2007年発売
20歳にして人生最悪のときを迎えた俺。残された時間は、バンド仲間と姿をくらました最愛の恋人を見つける。東京から沖縄、そして日本の最南端へ。疾走感たっぷりに繰り広げられるロードノベル。
新聞記者をやめ、新たに雑誌にかかわる大示が半生をふりかえる。少年期をへて、六〇年代、政治の季節に青春を迎えた大示のかたわらにいたのは盟友・河井だった。大示が思いをよせる田中早苗は、河井へひきよせられる。三人の運命が絡み合う中、政治の季節最後のクライマックス=東大・安田砦の陥落が迫る。
これが正真正銘、本物のモンスターのつくり方だ、デイヴィ。生と死の間で引きずりまわして、苦しませて、怖がらせるー町へ越してきた少年スティーヴンのいうままに粘土男に生命を与える儀式を手伝ったデイヴィ。その直後に憎んでいたけんか相手が死んだと知って、とんでもない怪物をつくり出してしまったと気づき…。善と悪の境目を問いかける、現代版『フランケンシュタイン』カーネギー賞、コスタ賞(旧ウィットブレッド賞)受賞作家、最新作。
友右衛門が市中引廻し、斬首のうえ晒し首にされた。「おとっつあんは無実なんです」お弓の悲痛な叫びに、親子と親しい青柳剣一郎の胸は痛んだ。一度下された裁きは撤回されない。だが、もし冤罪だとしたら?奉行所で孤立しながらも再捜査する剣一郎。一方、お弓の兄も人殺しの濡れ衣を着せられる。兄の斬首執行が刻々と迫るなか、真相究明に剣一郎が奔走する。
父と娘のあいだに横たわる秘密と、人生の黄昏にある男女の濁りない情愛。ミス・カサブランカとよばれる独身教師の埋めようのない心の穴。反対を押し切って結婚した従兄妹同士の、平らかではない歳月とその果ての絆。-人生の細部にあらわれる普遍的真実を、驚くべき技量で掬いとる。北京生まれの新人女性作家による、各賞独占の鮮烈なデビュー短篇集。第1回フランク・オコナー国際短篇賞受賞!PEN/ヘミングウェイ賞受賞。ガーディアン新人賞・プッシュカート賞受賞。New York Times Book Reviewエディターズ・チョイス賞受賞。The Best American Short Stories2006収録。グランタ「もっとも有望な若手アメリカ作家」2007選出。
何かが記憶の底で閃いた。あの果てしなく深いプールの底で見たものは、こんな感じに似ていたっけ…。「それが、あなたを引きずり込んだものの正体?」結子は立ち上がって、白い木蓮を見つめながら言った。「その白い花のようなものは、向こうの世界に行きかけた僕を、そっとこちらに押し戻してくれたような気がするんですよ。あの花を見なかったら、僕は…」木蓮を木恋と書いた人…(『木蓮忌』より)。命こそ絶ゆとも絶えめ、定めなき世の常ならぬ仲の契りを。狂気と享楽、愛と幻想の世界へ。
内科医の月島は恋人の医師、真咲と別れた淋しさから、野性的な色香を漂わせた行きずり男と激しい一夜を過ごす。互いに素性も明かさぬままの一晩限りのエクスタシー…だが、それからほどなくして、月島はその男が近所に開業した整形外科医院の院長、氷室だと知ることに…。白昼の診察室…淫靡に張り巡らされた氷室の愛欲の罠に、月島はたちまち絡めとられていく。甘美な駆け引きに乱れるドクターたち。書き下ろし。
明治時代ー留学先のドイツで知人に騙され、闇市に売られてしまった公爵家次男の陸軍少尉、晴彦。彼を買ったのはサリジタール王国の第四王子ファイサルだった。狙った獲物は決して逃さぬ、黄金色の鷹の瞳をもつ王子ファイサルは、その夜のうちに晴彦を自国へと連れ去る。妾妃としての屈辱的な責めの数々に、自尊心を打ち砕かれながらも晴彦は…。内紛に揺れる灼熱の王国…狂い咲く妖艶エロス書き下ろし。
20世紀イランを代表する大作家サーデグ・ヘダーヤトが、第二次大戦前後の激動のイランにあって、時代の波に翻弄されつつ、ときにリアルに、ときには表現主義的に、ときには風刺的に、またときには内省的、哲学的に時代の諸相を描いた珠玉の選訳十篇。
愛ー、それは気高く美しきもの。そして、この世で最も恐ろしいもの。毒島半蔵の歪んだ妄想が、この世を地獄へと塗り替える。虚ろな心を抱える吉美が、浮気を続ける亭主に狂気をぶつける。傷を負い言葉を失った、薄幸の美少女・まゆか。実の娘に虐待され続けている、寝たきり老人・英吉。暴風のような愛情が、人びとを壊してゆく!新堂冬樹にしか描けなかった、暗黒純愛小説集。
「世界の果てにある食堂」を舞台にした物語を書きあぐねる吉田君は、奇妙な連作小説を予告して消息不明となった謎の作家=ジュールズ・バーンを知る。「物語」の入り口を探し求める吉田君がいつしか迷い込んでいたのは、バーンが企んだ連作の世界なのかー。ビートルズの“ホワイト・アルバム”を軸にしてシンクロする過去と現在。16+1の短篇のリンクが「物語」の不思議を奏でる。
霊山・吉野の桜守と、大坂・堺の大店の娘。決して結ばれることのないふたりを繋ぐのは、吉野の山に咲き誇る満開の桜-。ひとりの男の命を懸けた愛の証。決してかなわぬあの女への想い。長年にわたる純愛を貫いた男女を描く、せつなくも美しい恋物語。
剣術と柔術を組み合わせた刀法起倒流の遣い手、瀬戸七郎太。ある事件がきっかけで、南町奉行所与力から同心に格下げされた。元同僚からは蔑まれ、不慣れな仕事の辛さに悲哀を感じる日々。給金が減ったのに愚痴も言わぬ妻の顔を見るにつけ、心が重い。極悪人をぶちのめし、手柄を立てて与力に戻る!怒りの覚悟を胸に今日も本所深川を歩き回る。やがて持ち前の腕と推理で難事件を次々に解決していく七郎太だが、奉行所の反応は意外と…。話題の著者の新シリーズ。