2008年発売
「愛さなかったら孤独にすらなれないわ。大事なものをちゃんと見て。あなた方の人生はこれから始まるのだから」人生に迷うしずか、かたや順風満帆の日々に翳りが見え始めた姉の恭子-。問題を抱えた姉妹は不思議な縁に導かれ、横浜の古い洋館、ロシアン・ハウスにやってきた。そこには、戦争や国を超えて生きてきた人々の歴史と、受け継がれてゆく永遠のひかりがあった。凛とした老婦人ターニャが二人に教えてくれたものとは?小澤征良が時空を超えて紡ぐ書下ろし長篇、誕生。
今より少しだけ未来の202X年。小学生の間では、ウェラブルコンピューター「電脳メガネ」が大流行していた。この「メガネ」をかけると、必殺技を手に入れたり、電脳ペットを飼ったり、子どもたちだけのとびきり刺激的な秘密の遊びをすることができるのだ。ただし、「メガネ」を楽しめる時間には限りがあって…。ヤサコを目の敵にしてつけ狙う他校の「三人組」、イサコを危険視して遠ざけようとするおとなたち、それに反発してイサコに心酔する“信者”たち。ヤサコたちの周囲は、ますます不穏な空気に包まれる。そんな中、大黒市からイサコの姿が消える。イサコの行方を懸命に捜すヤサコたちの前に、二度目の赤い柱ー“合図”が立った…。
友だちのこと、家族のこと。抱えきれないほど悩みはあるけれど、ふつうの高校生活を送っていた水嶋ほのか。でも、芸能プロダクション・サザンクロスのオーディションを受けたときから、ほのかの人生は、大きく動き出した。一緒に地区予選突破を誓う、友だちのひかり。初めての恋に悩みつつ、ほのかを応援するミッチー。大切な友だちの想いを背負って、オーディションにのぞむほのかだが、その会場には学校中の憧れの人、サッカー部キャプテンの松山先輩もいて…16歳のひと夏の想いをすべてこめて、ほのかは今、これまでの人生では考えられなかった華やかなステージへの階段を上り始める…。ピュアで胸が熱くなる、青春小説。
群馬県の田舎町で起きた夫婦殺害事件。警察は被害者の幼馴染で建設現場労働者の大船貢を逮捕した。全くの濡れ衣であったが、逮捕・裁判の過程で、貧しいながらも幸せだった家庭は一挙に崩壊した。三女・典子は看護師として働いていた。ある日、元教師の老人が入院してきた。毎夜うわごとを繰り返す老人の言葉は、偶然、冤罪事件に関係したものだった。意外なところから、真相をつきとめる手がかりを得た典子は、冷たい復讐の心を宿しながら謎を追い始める。書下ろし長篇社会派ミステリー力作。
パリ十六区の高級住宅地に居を構える裕福な産婦人科医・パリ大学教授のジャン・シャボは、一見、家族や同僚、仕事や社会的身分に恵まれ、妻公認の愛人もいて、何不自由のない四十九歳の働き盛りと誰もが羨む男だ。しかし内実は三人の子供と妻には裏切られ、母には疎まれ、妻の実家からは屈辱的な干渉に逢い、医療過誤の恐怖に怯え、心身ともに深く傷ついた内面を密かに抱えている。唯一心を解放できたブロンドでバラ色の肌の少女〈熊のぬいぐるみ〉との密やかな交情も、秘書の手で奪われ、その後セーヌに身投げした少女に関係する匿名の男の脅迫に追いつめられていく。ある夜、死を覚悟したジャンは、拳銃をポケットにしのばせて、パリの街へ絶望の地獄巡りに出かける…。ジッド、モーリアック、アナイス・ニンが絶賛したシムノンの「本格小説」の絶品。
『カリブ諸島の手がかり』の名探偵ポジオリ教授が帰ってきた。姿なき脅迫者に怯える男に助けを求められたポジオリが超自然的な怪事件に遭遇する「つきまとう影」、失踪した女性が残した一枚の写真から意外な真相を解き明かす「尾行」など全九篇。長く雑誌に埋もれていた幻の第二シリーズを集成。
この国が戦国で、この世が乱世であった頃ーー。 不穏な気配ただよう歴史の暗がりで、静かに命の火花を散らす者達がいた。その名も、真庭忍軍。“しのび”である彼らが、この時代を生き抜くために選ぶ新たな道とはーー!? 無欲の無頼派ーー真庭蝙蝠。 慈愛の夢想家ーー真庭喰鮫。 不屈の求道人ーー真庭蝶々。 異端の実力者ーー真庭白鷺。 人外にして埒外の異能集団・真庭忍軍の伝説はここから始まる! これぞ豪華絢爛戦国図屏風、真庭忍軍ただいま見参! 第一話 初代 真庭蝙蝠 第二話 初代 真庭喰鮫 第三話 初代 真庭蝶々 第四話 初代 真庭白鷺
骨董商の凌は香港の資産家、塔眞一族の三男・貴礪の伴侶。罠から始まった関係も、今ではすっかり揺るぎないものに…。そんなある日、長男の怜人から禁断の家宝、黒劉の謎を解いてみせよと挑まれた凌は、一族の秘密に深く関わることになり、遂に会社を辞めパートナーとして生きる決意を…。二人の甘く迸る愛を縦軸に、側近である王と石動のスリリングな出会いも明らかに…。艶めくウエディングミステリー書き下ろし。
極道の恋人を持つ若きテーラー、榎田ーある晩、たまたま店を訪れていた弁護士の諏訪と共に何者かに拉致され、檻の中に監禁されてしまう。そこは中国マフィアたちが密かに人身売買を行なう屋敷。恋人の芦澤と敵対する男の企みによるものだった。榎田の目の前でクスリを打たれ、淫獣と化す諏訪…。一方、罠と知りつつも屋敷に乗り込んでいった芦澤と側近の木崎は…。制御不能!デンジャラスハードラブ書き下ろし。
大学生の蒼一は、内定を貰った企業の若き専務と瓜二つだったため、突然失踪してしまった専務の身代わりとしてミラノで開かれるパーティーに出席する羽目に…。だが、美貌の実業家、カルロに迫られ、つい逃げ出してしまい…。旧公爵の家柄のカルロは会社にとって重要な取引先。蒼一は、すべてお見通しのカルロから、専務本人が現れるまで屋敷で自分の相手をしろと威圧的に命じられ…。身分違い★ゴージャスLOVE。
梨元愛美14歳。仲の良い家族もロマンティックなロストバージンもあたしには夢のまた夢。だけど神様、誕生日の翌々日に両親とたった一人の親友の命まで奪うなんて酷すぎる。天涯孤独となったあたしの前に現れたのは母方の遠縁だという6歳年上の男、ガク。甘く危険な匂いのする彼の正体はなんとホスト!彼があたしの新しい保護者=家族になるという。チャラい外見とは裏腹に、優しく深い眼差しを注いでくるガク。兄妹として暮らす日々の中、あたしの胸にひとつの想いが膨らんでいく。でも、それは禁忌。だって神様…彼を失くしたらあたし、きっともう生きてはいけない-。
証券会社の辣腕営業マン・伊地岡勇と電機メーカーの窓際送・野呂久作は高校の同級生。正反対の性格ながらなぜか気が合う二人が、ベッド会社のセールスマンに揃って転職。学歴・経験・年齢、一切不問のシビアな世界で生き残るには何が必要か?経済小説の巨星がユーモラスに活写する傑作サラリーマン小説。
福原遷都を強行した清盛だが、頼朝の伊豆挙兵を機に、各地で源氏が蜂起、また富士川の合戦前夜には平家軍が戦わずして無残に敗走、と憤懣やるかたない日々が続く。わずか5ヵ月で京へ都返り、それから程なく原因不明の熱病により、ついに清盛は力尽きるー栄華を極めていた平家の、没落への序曲を描く著者畢生の大作、第3巻。
日本軍二万人、米軍三万人という未曾有の戦死傷者を出した太平洋戦争末期の激戦地、硫黄島。栗林忠道中将率いる第一〇九師団が、物量に劣りながらも米軍側に多大な損失を与えることが出来たのはなぜか。多数の硫黄島生還者に取材し、戦争の非情さを再現した著者渾身、文字通り「魂の記録」である。
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
知能は小学生程度だが、死んだ母親が遺してくれた小さなアパート「幸福荘」の管理人として、平和に暮らしていたボクさんこと福田幸男、四十歳。ところがある日、アパートで殺人事件が起きたことをきっかけに、ボクさんとその周辺に、驚くべき変化が起こりはじめる…。哀切に満ちた長篇ミステリー。
詩人でありフランス文学の名翻訳者である堀口大學の青春回想記の形を取った一大ロマン。二十歳の大學は外交官である父の任地メキシコに呼ばれた。彼の地で起こった革命のただ中を颯爽と生き、大統領の姪である美少女フエセラに一瞬で心を奪われるが、この恋の行方は…。一千枚が疾走し続ける豪快極まる傑作歴史絵巻。