2009年発売
巡礼団全滅という惨事は、ヨナにとって信仰を揺るがすほどの大きな出来事だった。しかしヨナは、任務を続行することにし、スカールら騎馬の民に守られながらヤガを目指す。実はスカールも、戦うミロク教徒の出現に危機感を抱いてヤガ潜入を画策しており、それに際してヨナの力を借りる代わりに彼の護衛を申し出たのだった。一方、イシュトヴァーンは、カメロンの苦悩などおかまいなしに、勝手にパロへと出立してしまった。
東京で生活する美しいがごく普通の女性が名もなき人々を標的に狙撃を繰り返す「狙撃者がいる」、アメリカの食堂で働く少年を通し銃を射つ崇高さを描いた「心をこめてカボチャ畑にすわる」、体験主義の作家が夫の鍵から推理を重ねる「彼女のリアリズムが輝く」他、日常に突如表出する不条理な暴力と謎を鮮烈に捉えた全8篇を収録。スタイリッシュでクール、独創性に満ちた片岡ハードボイルドの傑作を精選。
アレックス・トレヴンは、シリコン・ヴァレーの法律事務所で共同経営者の椅子を狙う野心的な弁護士。ある日、画期的なセキュリティー・プログラムを開発した依頼人が殺され、アレックス自身も何者かに襲われる。からくも難を逃れるが、見えざる敵は次々と刺客を送りこんできた。はたして彼らの狙いは何か?プログラムにはいったいどんな秘密が隠されているのか?窮地に陥ったアレックスはたった一人の肉親である特殊部隊員の兄ベンに助けを求める。だが、アレックスとベンの間には過去のある悲劇的な出来事によって、けっして埋められない深い溝が存在していた…。生き方も性格もまったく異なる二人の兄弟が、過去の相克を乗り越えて襲いくる敵に立ち向かう、アドレナリン全開のハードサスペンス。
刑務所から出所したばかりの大男、へら鹿(ムース)マロイは、八年前に別れた恋人ヴェルマを探しに黒人街の酒場にやってきた。しかし、そこで激情に駆られ殺人を犯してしまう。偶然、現場に居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウは、行方をくらましたマロイと女を探して紫煙たちこめる夜の酒場をさまよう。狂おしいほど一途な愛を待ち受ける哀しい結末とは?読書界に旋風を巻き起こした『ロング・グッドバイ』につづき、チャンドラーの代表作『さらば愛しき女よ』を村上春樹が新訳した話題作。
武器商人戸崎は、盟友の娘ジャンヌに突然銃口を向けられた。何の憶えもない戸崎に父親殺しの罪を着せたのは、どうやらDGSEの大物工作員らしい。疑惑を晴らし真犯人を捜すべく、ジャンヌと行動を共にする戸崎だったが、黒幕は証拠を隠滅しようと狡猾な罠を張り巡らす。命を狙われるふたりに、伝説の傭兵桧垣が加わり、事態は急転し始める。
“英国小説の父”とも呼ばれるフィールディング(1707-54)。この小説は、当時人気を博していた書簡体小説『パミラ』に対抗して書かれた。人間性に対する鋭い洞察、真実に徹した精神を喜劇の衣に包んで表現。虚飾を嫌い、庶民の大らかな善良さを愛する作者の意識が全編を覆い、“物語”を読む原初的な楽しさに満ちている。
巻き込まれるように友人の仇討ちをすることになった侍の心を描く『花映る』、不埒を働き悪名を馳せる武士と、茶屋の女中として働く武家の娘ー客と女中として茶屋で再会した幼馴染二人の人生が交差する『悪名』、桜田門外の変を佐倉藩の隠密の目から描いた意欲作『面影』など全六篇の傑作短篇を収録。
鬼頭の生家での猛襲から逃れ、再び鬼ヶ里に戻ってきた神無たち。華鬼の冷酷な瞳の奥にひそむ孤独を知った神無は、知らず知らず華鬼に惹かれていき、華鬼は、未だかつてない思いを神無に抱くようになる。ようやく向き合い始めたかに見えたふたりだったが、不気味に笑む存在が不穏な影を落とす。そんな中、華鬼は突如ひとり姿を消してしまうのだが──。 平凡な少女と美しくも冷酷な鬼とが織り成す学園伝奇、転換し加速する第3弾!!
女子高生の素行調査を引き受けた私立探偵畝原は、その行動に驚愕した。ホストクラブに出入りし、そのお金を稼ぐために老人に身体を売っていたのだ。一方、猫の首なし死体が投げ込まれるという相談を受けた畝原は、依頼主の経営する駐車場で、殺人事件に巻き込まれる。畝原を狙ったものなのか?彼が受けた二つの依頼に、ある共通点が見えた時、事件の恐るべき実体が明らかになるー。私立探偵畝原シリーズ、待望の文庫化。
柏木夏美19歳。ロックバンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリスト。男の目を釘付けにするルックスと天才的なギターの腕前の持ち主。いよいよメジャーデビューもという矢先、敬愛するボーカルの城戸薫が自殺してしまう。体には不審な傷。しかも、彼の名前は偽名だった。夏美は、薫の真実の貌を探す旅へと走り出すー。ロック&ガーリーな青春小説。
牧村伸郎、43歳。元銀行員にして現在、タクシー運転手。あるきっかけで銀行を辞めてしまった伸郎は、仕方なくタクシー運転手になるが、営業成績は上がらず、希望する転職もままならない。そんな折り、偶然、青春を過ごした街を通りかかる。もう一度、人生をやり直すことができたら。伸郎は自分が送るはずだった、もう一つの人生に思いを巡らせ始めるのだが…。
如月、梅も盛りの江戸で名残の雪が降った夜、嫌われ者の金貸し一家が惨殺された。町方は、妾宅で妾とともに死んでいた主の金兵衛の無理心中と断定。しかし前日、金兵衛に会った青柳剣一郎は違和感を覚える。やがて浮かび上がったのは、富三郎なる不可解な男。富三郎は残忍な盗賊一味にも狙われていた…。逃げ回る富三郎の正体、そして息詰まる追跡行の結末とは。
霊岸島が炎に包まれた。北町の与力・葛篭桃之進は、赤子を火焔から救う褌姿の侍に目を瞠った。この男、「鼻紙も買えぬ百石手鼻の貧乏侍」と自嘲する幕臣で、桃之進はその人柄に惚れ込む。しかし、男には破落戸殺しの嫌疑がかかり、その裏に火事の利権を貪る悪党の姿が!役立たずののうらく者と揶揄される桃之進が正義の剣で悪を討つ。傑作時代小説、第二弾。
昭和18年10月8日、アメリカによる一方的な対日最後通牒の期限が切れた。開戦日の午前4時、ハワイ・オアフ島の真珠湾基地30キロの海域に4隻の潜水艦が浮上した。同じ頃、角田覚治率いる遊撃隊はミッドウェー北方200キロにあった…。壮大なスケールで描く「あり得たもうひとつの現代史」を追うスペキューレーション“思考実験”戦史、第2巻。