2007年発売
13歳で明治維新を、16歳で廃藩置県を、20代で西南戦争を体験し、巡査となった津田三蔵。病いがちの母を案じ、困った兄に悩まされ、妹には櫛や半襟を見立ててやる。不器用で几帳面、ごくまっとうなこの男が、なぜロシア皇太子を襲ったのか。近代化から逸れ、否応なく追いつめられていった一人の男の悲劇を、愛惜をこめて描き出す。
僕は「片説家」。「小説家」と違って、純粋に「特定の個人に向けて物語を書く」仕事だ。そこにあるのは、創作とはいえないリクエストとマーケティングだけ。いや、正確には「片説家」だった。四年間この仕事をしてきたが、今さっき解雇されたのだ。27歳の誕生日だというのに…。あてもなく過ごしていたところへ、「私のために小説を書いて欲しい」という女性が現れた。奇しくも、失踪しているという彼女の妹は、かつて僕のいた会社が、片説の原稿を渡した相手だという-。
大奥で「玉の輿」として上りつめた五代将軍・綱吉の母の激烈な一生。京での幼きお玉時代から、三代将軍・徳川家光の側室となり従一位まで上りつめた桂昌院。女の嫉妬渦巻く大奥での真剣あいうつ駆け引き。波瀾の女人の一生を描く書き下ろし長編。
勅任艦長への昇進の内示を受けたホーンブロワーは、ホットスパー号を後にした。給水船に乗った彼は、正式な任命を受けるため英国へ向かう。だがその途上、フランス艦に遭遇。その戦闘で、彼はナポレオンとの戦いの行方を左右する重要なものを手に入れるが…未完の長篇として有名な表題作を初め、不滅の海洋冒険シリーズが生まれた秘話を綴る「ホーンブロワーの誕生」と短篇二篇ほか用語解説などを収録。ファン必読の書。
1939年、一人のヒーローが誕生する。作家レイモンド・チャンドラーの手によって生を受けたこの私立探偵は圧倒的な支持を受け、以後20年間にわたって活躍した。その名はフィリップ・マーロウ…ハードボイルドの枠を超え、時代を超えて支持されてきたヒーローを現代の気鋭ミステリ作家たちが甦らせる、画期的トリビュート・アンソロジー!チャンドラー自身の手になる唯一のマーロウもの短篇「マーロウ最後の事件」収録。
絶世の美女ヘレネをめぐって始まったトロイア戦争を戦っていたギリシア神話の英雄たちは、圧倒的な力をふるう神々に対してついに叛旗をひるがえした…これまで、地球化された火星のオリュンポス山の神殿に住む神々は、トロイア側あるいはギリシア側につき、英雄たちとともに戦争をしていた。その戦いは、まさにホメーロスの書いた『イーリアス』そのままの展開だった。だが、神々にナノテクで復活させられ、戦争の経過を観察させられていた学師ホッケンベリーの行動が、トロイア戦争を英雄たちの神々への挑戦に変えてしまったのだ。木星の衛星系に住む半生物機械モラヴェックたちは、地球化された火星近傍での量子活動異常の真相を探るべく、調査隊を送りこんだ。やがて、調査隊の一員だったエウロパ属のマーンムートとイオのオルフの活躍で、大挙して火星に到着したモラヴェックの援軍が、英雄たちと手を組み、ともに神々との戦いに挑んでいく。圧倒的な力を持つ神々と戦争をはじめたギリシア神話の英雄たちとモラヴェックの運命は…ローカス賞を受賞した『イリアム』に続く、待望の完結篇。
はるか未来の地球で、数千年にわたり、仕事も学問もせず、衣食住のあらゆることを自動機械の下僕たちに任せ、パーティーに明け暮れていた人類の生き方は、ある日、突然襲ってきた大流星雨とともに、大きく変わった。世界の謎を探るべく旅に出たハーマンとディーマンの冒険で、地球をめぐっていた小惑星が落ち、世界中の送電が停止され、自動機械の下僕は動かなくなり、これまで忠実な召使いとして働いていたヴォイニックスたちが人間を殺しはじめたのである。女主人アーダの住むアーディス・ホールに集う人々は、そこに滞在していたオデュッセウスの指導のもと、大きく変貌した世界の状況に対処すべく、独自の活動をはじめていた。だが、そこにも恐るべき敵が近づいてきつつあった…“ハイペリオン”シリーズで人気のシモンズが、ギリシア神話をめぐる物語をはじめ、シェイクスピア、シェリー、ブレイク、ブラウニングなどの戯曲や詩を織りこみつつ描く、トロイア戦争をめぐる壮大なSF巨篇。
イスラエルの都市テルアビブに瀟洒な家をかまえるアラブ系の医師アーミンは、最愛の妻シヘムとともに幸福な生活をおくっていた。だが、あの自爆テロがすべてを変えた。19名の犠牲者。その中にシヘムがいたのだ。呆然とするアーミンに刑事は衝撃的な言葉を吐く。「テロの首謀者はあなたの妻だ」妻は妊婦をよそおって爆弾を腹に抱え、自爆したという。なぜ彼女がそんなことを…。アーミンは真相を探るため、妻のルーツを探り、やがて想像を絶する真実に辿りつく。イスラムの夫婦の見えざる亀裂を描き出す、哀しみに満ちた愛の世界。テロが横行する極限下、イスラム社会の至高の愛と究極の絶望を描いた傑作。
拓己と省吾の“有機融合”によって誕生するスーパーヒーロー・イズミは、行方不明の少女・響子を捜し求め、西へ向かう。“ジュリア”の創造した合成人間カスミの攻撃をかわしつつ、ついに“京都”へと入る。西の組織・白十字を率いる“千里眼の岐世子”とは、果たして何物なのか?そしてイズミの前に立ちはだかるは、最強の合成人間アスカ。その勝負や、如何に!?巻末に、著者・若木未生氏と、イラストレーター・岡崎武士氏の特別対談を収録。今だから言える(?)裏話が満載。ファン必携の書。
新署長赴任の朝、署の正面玄関前で衝撃的事件が起きた。刑事と、連行中の容疑者が雑居ビルから狙撃されたのだ。目の前で事件に遭遇したK・S・Pの沖幹次郎刑事は射殺犯を追う。銃撃戦の末、狙撃犯のひとりを仕留めるが、残るひとりは逃亡した。だが、それは新宿に血腥い嵐が吹き荒れる序章にすぎなかった…新宿を血で染めるチャイニーズマフィアと暴力団の抗争。野性刑事・沖幹次郎が真相を求めて疾駆する!長篇ハードアクション。
『こゝろ』は漱石作品の中でも最も研究され、語られつづけている。それはつまり、『こゝろ』論が近代文学研究の縮図であり、代表であるとも言えるだろう。その数多くの言説の中から、すぐれた論の最もすぐれたところ、問題となる箇所を引用し、主題・構造・語り・視点・人物像などの核心を浮き上がらせる。『こゝろ』像の変遷がわかる、『こゝろ』を研究しようとする人の必携の書。『こゝろ』文献目録を付す。
アメリカで家族とともに暮らしていたサッカー好きの青年サンティアゴは、ある日、スカウトに才能を見出され、イングランドの名門ニューカッスル・ユナイテッドの練習生となる。数々の試練を乗り越えながらも確実にゴールを決め、チームに勝利をもたらすサンティアゴ。やがてチームになくてはならないスター選手となった彼は、婚約者ロズとともに充実した日々を送っていた。そこへ突然、世界最強チームと名高いスペインのレアル・マドリードから移籍話が舞い込んだ!舞台を、イングランド・プレミアリーグから、ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグへと移し、サンティアゴの新たな挑戦が今始まる。
淫行事件で仕事も家族の絆も失くした僕は、故郷・宮崎を訪ねる旅に出た。生き別れた実の父が暮らす土地。無軌道な生き方を変えられず、妾だった母に深く依存しながら母を責め、最後は捨てられたあの男を、僕は受け入れ「殺す」のだー。自分の血と過去に向き合う決意を固めた主人公を待つ衝撃の結末。芸人・そのまんま東が「東国原英夫」としての素顔を赤裸々に綴った自伝的家族小説。
井上孫四郎は、将来を有望視される南町奉行所の風烈廻り与力だったが、父親との反目からお役儀返上し、しがない浪人の身となった。貧乏ゆえの金欲しさで町のご隠居の愛犬捜しを引き受けた孫四郎だったが、ある日「お父ちゃんが迷子になった」と言い張る少年に出会う。孫四郎はその父親を必死に捜し出そうとするが、少年親子には並々ならぬ曰く因縁があった…。愛妻や仲間たちの助けを得ながら、はぐれ与力・孫四郎が人情の町、江戸を駆け回る。
世の邪悪に、容赦ない剣を振るう浪人・鬼怒玄三郎。理不尽な悪党を断罪する死斬人を裏稼業に持っていた。豪商・紀伊国屋文左衛門の影の用心棒を務める玄三郎は、幕府御用達を笠に着て、儲けた金で女を泣かし悪逆無道を繰り返す札差商・中内屋竜之助の始末を密かに依頼された。そして同時に、ふとした縁で繋がった女の窮状を救うことになる…。中内屋があぶく銭で雇った無頼漢や、闇の刺客人の凶刃を撥ね返し、玄三郎の剛剣が悪を斬撃する!好評シリーズ第3弾。
甦る連続殺人の恐怖。列島を震撼させ、捜査陣を翻弄し続けた稀代の凶悪・知能犯罪を綿密な取材で再現したノンフィクション・ノベルの金字塔。直木賞受賞作を大幅改稿した決定版。
“日本最強”の堕剣士・錆白兵から叩きつけられた挑戦状。無刀の剣士・鑢七花と奇策士・とがめは、薄刀『針』を所有する錆から、その刀と、日本最強の称号を奪い取ることはできるのかー?伝説の刀鍛冶・四季崎記紀が完成させた“刀”は十二本ー残るは九本。刀語、第四話の対戦相手は、日本最強の称号をほしいままにする錆白兵。衝撃の12カ月連続刊行企画“大河ノベル”第4弾。