2010年2月発売
陽気で大柄、機嫌悪くなるのは空腹時と眠い時、そんな典型的フィジー人とつきあう茜。良昭は店の従業員に「お客様の料理を食べてはいけません」と教えなくてはならない。ここは独特の文化と時間が流れる楽園なのだ。しかし、若者たちのすれ違い、住民の対立、暴動が彼らの人生を変えていく。幸せとは何か。
護送中の殺人犯が刑事を射殺して逃亡し、修道院に身を潜めた。同じ町で起きた、謎だらけの銀行たてこもり事件。現地に向かった夕里子と国友刑事だが、罠にはまった国友は婦女暴行犯として指名手配され、警察をクビになるはめに。そして夕里子に着せられた汚名はなんと「殺人犯」!三姉妹の絆が試されるー。
歌を愛し、吟遊詩人を夢見ながらも、唄う能力を欠いた19歳の少女シオリ。唄うことを禁じられ、心ない者たちにその純粋さを弄ばれても夢を抱き続けるシオリに、運命はさらなる過酷な試練を突き付ける。小型核爆弾だというスーツケースを託され、東京の地下深くにひとり潜ったシオリが起こした奇跡とは。
ふらりと旅に出たまま帰らない内田均の家に泥棒が入り、この家に出入りしていた元妻の高校美術教師と重役秘書と雑誌編集者という年代の違う女たちが警察で鉢合わせ。均ちゃんへのそれぞれの思いを胸に、ひょんなことから3人そろって箱根の高級温泉旅館に行くことになり…。切なくも軽やかな恋愛小説。
2002年のJコレクション創刊に続き、2003年のハヤカワ文庫JA内レーベル「次世代型作家のリアル・フィクション」によって、日本SFはゼロ年代の“初夏”を迎えた。秋山瑞人のSFマガジン読者賞受賞作「おれはミサイル」、冲方丁の“マルドゥック”シリーズ外伝、日本SF大賞候補作『あなたのための物語』で注目の長谷敏司による傑作短篇ほか、SFマガジン掲載のリアル・フィクションを中心に精選した、全8篇を収録。
1920年代の冬のある日、男が若い女を撃ち殺した。女は男の愛人だった。男の妻は女を激しく憎み、柩のなかの死者の顔に切りかかった。しかし、妻は次第に死んだ愛人のことを知りたいと思いはじめる。都会に暮らす男女のなかに生き続ける、時をさかのぼる憧憬と呪縛。過去、現在、未来を自由自在に往来しながら、饒舌な謎の語り手によって、事件の背景が明らかにされていく。ノーベル賞作家が卓越した筆致で描き出す衝撃作。
早春の夕暮れ、三河以来の旗本大河内家では、跡取りの右京の婚礼が行われようとしていた。しかし、花嫁の綾音を乗せた駕篭が門前に着こうというとき、右京はまだ板橋にいた。父の大目付・政盛の代参で川越へ赴き、用事を済ませ、江戸へ戻る途中に事件に巻き込まれたのだ。新たな門出を迎えたひょうたん息子と頑固親父に更なる試練が…。
新署長赴任の朝。署の正面玄関前で、容疑者を連行中の刑事が雑居ビルから狙撃された。目の前で事件に遭遇した歌舞伎町特別分署の沖幹次郎刑事は射殺犯を追う。銃撃戦の末、犯人のひとりを仕留めるが、残るひとりは逃亡した。金を生む街、新宿歌舞伎町で暴力組織が抗争を開始したのだ。息も吐かせぬ展開と哀切のラストシーン。最高の長篇警察小説。
貞元二十年(西暦八〇四年)。遣唐使として橘逸勢らとともに入唐した若き留学僧・空海。洛陽での道士・丹翁との邂逅を経て長安に入った彼らは、皇帝の死を予言する猫の妖物に接触することとなる。憑依された役人・劉はすでに正気を失っていたが、空海は、青龍寺の僧とともに悪い気を落とし、事の次第を聞くことになった。
妖物が歌ったのは李白の「清平調詞」であり、約六十年前、玄宗皇帝の前で楊貴妃の美しさを讃えた詩であった。白居易という役人から示唆され、一連の怪事は安禄山の乱での貴妃の悲劇の死に端を発すると看破した空海は、その墓がある馬嵬駅に赴く。墓前には白居易ー後の大詩人・白楽天が。彼は空海に、詩作に関する悩みを打ち明けるのだった。
胸に赤いAの文字を付け、罪の子を抱いて処刑のさらし台に立つ女。告白と悔悛を説く青年牧師の苦悩…。厳格な規律に縛られた一七世紀ボストンの清教徒社会に起こった姦通事件を題材として人間心理の陰翳に鋭いメスを入れながら、自由とは、罪とは何かを追求した傑作。有名な序文「税関」を加え、待望の新訳で送る完全版。
ラール人が仕立てた、にせものの“マルコ・ポーロ”は、アトランが用意していた欺瞞惑星オルクシィを破壊してしまった。アトラン率いるNEIの本拠惑星のポジションを知る“事情通”が、ラール人をオルクシィに案内したにちがいない。アトランとラス・ツバイの搭乗する“ソルセル=2”は、にせ“マルコ・ポーロ”を撃破すべく、ヨルショル霧状星雲に向かった。だが、そこには、思いもよらぬ存在が待ち受けていたのだ。
江戸城、大奥。余人には推し量りがたい愛憎の渦まく伏魔殿で、一人の女が非業の死を遂げた。時を同じくして、呉服商の跡取り息子が惨殺され、事件を追っていた南町奉行所の同心もまた帰らぬ人となる。不可解な死の積み重なる中、密命を受けて調査に乗り出した田中丙内は、カギを握る娘イトへと辿り着く。そして同じ頃、首斬りの剣豪・山田浅右衛門もまたこの事件に関わり始めるのだったー。丙内の剛剣と浅右衛門の秘太刀は、千代田の城の奥深くから放たれる凶刃を払い、罪無き町人の娘を守りきれるのか!?普段は「独活」とさげすまれ、密命とともに「鬼」へと変わる丙内の痛快事件録、待望のシリーズ第2弾。
フリーターの秋川瑞希は、テレビプロデューサーの叔母から、霊能力者・エステラの通訳兼世話役を押しつけられる。嫌々ながら向かったロケ現場。エステラの透視通り、廃ビルから男性のミイラ化した死体が発見された!ヤラセ?それとも…。さらに、生放送中のスタジオに殺人犯がやって来るとの透視が!?読み始めたら止まらない、迫真のホラー・ミステリー。
加門耕次郎が気がつくと、見たこともない異様な世界にいた。荒れ果てた大地、濁った空、そして大地に描かれたマス目に配置された人々-。たくさんの人々が倒れている中、目覚めているのは4人だけ。生者の上空には白い丸が、死者の上空には黒い丸が浮かんでいた。どうやら、この世界はオセロゲームのルールに則って生死が決定されるらしい。圧倒的に不利な状況の中、神の手に対抗し、より多くの人々を甦らせる逆転の手はあるのか?一手ごとに緊張感が高まる中、加門たちの運命は。
果てしない闘争の中心となって、再び自らの居場所を失ったタケルは、渋谷の街に身を潜める。そのタケルを追って笹目はテロ組織「アトラ・ハシース」の秘密に近づいていく。組織はエンキドゥという最強にして最後の刺客を送り込む。執拗なまでにタケルの抹殺にこだわる総帥ウト・ナピシュテムの真意は?そしてタケルのなかに秘められている「和の力」とは?迫真のアクション巨編、ここに完結。