2009年10月発売
本当に客を掴んでいるのは誰かー。暁星運輸の広域営業部課長・横沢哲夫は、草創期から応援してきたネット通販の「蚤の市」に、裏切りとも言える取引条件の変更を求められていた。急速に業績を伸ばし、テレビ局買収にまで乗り出す新興企業が相手では、要求は呑むしかないのか。だが、横沢たちは新しい通販のビジネスモデルを苦心して考案。これを武器に蚤の市と闘うことを決意する。
神山佐平は、やむなき事情から家中の者を斬り、無断で江戸へ帰ってきた。わずか二年前に仕官したばかりだった。主君の死に始まる山代家の騒動はいまだ治まる気配を見せない。殿の愛妾となった幼なじみ、行方をくらました元藩士、朋輩の美しき妹、忍び寄る影。佐平は、己の進むべき道を見つけることができるのか。若々しい熱気と円熟した情感をたたえた、志水辰夫の新たなる代表作。
女体に巣食う悪霊や邪気を取り除く異能を身につけた天宇は、ある日、彼との不義が原因で夫に斬殺されたはずの秋乃と出会う。久しぶりの秋乃との情事で気を失うほど何度も精を放った天宇だったが、目覚めたとき隣に秋乃の姿はなかった。彼女は“亡霊”だったのか。帰宅した天宇を迎えた助手・瑞穂は秋乃の影に気づき、嫉妬の炎を燃やす。そして夜、瑞穂は自ら天宇に挑んでいった…。好評時代官能シリーズ第二弾。
イマドキの女子高生・小梅16歳。冴えないサラリーマンのパパ47歳。ある日、二人の人格が入れ替わってしまった。小梅になったパパは憧れの先輩との初デートや試験に四苦八苦。パパになった小梅は新商品開発で余計な発言をし、大騒動を巻き起こす。そこへ、二人を狙う怪しい女が現れ…。親の愛、家族の温かさを思い出させてくれる傑作長篇。
霊帝が崩御すると、宮中で宦官の大殺戮が起きた。この混乱に乗じて力を得た董卓は独裁者となり、皇帝を長安へ移し、洛陽の都を焼き払う。各地の叛乱は中央を離れた独自の勢力となりつつあったが、強大な董卓軍に最初に戦いを挑んだ曹操は惨敗し、次に戦った孫堅が大勝した。劉備は北方の公孫〓(さん)の元で、黄巾軍に初めて快勝する。文庫版オリジナル書き下ろし『後漢と三国の仏教事情』(一)-秦の始皇帝と兵馬俑など。
董卓に大敗した曹操は、〓(えん)州を拠点に黄巾軍を味方に引き入れていく。だが徐州の陶謙に父を殺され、仇討ちに徐州へ大虐殺の軍を進めている間、〓(えん)州で叛逆が起き、窮地に追い込まれた。朝廷では董卓が謀殺されたが、董卓軍の将たちが幼帝を奪い合い、帝は都を出て逃亡する。孫堅は急死し、息子の孫策は袁術を頼って揚州へ赴いた。文庫版オリジナル書き下ろし『後漢と三国の仏教事情』(二)収録ー漢の武帝とシルクロードなど。
祝儀の席の席順をめぐる百姓同士の諍いがついに決闘にまで発展して大騒動になったところへやってきたのは…。表題作を始めとして、関八州の犯罪や揉め事が次々と持ち込まれるだけでなく、家では訳ありの娘八重のまわりに男の影がちらついてくる。おとこ十兵衛に心休まるひまなし。好評シリーズ第六弾。
12年前に夫の礼は失踪した、「真鶴」という言葉を日記に残して。京は、母親、一人娘の百と三人で暮らしを営む。不在の夫に思いをはせつつ新しい恋人と逢瀬を重ねている京は何かに惹かれるように、東京と真鶴の間を往還するのだった。京についてくる目に見えない女は何を伝えようとしているのか。遙かな視線の物語。
何それ、信じられない!病で余命わずかになった18歳年上の夫が、「自分が過去につきあった恋人たちに僕に死期が迫ったと知らせてほしい」と言うのだ。憤然としつつも夫の恋人たちに連絡をとった私は、彼女たちと心を通わせはじめ…たくさんの笑いと希望と、明るい涙を少しだけ。実力派女性作家が贈るチャーミングな恋愛小説。
口喧嘩無敗を誇り、いじめた相手には得意の火計(放火)で恨みを晴らすーなんともイヤな子供だった諸葛孔明。奇怪な衣装に身を包み、宇宙の神秘を滔々と説いて人を煙に巻くアブナイ男に、どうしてあの劉備玄徳がわざわざ「三顧の礼」を尽くしたのか?新解釈にあふれ無類に面白い酒見版「三国志」待望の文庫化。
かつて報道カメラマンとして鳴らした柴田雄司も今はファッション専門。だが学生時代の恋人と二人の子供を乗せた飛行機がアフガンに不時着し、以前親交を深めたゲリラ部隊に拘束される。彼女の長女が自分の娘だという事実を知った時、柴田は喪われた愛を取り戻すためにアフガン行きを決意した。愛と感動のクライマックス。『ミッドナイトイーグル』を凌ぐ恋愛冒険小説の傑作。
小学生の昂としずくは母親の夏子が心臓の病気で入院したため、夏休みを北海道で過ごすことになった。羽田空港から旅立ったふたりを待っていたのは、夏子と五年前に離婚した父・生野大慈とその妹の千恵。大慈は東京の動物病院で働いていたが、いまは故郷に戻り、獣医として野生動物救命所に勤務している。母親の病状を気にしながらも、北海道の大自然に心を動かされる昂としずく。ある日、カメラマンをしている千恵と出かけた森で、しずくは傷ついた仔犬を見つける。ウルルと名づけられた仔犬だったが、日本では絶滅したはずのオオカミに著しく特徴が似ていた。
「これから送るのは、親しい友達にも話していないことだ。暗くなるけど、いいかな?」「わたしは…今、この瞬間全身でスミオの話をきいてるよ。全部、話してー」六本木ヒルズに暮らす大学生の澄雄と、薄給のパン工場で働くジュリア。携帯の出会い系サイトで知り合ったふたりのメールが空を駆けていく。二十歳のふたりは、純粋な愛を育んだが、そこへ現実という障壁が冷酷に立ち塞がる。無防備すぎる恋は追いつめられ、やがてふたりは最後の瞬間に向かって走り出すことに。格差社会に否応なく歪められる恋人たちを描いた、現代版「ロミオとジュリエット」。
システムエンジニアの俊一、妻・冴子は、世間や周囲に対し、常に一定の距離を取り、決してうち解けることがない。しかし、それぞれを縁とすることで、静かな日々を送っていた。俊一は、前妻とのあいだに子をもうけることができず離別したが、ひとり暮らしのアパートの隣に住む女・冴子の泣き声を毎夜聞き続けるうちに、関係を持ち、世帯を構えていた。そんなふたりに、彼女の妹夫婦から代理母になってくれないか、との相談が持ち込まれる。その選択を受け入れた冴子だったが、やがて、お腹が大きくなるうちに彼女の中で変調が起こり始めるー。
「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」竹内京子、二十歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子に出逢った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも二人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。
『探偵Xからの挑戦状!』とは二〇〇九年四月一日より、NHK総合テレビ『EYES』(水曜深夜)枠で八回にわたって放送された番組。一話完結。放送日の一週間前から登録者の携帯電話に「問題編」のミステリー小説を配信、登録者は犯人を推理して携帯サイトに投票、「解答編」は放送日に番組内で紹介される。本書は同番組のために執筆された小説八作品を文庫化したものである。