ひとを恋しく想うきもちを知って、ひとつ大人になった加那子は、ある決意を秘めていた…。映画では語られることのなかった「セイイチと澄子の恋」を併録した中江監督初の書き下ろし小説。
女好きの悪友が念者のふりをしろと言いだした!?嫁入り前の娘にできた子供の父親は一体誰なのか。玄関で揉めごとの裁定をする町名主の息子として生まれた麻之助。これが、たいそうなお気楽もので、周囲は気がもめるのだが。ふうわり胸が温まる畠中恵ワールド新シリーズ。
徳川安泰の基礎を固めた家光の陰には、機知に富んだひとりの老中がいた。松平伊豆守信綱、通称「知恵伊豆」は、徳川家に持ち込まれた無理難題を次々に解決する。島原の乱の鎮圧を始め、由井正雪謀叛を未然に防ぎ、川越藩主として野火止用水を完成させるなど、機知と行動力をいかんなく発揮した男の「逆転の発想」。
私は愚図で、腑抜けだった。大学を出て、広告代理店に勤めるも、金儲け主義に嫌気が差し、辞めてしまう。その後、職を転々とし、流れ流れて料理屋の下足番になった。世間に背を向け、抜き身で生きていこうとした青年期から小説家になるまでの葛藤を執拗なまでに描きこんだ、私小説作家・車谷長吉の真骨頂。
「かわせみ」へ奉公に来た頃は、山出しの猿公といわれたお石だが、女中頭のお吉の丹精の甲斐あって、気のつく働き者の娘に成長した。ある日、大店の嫁にという話がくる。一大決心で嫁ぐことにしたものの、お石も「かわせみ」の人々もその日を思うと何故かしら涙が出てきてしまうのだった。表題作ほか全八篇。不朽の人気シリーズ。
浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化。
鳥羽・伏見の戦で近代的な軍装の薩長軍に、なす術もなく敗れた新選組。時代はすでに日本刀ではなく、小銃の時代になったと土方歳三もわかってはいるのだが、その後も、甲府、宇都宮、会津で戦い続け、そして敗れた。北の果て箱館に行き着いた歳三は、最後の戦いに臨む。新世界に背を向け、負け続けた漢の姿を鮮烈に描く。
妻と赤ん坊をホテルに残し、浜辺を散策する男。中洲の風俗で働く十九歳の少女。スーパーの店員から介護士に転身した青年。突然死した最愛の夫に愛する女性がいたことを知った妻。そして水族館から逃げたイルカは、どこを泳いでいるのか…。深い喪失感を抱えながら生きていく人たちを、祈りにも似た言葉で描く四篇の物語。
「明るく暗れている海だって始終さざ波はあるもの、それだから海はきらきらと光っている。」-手習いの師匠を営む母と年頃の娘、そのひっそりと平凡な女所帯の哀歓を、洗練された東京言葉の文体で、ユーモアをまじえて描きあげた小説集。明治の文豪幸田露伴の娘として、父の最晩年の日常を綴った文章で世に出た著者が、一旦の断筆宣言ののち、父の思い出から離れて、初めて本格的に取り組んだ記念碑的作品。
小さなアクアプラント・ショップを営むぼくの前に、ある夜、一人の美しい女性が現れる。店のドアに貼ってあったアルバイト募集のチラシを手にしてー。採用を告げると彼女は言った。「私住むところがないの。ここに寝泊まりしてもいい?」出会うこと、好きになること、思いやること、思い続けること、そして、別れること…。ミリオンセラー『いま、会いにゆきます』の著者による、最高のロマンチック・ファンタジー。
強烈な百合の匂いに包まれた洋館で祖母が転落死した。奇妙な遺言に導かれてやってきた高校生の理瀬を迎えたのは、優雅に暮らす美貌の叔母二人。因縁に満ちた屋敷で何があったのか。「魔女の家」と呼ばれる由来を探るうち、周囲で毒殺や失踪など不吉な事件が起こる。将来への焦りを感じながら理瀬はー。