2008年9月発売
平安の都では、奇妙な出来事が次々と起きていた。巨大な蜘蛛の牽く車が姿を現わし、孕み女が、たてつづけに腹を裂かれ殺された。そんななか、顔にできた瘡が突然しゃべりだした平貞盛に晴明と博雅が呼び出される。それらは、やがて都を滅ぼす恐ろしい陰謀へと繋がって行く…。陰陽師シリーズ待望の傑作長篇。
晴明と博雅は俵藤太とともに、平将門の死の謎を追ううち、将門の遺灰を盗み出した者がいたことを突き止める。事件の裏に見え隠れする将門との浅からぬ因縁。誰が、将門を復活させようとしているのか?そして、その背後に蠢く邪悪な男の正体とは?ラストまで息をつかせぬ展開と壮大なスケールで読ませる人気シリーズ長篇。
マッチョだが気が弱い神島は、就職先の養護施設で「バケツ」というあだ名の少年と出会う。やや知的障害と盗癖があり、親兄弟にも見放された彼と同居を始めた神島は、生活費を稼ぐため、日焼けサロンや無認可保育園を立ち上げるが、トラブルが続き…。理由なき愛を描いた表題作「バケツ」を含む連作小説集。
幼い日、恋におちた美貌の婚約者は私の成長を待たずに殺された。舞台は11世紀。都人が太平を謳歌する宋の都で育った茶商のお転婆娘、晏芳娥は、婚約者の遺志を継ぐべく、時の権力者、司馬光を付け狙う。白蘭座の看板女優、謎の煉丹師、老学者ら入り乱れての追跡劇が解明する漆黒泉の謎とは。痛快な中国活劇。
「惟任(光秀)ご謀反」-。安土城で知らせを聞いた太田牛一は、生前の信長の密命に従うべく、5つの木箱とともに西へ向かう。が、佐久間軍に捕えられ能登の小屋に幽閉されてしまう。10カ月後、天下統一を目前に控えた秀吉から伝記執筆を条件に解放された牛一は、天満に小さな隠居所を構え、信長暗殺の謎を追うのだった。
なぜ信長の遺骸はいつまでたっても見つからないのか。光秀はなぜ戦勝祈願の連歌を詠んだのか。秀吉の「中国大返し」はなぜ可能だったのか。丹波を訪れた太田牛一は、謎の美女、多志に導かれ阿弥陀寺、本能寺、丹波を結ぶ“闇物語”のとば口へと足を踏み入れる。驚天動地の歴史ミステリーいよいよクライマックスへ。
プールで謎の死を遂げた世界的流行作家“ジョー・コモリ”。かつてやり手だった広告代理店勤務の深田貴代美と、売れっ子プランナーの嶋本ミチルは、プライドを懸けた一世一代の大企画のため、彼の人生を追い始めた-。やがて浮かび上がる無名画家の非業の死!!二人の間に一体何があったのか。
保健室の先生・マリアの失踪とサッカー部の親友・枡田洋介の死。高校三年の夏、最後の宮城県地区予選大会であっさり敗北した直後に、牧一馬の周囲でふたつの事件が起きた。暇をもてあますばかりの友人たちと真相を探りはじめたものの、何もつかめない。東京の大学に進学した青年が二年後に知る真実、父親になった中年が息子に語る想い。
恋愛、仕事、結婚、別れ。二〇代〜三〇代、さまざまな職業、恋のシチュエーションに置かれた二七人のマリコさんたちのすっとこどっこいでチャーミングな「おんなの生きる道」を描いたショート・ストーリーズ。
1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の人生の歯車は再び動き始める。もう一度、宇宙へー老境に差しかかりつつも夢のために奮闘する男を、奇才ブラウンが情感豊かに描く古典的名作。
溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動。
「老耄が人の自然なら、長年の死者が日々に生者となってもどるのも、老耄の自然ではないか。」-主人公の「私」が、未明の池の端での老人との出会いの記憶に、病、戦争、夢、近親者の死への想いを絡ませ、生死の境が緩む夜明けの幻想を語った表題作をはじめ、「祈りのように」「島の日」「不軽」「山の日」など「老い」を自覚した人間の脆さや哀しみと、深まる生への執着を「日常」の中に見据えた連作短篇集。
奇妙な噂がささやかれる映画館があった。隣に座ったのは、体をのけぞらせ、ぎょろりと目を剥いて血まみれになった“あの女”だった。四年前『オズの魔法使い』上映中に一九歳の少女を襲った出来事とは!?(『二十世紀の幽霊』)そのほか、ある朝突然昆虫に変身する男を描く『蝗の歌をきくがよい』、段ボールでつくられた精密な要塞に迷い込まされる怪異を描く『自発的入院』など…。デビュー作ながら驚異の才能を見せつけて評論家の激賞を浴び、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞、国際ホラー作家協会賞の三冠を受賞した怪奇幻想短篇小説集。
怪人二十面相の正体は誰か。原作者の江戸川乱歩さえ触れることのなかった永遠の謎を劇作家でもある著者が大胆な想像力と緻密な構成で描く。父が自殺し母も行方不明となった平吉は、孤児院に行くことを拒否して、自らの意志でサーカス団に入門する。そこで平吉の面倒をみることになったのは、あらゆる芸を即座に自分のものにしてしまうサーカスの天才・武井丈吉だった。芸の師匠でもある丈吉を父のように慕う平吉だったが、突然、丈吉はサーカス団から姿を消してしまう。「世間をあっといわせる泥棒になる」という言葉を平吉に残して。話題の映画「K-20」原作。
「歯くいしばっても生きてきたのはさぁ、…ゆき姉が、いたからなんだよな」時は一九七〇年代。田舎町に住むヤンチャでムチャな男子高校生と、町の駐在さんが“あいかわらず”繰り広げるイタズラ合戦第三弾!今回はドスケベかつアホ、けれどなぜか憎めない人気キャラ西条くんの初恋に迫る!それはまだ、ドスケベでもアホでもなかった小学生時代。相手は幼なじみのゆき姉。そのゆき姉が八年ぶりに町に帰ってきて…。ブログ小説「ぼく駐」人気を不動のものにした『小さな太陽』と、書きおろし番外編『星のメドレー』を収録した超スペシャルな一冊。
“不惜身命”仏道のために一命を賭して西蔵(チベット)の聖地・拉薩(ラッサ)を目指した仏教者がいた。その名は能海寛。時は明治、近代国家形成に向け必死に背伸びする日本を取り巻く情勢は、その苛烈さを増していた。アジアにあって地勢の要衝であるチベットを制するために欧米列強の触手が伸びる。世に“グレートゲーム”といわれる覇権競争である。仏教再興のためチベット潜入という壮挙を図りながらも、思いなかばで行方を断った能海の足跡を辿りながら、“歴史のif”に挑む著者会心の歴史ミステリー巨編、待望の文庫化。
熟年雑誌の読者モデルをつとめる鈴木夫妻が失踪した。楽しみにしていたお伊勢参りの旅に出かける当日、乗車予定の「のぞみ」に姿を見せなかったのだ。それどころか、二人の名を騙り旅行を続ける不審な中年カップルが出現。夫妻に何が起こったのか?捜索願が出されるが、直後、隅田川に他殺体が浮かぶ。遺体は伊勢路に現われたカップルの女性と判明。捜査に乗り出した十津川は、鈴木家で厳重に保管された円空仏を発見する。木彫りの仏像と事件に関わりはあるのか?謎を追って、十津川は伊勢志摩に向かうが…。