2008年11月発売
いじめで苦しむ子供が少しでも減りますように、優しさに包まれた世界が広がりますように。小学校を舞台にした2つのいじめを描くオムニバス小説。悲しみをかかえるアユミと鮎菜がそれぞれに見出した道は…。子供だけでなく、学校や教師、現代社会に一石を投じる渾身の一作。
見ず知らずの夜鷹を庇い、朝右衛門は下段に構えた。抜き放った刀身は月光を吸い、刃紋は青々と怪しい陰を映す。世に知られた大業物、千子村正。首斬り役人こと公儀御試御用役、将軍の佩刀を吟味するはずの山田家当主が、徳川に仇なす妖刀を佩びている…。労咳を病み、死界へ片足を入れた朝右衛門を待ち受ける敵は、鬼か蛇か?夜陰に響く山田流居合抜き、裂帛の気合。新次元の時代小説、ここにあり。
薬師の硯杖は、犬以上と自負する鋭い嗅覚を武器に、女たちの人に言えぬ悩みを癒してきた。ある日、性具屋の若い女主人から、店秘伝の媚薬を再現してほしいと依頼され、薬草の知識と鋭敏な嗅覚とを駆使して媚薬を作り上げる。夫との不仲に悩む武家妻、生きるために体を売る女郎、男は煩わしいという少女たち…、何人もの女を媚薬と硯杖の魔羅が極楽浄土へと導いていく。好評時代官能シリーズ第3弾。
箕之助が献残屋「大和屋」を営む芝の近くに新しく寄合茶屋が店開きすることになった。新装開店の挨拶用に扇子などを注文しに大和屋を訪れた若い主人・春治は、役者にしたいような色男で金もあるようだが、応対した箕之助と女房・志江は春治の様子に不審なものを感じる。密かに春治の正体を探る箕之助は彼の過去の許されざる悪行を知り、街道の用心棒・寅治郎とともに成敗する…。書き下ろし好評シリーズ第7弾。
「奥さんから頼まれごとしてますねん。わしと一緒に出かけはりませんか」亡き妻の遺言を携えてやってきたのはワンボックス・カーに乗ったおっちゃんだった-。古美術、骨董、山野草。稀代の数寄者、佛々堂先生が繰り広げる一期一会の「夢まぼろし」の世界。
さて大陸のまんなかに、うす紫の湖があって、そのほとりには一輪、見たことも聞いたこともない花が、恥かしそうに控え目にこっそり咲いておりました。「醜い花」というのがその花に冠せられた名前でしたー。
2014年、中国。新聞社の北京特派員・田波は、重慶の暴動を知り現地に赴く。それは策謀渦巻く中国の深い闇への入り口だったー。北京五輪から6年、役人の腐敗や農村の困窮に対する人民の不満が、やがて大きな奔流となって天安門になだれ込む!綿密な取材に基づいて描かれた、これぞ近未来小説の決定版。
保元・平治の戦いに相次いで勝利をおさめ、平清盛は武士として、栄華の絶頂を極める。しかし高位を独占する平家の横暴ぶりに、不満を募らせる源氏や貴族勢は、打倒平氏の準備を着々と進めていたー鹿谷の謀議発覚後、後白河法皇の裏切りに業を煮やした清盛は、ついに法皇を幽閉し、幼い安徳天皇を連れて福原遷都を強行する。
不倫相手と夏休み、キューバに旅立った女性教師を待ち受けていたのは非難の嵐だった。表題作の他、女同士の旅で始まった生々しい性体験告白大会、若い女の登場に翻弄されるホームレスの男達、など七つの短篇を収録。女性の奥底に潜む毒を描き、直木賞受賞以降の刺激的かつ挑戦的な桐野文学の方向性を示す。
恋人と初めて結ばれたあと、東京を離れ、傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。外の世界から切り離された、忙しくも静かな生活。その後訪れた別荘で、キミコは自分が妊娠していることを思いがけない人物から告げられる。まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、やさしく、繊細に描いた長編小説。
殺すだけでなく、その人物の生きて来た痕跡までも消してしまう「消し屋」。仕事を一つ終え、オカマの蘭子とともに沖縄へ向かった消し屋のもとに、若き天才を自殺させてほしいという依頼が舞いこんだ。どうやって天才を追い詰めるのか。沖縄の地に忌まわしくも哀しい記憶が蘇る。大藪春彦賞受賞の傑作。
全寮制の名門女子高を次々と襲う怪事件。一年生が塔から墜死し、生徒会長は「胎児なき流産」で失血死をとげる。その正体を追う女探偵「黒猫」と新入生の優子に追る魔手。背後に暗躍する「ジャック」とは何者なのか?「イニシエーション・ラブ」の著者が、女性に潜む“闇”を妖しく描く衝撃のデビュー作。
警視庁公安部の倉島警部補は、自分と因縁のある元KGBの殺し屋ヴィクトルが、ロシア人貿易商のボディーガードとして日本に入国していると知らされる。そして、その貿易商が帰国前日に密会していた外務官僚が謎の死を遂げた。ヴィクトルたちを追い、倉島はモスクワに飛ぶ。緊迫の追跡捜査を描く、アクション・ノヴェルの傑作。
緑川有里は、モデル事務所を経営する横溝と知り合い、関係を持つ。すべてを手に入れて人生に飽いたような横溝に、有里は深い憐れみを感じて縛られていく。「他の男とセックスして、おれに報告してくれよ」-横溝の屈折した要求に、有里は身近な男と次々に肉体を重ねる。帰るべき場所を失って哀しく迷走する愛を描き出す秀作。
ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった!立合いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司…本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。
殺人の罪で服役後、極道の世界に飛び込んだ“とっぱくれ”(はねっ返り者)村上義一。組織内での栄達をひたすら目指すが、幼少から慕っていた兄貴分の美山と親分・松原との間で、徐々に微妙な立場に立たされてゆくー。高度成長期の神戸を舞台に、まっすぐに生きようとした男の姿を鮮烈に描く。
“ある難事件”を解決し、安住できる住処を探していた名探偵の兄弟二奈と参たち二人が見つけた激安物件-それは曰く付きアパート青薔薇荘だった。ワケアリの理由は、アパートで起こった怪事件。過去に同じ部屋で、二度も未解決の殺人事件が起きていたのだった…。誰がどうやって、そしてなんのために!?本格ミステリを愛する著者が仕組んだ驚愕の結末とは。
時は幕末。北但馬の農村で暮らす清吉は、病身の母と借金を抱えながらつましい暮らしを送っていた。ある日、私塾仲間の民三郎が刃傷沙汰を引き起こしてしまう。友を救おうと立ち上がる清吉。だがこの一件の波紋は思わぬ形で広がってゆき-。若者たちが「新しい国」という夢に浮かされた時代、変わりばえのしない日々のなかに己の生きる道を見出そうとした男の姿を描く、傑作時代小説。