2009年発売
終戦の夏、父はなぜ洪水の川に船出したのか?母が遺した「赤革のトランク」には、父親関係の資料が詰まっているはず。それらを手がかりに、父のことを小説に書こうとする作家・長江古義人。過去を持つ若い劇団女優との協同作業を通じて、自らの精神の源流としての「深くて暗いニッポン人感覚」を突きつけられる長江ー。そして、やがて避けようもなく訪れる、壮絶で胸を打つクライマックス!初めて書かれる父の肖像と水死。
あいつの人生が終わり、僕たちの長い旅が始まった。中学二年でいじめを苦に自殺したあいつ。遺書には四人の同級生の名前が書かれていたー。背負った重荷をどう受け止めて生きればよいのだろう?悩み、迷い、傷つきながら手探りで進んだ二十年間の物語。
権の魔に魅入られた者の業は深い。将軍家斉の父一橋治済、執政から外れた松平定信、御三家の一角水戸徳川家。将軍位簒奪を狙う暗闘は熾烈を極める。幕政の闇を知る奥右筆組頭立花併右衛門と危地を潜ってきた柊衛悟に、破格の婿入り話が。二人の絆もこれまでか!?人気沸騰シリーズ第五弾。
海軍軍医総監に登りつめた高木兼寛は、海軍・陸軍軍人の病死原因として最大問題であった脚気予防に取り組む。兼寛の唱える「食物原因説」は、陸軍軍医部の中心である森林太郎(鴎外)の「細菌原因説」と真っ向から対決した。脚気の予防法を確立し、東京慈恵会医科大学を創立した男の生涯を描く歴史ロマン。
正徳の治で幕政を主導するのはまだ先のこと。五代将軍綱吉の世、若き日の新井伝蔵(白石)は浪人ながらも政への野心を燃やしていた。そんな中、二つの仕官話が舞い込む。願ってもない好機だが、眉間の「火字」が不穏にうずく。そこには九年前の事件の真相が隠されていた。小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
1921年、コンチネンタル探偵社を辞めたサム・スペードは、サンフランシスコに自身の探偵事務所を構えた。さっそく持ち込まれた依頼は、密航を企てている息子を止めてほしいという銀行家からのもので、調査するうちにスペードは、折しも発生した金貨盗難事件に巻き込まれていく。さらにスペードのもとには、プールで変死した男に絡む黒い噂、美しい中国人女性からの謎めいた依頼など、いわくありげな事件が次々と舞い込んでくる。そんなある日、スペードは旧知の同業者で汚れ仕事を得意とするマイルズ・アーチャーと再会。二人はパートナーを組むこととなり、かくして“スペード&アーチャー探偵事務所”が誕生することとなった!ハメットの研究家としても知られるゴアズが、文体、雰囲気、時代背景にいたるまで原作の世界を見事に再現。ハードボイルドの金字塔『マルタの鷹』のルーツを描く話題作。
男が刺し殺された。さっそく探索に取りかかった文之介と勇七は、人探しのために上方からやってきた旅篭の客だと突きとめる。他方、沼里の凄腕用心棒里村半九郎は、暖簾分けされたばかりの商家に雇われて、上方訛りで話す平田潮之助を守っていた。しかし、何者かにたばかられ、かどわかされてしまう。同じころ文之介は、人を探しに大坂から下ってきたという怪しげな男を見つけたが…。書下し長篇。
老中・松平定信は、御台所・篤姫から呼び出しを受け、最近、将軍・家斉の様子がおかしいと相談をされた。彼は腹心の部下である北町奉行所の隠密廻り同心・鏑木十左に探索を命じる。早速、大奥に潜入した十左は、家斉を誑かそうとする女中を見つけ、追い詰めた。しかし自害されてしまい、手がかりが消えたかに見えたが、その女の身体には…。書下し痛快時代小説。
「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」-詩才を惜しまれながらわずか一九歳で世を去った知里幸惠。このアイヌの一少女が、アイヌ民族のあいだで口伝えに謡い継がれてきたユーカラの中から神謡一三篇を選び、ローマ字で音を起し、それに平易で洗練された日本語訳を付して編んだのが本書である。
ネットカフェ在住の元警視庁警視・根深陽義、就職浪人・窓居証子、人気小説家・窓居京樹が京都で発生した殺人事件の謎に挑む。「戯言シリーズ」「化物語」で人気沸騰中の西尾維新が放つ、怪心の新・スイリ(推理)小説。
東京深大寺。テレビ番組ディレクターの井上美奈子が、お遍路姿で殺害された。美奈子が企画したお遍路の速さを競う“お遍路ゲーム”の収録目前だった。翌日、捜査本部に「四国八十八ヵ所巡りで人が死ぬ」という内容の電話が入る。十津川警部は、徳島へ飛び、お遍路姿で収録を警戒。だが、お遍路さんが射殺され、事件は意想外の方向へ…。東京と四国を結ぶ難事件に挑む十津川警部の名推理。長編トラベルミステリー。
パキスタンとアフガニスタンの国境付近で、映像プロデューサーの笹目京介は、銃創を負った少年を助ける。日本語を話し、タケルと名乗る少年は、名前以外のすべての記憶を失っていた。好奇心に駆られた笹目はタケルを伴って帰国し、駒引神社の宮司である八神家に預ける。だが、笹目は自分たちを尾行してきた三人の男の存在に気づいていなかったー壮大なスケールで展開するアクション・ロマン。
タケルとの出会いにより、駒引神社の巫女としての能力が目覚めはじめた八神初穂は、八神家に伝わる『八神文書』とタケルの過去に深く関係する『ギルガメッシュ叙事詩』との間に共通点を見出す。一方、タケルの「真の力」の発現を恐れるテロ組織アトラ・ハシースは、タケル抹殺作戦を展開する。さらにその並外れた戦闘能力に目をつけた各国の諜報機関は、タケルの籠絡を謀り、工作員を送り込むがー。
坂本龍馬は“船オタク”!?19歳でペリー艦隊の黒船を目撃し、蒸気船に一目ぼれ。それは現代ならば宇宙に憧れるロケットマニアのようなものかもしれない。そんな船への情熱に駆られ彼は、アメリカまで蒸気船で航海した幕府の高官、勝海舟の家に飛び込んだ。いきなり、乗ったこともないあこがれの蒸気船のスペックを語る龍馬に勝もビックリ。弟子入りを許すが…。誰も知らなかった驚きの新龍馬伝。
吸血鬼父娘が活躍する人気シリーズ第1弾! 「正統な」吸血鬼の父を持つ、女子高生の神代エリカ。同じ高校の生徒たちが吸血鬼に噛まれたような傷を残して惨殺される事件が起こり、エリカは父と共に事件の解明に立ち上がるのだが…!?(解説/山前 譲)
ハイウェイの路肩で産気づいたリーを助けたチャド。赤ん坊を取りあげてくれた彼は、リーを送り届けた病院でキスだけを残し、姿を消してしまう。4カ月後、シングルマザーとして仕事に育児と、健気に奮闘するリーの前に突然チャドが現れる。加速度的に惹かれあう二人。しかし、チャドにはリーが受け入れることのできない姿があった…。クリスマスの訪れとともに高まっていく極上のラヴ・ストーリー。
20世紀初頭のアメリカ。生まれ育った地から逃れるように、牧場主のベンを頼ってテキサスにやってきたローレンは、ベンが急逝したことを知らされる。戸惑うローレンにベンの妻オリヴィアはある計画を申し出る。それは、ベンの息子ジャレドとの期間限定の結婚だった。激しく反目しあう二人をテキサスの雄大な自然が包み込むが、やがて二人の運命は残酷な現実の渦に巻き込まれていく…。壮大な愛の物語。
その執拗なまでの観察眼で対象に肉迫する作家・大岡昇平の散文精神は、愛好した推理小説を実践する際にも、その威力を遺憾なく発揮した。ここに収めた初期ミステリの代表作九篇も安易な解決を望むことなく犯人を追う。海外で実際に起きた事件や題材も採り入れながら大胆に展開される。本格的な傑作選。
矢吹由利子、桑田旭子、弘野香子の花園学園二年生仲良しトリオは試験休みに温泉へ。そこで三人は知り合いの芸能プロ社長と会う。社長はこの街でスカウトした女子高生・三枝千秋を連れていた。デビュー後、たちまち人気者になる千秋だが、彼女には「出生の秘密」があった。一方で、先輩アイドルの納谷しおりが撮影中に急死!三人組は事件の真相究明に係ることに。