2008年発売
昭和十九年、福岡県知事の屋敷に奉公にきた千恵子。華やかな博多の街、美しい令嬢・和江との友情、そして初めての恋。しかし戦争の足音は、千恵子のすぐ背後に迫っていた…千恵子の波乱に満ちた人生を縦糸として、激動の時代にそれぞれの愛を貫き通した五人の女たちが織りなす恋模様。戦前・戦中・戦後の日本で、恋に命をかけた女たちを描く純愛官能ロマン。第五回R-18文学賞大賞受賞『花宵道中』の宮木あや子最新作。
桐村彬は、南極で物資輸送に携わるパイロットだ。チリ有数の富豪である日系実業家シラセが南極基地で負傷。救助に向かうが、帰路、謎の双発機に襲われる。背後には黄金伝説を巡る陰謀があるのか。独裁者ピノチェト将軍の元部下、南米に巣くうナチス残党とネオナチ、見え隠れする超大国の影…真の敵の正体は?極限に命を懸ける男たちの姿が胸に迫る、冒険小説の金字塔。
誰にも愛されず、孤独に苛まれてきた彰子は、会社を辞め北海道へツーリングの旅に出た。目指すは道東・冊琢内湖畔にある一軒のカフェ。大自然と人々のぬくもりは、彰子の心を救ってくれるのか(表題作)。納豆かき混ぜ箸という過酷な運命を巡り、翻弄される箸たちの葛藤を描く「納豆箸牧山鉄斎」ほか、諧謔とブラックユーモアに満ちた傑作奇想小説六編を収録。
『招き寿司』チェーン社長・豪徳寺豊蔵が破格の金額で探偵・鵜飼杜夫に愛猫の捜索を依頼した。その直後、豊蔵は自宅のビニールハウスで殺害されてしまう。なぜか現場には巨大招き猫がおかれていて!?そこでは十年前に迷宮入りした殺人事件もおきていた。事件の鍵を握るのは“猫”?本格推理とユーモアの妙味が、新しいミステリーの世界に、読者を招く。
大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。
マレーシアで静養していた傭兵・藤堂浩志を襲った謎の集団。大戦中、ドイツ軍を恐怖に陥れた伝説の組織「悪魔の旅団」が現代に甦ったのか?だが何の目的で?帰国した浩志は、陸上自衛隊からの要請で特別部隊“特戦群”の実戦演習を引き受けるが、矢先、元防衛庁の代議士が殺害され、背後に「悪魔の旅団」の影が…。アクション小説界の新星、待望の第二弾。
深川の中堅材木屋が木材を大量に買い占めていた。不審に思った風烈廻り与力青柳剣一郎が主に訊くと、百年前の明暦大火に匹敵する災厄が起こるという。単なる噂ではない、誰かが途轍もないことを目論んでいると剣一郎は睨む。一方、駿河で残虐な強盗を働いていた闇太夫一味が江戸へ潜入したという報せが。南北両奉行が狼狽るなか、剣一郎の肩にすべてが掛かった。
貧農の家に生まれ、関白にまで昇りつめた豊臣秀吉の奇蹟は、彼の縁者たちを異常な運命に巻き込んだ。平凡な彼らに与えられた非凡な栄達は、凋落の予兆となる悲劇をもたらす。豊臣衰亡を浮き彫りにする連作長編。
若き日、嫂と犯した密通の古傷が、名を成した今も、自分を苦しめる。驕慢な心はついに妻を験そうとするが…。表題作「密通」のほか、人生に絶望し、死のうと決めた夫婦と娘が出会い、希望を取り戻す「心中未遂」、婚礼を前に、揺れる女の想いを描いた「夕映え」、夫のためと騙され、他の男に身を任せたことが破滅につながる「菊散る」など、江戸人情を細やかに綴る全八編を収録。余韻溢れる珠玉短編集。文字が大きく読みやすい新装版。
蝶の撮影で海外に出かけたきり、10日間も音信不通だった写真家の父が帰ってきた。ひとりで留守番していた12歳の少女・雨は喜びも束の間、右手に火傷を負ってしまう。手当てをしてくれたのは隣室の女性・暁子だった。父との楽しい毎日が戻ったかに見えたが、雨の周りでは奇怪な出来事が次々と起こる。そして、突然現れた実の母親が、雨に衝撃の事実を告げるー。精緻な筆致で家族とは何かを問う幻想ホラー小説。
十五年前、大物歌舞伎役者の跡取り息子として将来を期待されていた少年・音也が幼くして死亡した。それ以降、音也の妹・笙子は、自らの手で兄を絞め殺す悪夢を見るようになる。自分が兄を殺したのではないだろうか?誰にも言えない疑惑を抱えて成長した笙子の前に、音也の親友だったという若手歌舞伎役者・中村銀京が現れた。二人は音也の死の真相を探ろうと決意するがー。封印された過去の記憶をめぐる、痛切な恋愛ミステリー。
どんな恋にも、その時だけの特別な“カオリ”があるーゆるくつけたお気に入りの香水、彼の汗やタバコの残り香、ふたりでつくった料理からあがる湯気ー柔らかく心を浸す恋の匂いをテーマに、今、一番鮮烈な“恋の描き手”たちが集う。漂う6つのフレイバーが呼びおこすのは、過ぎ去ったあの日のこと?それともー?6人のラブストーリーテラーが供する、せつなさのスペシャリテ。
昔の男はオレンジ色のTVRタスカンに乗って現れた。会いたくなんかなかった。ただどうしてもその車が見たかった。以来、男は次から次へと新しい車に乗ってやってくるようになった。ジャガー、クライスラー、サーブ、アストンマーティン、アルファロメオ…。長い不在を経て唐突に始まった奇妙で不確かな関係の行き着く先は。勤め人時代を描いたエッセイ及び掌編小説「ダイナモ」併録。
お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務があるー大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉はー。早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。
深夜の六本木、廃校となった小学校で夜毎繰り広げられる非合法ファイト。闘士はどこか壊れた、でも純粋な少女たちーー都会の異空間に迷い込んだ彼女たちのサバイバルと愛を描く、桜庭一樹、伝説の初期傑作。
「試者の灰」をもって王を葬り、闇のものたちを率いて世界をも壊そうとする剣士アドニス。彼と少女剣士ラブラック=ベルの闘いは痛く果てしなく、濃密に続くー生きとし生けるもの、全てのことわりを巻き込み続けながら。そしてついに訪れた終わりのとき、ベルが見いだしたものはー?異能の世界構築者冲方丁、最初期の傑作ファンタジー、堂々の完結。
リー・スローカム閣下が検死官としてはじめて担当することになったのは、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件だった。女主人の誕生日を祝うために集まっていた、個性的な関係者の証言から明らかになる真相とは?そして、検死官と陪審員が下した評決は?全編が検死審問の記録からなるユニークな構成が際立つ、乱歩やチャンドラーを魅了した才人ワイルドの代表作。
童貫元帥、奔るーー 童貫とほう美がついに双頭山に進攻する。鍛え抜かれた精兵を、董平らが迎え撃つ。一方、高廉の軍と致死軍の間にも最終決戦が迫っていた。そして魯達の身に、異変が近づくーー。(解説/高井康典行)