2010年4月発売
10歳の時に父親が原因不明の病になり、モナは「止めること」を始めた。唯一続けたのは木をノックすること、そして数学。父の病は癒されず、世界は色を失いながら彼女は大人になった。20歳を過ぎたある日、小学校で算数を教えることになったモナ。個性ばらばら、手に負えない子供たちと交わりながら、閉じていた彼女の世界が否応なく開かれてゆくー。現代アメリカ文学の明るい、新たな可能性が垣間見える、著者初の長篇傑作。
夫の彦馬に逢いたい。その想いを抑えられず、お庭番を抜けて逃亡中の織江は、変装して彦馬の家にほど近い妻恋坂を歩いていた。ある日、怪しげな男が落とした奇妙な形のものを拾う。それが新たな追っ手の罠だとは、知るよしもなかった。さらに織江は、彦馬が美しい女性と歩いているところを目撃、次第に心を乱されてゆく。そのころ彦馬は、占いによりある運命を予言されるのだがー。大きな予感に満ちた、シリーズ第7弾。
完全な密室に拉致された男女5人。机の上には1台のPC。残された酸素は12時間。制限時間までにマスターから出題されるクイズに答え、ゲームに勝ってここから脱出せよ。間違えれば即刻死が待っているー!不条理な極限状況に投げ込まれた男女が難問に挑みながら息詰まる心理戦を繰り広げるサスペンス・ホラー!予測のつかないラストが大きな話題を呼んだ鬼才の鮮烈デビュー作、ついにホラー文庫化。
安政7年、条約批准のため遣米使節団が江戸湾を出航した。勝海舟が艦長を務める「咸臨丸」には、瀬戸内の塩飽衆・吉松たち日本人水夫が乗り組むが、悪天候に悩まされ、病気も蔓延する。アメリカ人水夫との対立、士官・中浜万次郎への反発など不穏な空気の中、果敢に太平洋横断に挑んだ彼らを思わぬ運命が待ち受けていた。書き下ろし後日譚「咸臨丸のかたりべ」を併載し、第27回歴史文学賞受賞作品が大幅改稿を経て、待望の文庫化。
十津川警部に、ラジオ深夜放送のリクエスト葉書を使って、殺人を予告する卑劣な挑戦状が届く。やがて黄金週間最終日、特急「有明」の車内で殺人が起こる。被害者は、不動産業などで莫大な資産をもつ小堀忠男。彼には、二人の息子と五人の愛人がおり、それぞれに遺産を分配する遺言状があった。骨肉の遺産争いかと思われた矢先、第二の殺人が…。時刻表トリックに挑む興奮の長編トラベルミステリー。
私が死ねばよいと思っている人間が七人いるーその言葉を残し、老古代史学者の新藤英二郎は殺された。復元した甕棺の中で「女王・卑弥呼」の再現衣装をまとい、顔を朱に塗られて。日本という国の成り立ちに関する過激思想ゆえに生命を狙われていた老教授を殺したのは誰なのか?教え子の歴女・村野杏美は、新藤と巡った北九州古代史の旅をふり返りながら、恩師の死の謎の挑戦する。書き下ろし歴史ミステリー。
旅行代理店の臨時求人に応募してきた派遣会社「倶利迦羅紋々スタッフサービス」。信じられない好条件に代理店社長の飯田は即決するが、正体は何とヤクザのフロント企業。手を変え品を変え7人の男女を巻き込んだ倶利迦羅社の目的は一体?戦々恐々とする面々に警察も加わり、福岡を舞台に三つどもえのコン・ゲームが始まった。怒涛のノンストップミステリー、文庫オリジナル。
トロント大学医学部を目指すミンとフィッツ。二人は、さまざまな紆余曲折を経て、医学生となるのだが…。過酷な医療現場の最前線で、若き医師たちはいくつもの困難に立ち向かい、挫折を繰り返し、そして成長していく。張りつめた空気のなかで行われる心肺蘇生、帝王切開手術、そして猛威をふるうSARSの恐怖。医師として人間として味わう喜びと苦悩を迫真の筆致で描き尽くした連作短篇集。
フェードルは、驚くべき姿を隠れ蓑にしていたメリザンドとついに対面した。王位を得るため女王を亡き者にする計画を語るメリザンド。暗殺の場となるのは、各国の王が一堂に会する君主会盟だ。危険を知らせねばと焦るフェードルだが、孤島の監獄に幽閉されてしまう。一度は絶望したが、奇跡の脱獄劇のすえイリュリアの海賊船に助けられた彼女は、人質交換を申し出る手紙を出すが…。華麗なる歴史絵巻、激動の完結篇。
心の平静を求め、シエラネヴァダ山脈にある修道院に滞在していたオッド・トーマスは、12月の深夜、ボダッハ“悪霊”を発見した。ボダッハの出現は大惨事が起きる前触れとなるため、彼は調査を始める。だが修道士がひとり忽然と消え、さらに顔のない修道士や想像を絶する怪物が現われる。猛吹雪の中、修道院で暮らす子どもたちを守ろうと闘うオッドの前に、やがて驚くべき真相が!謎とサスペンスに満ちたシリーズ最高傑作。
清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震えるー。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世紀。谷崎潤一郎賞受賞作。
19歳で視力を失った、潔癖症で完璧主義な妹・凛子。女にモテるのにフラれてばかりの、無遠慮で口喧しい兄・真司。父親が謎の失踪をとげ、2人きりの生活が始まった。近くにいると相手に合わせることさえ不満でも、遠くにいけばいつの間にか無事を祈り、あの人のために変わりたいと願ってしまうー複雑で決して派手じゃない、だけど確かな愛しさを描いた、兄と妹の12年間の軌跡。
渋谷でのあの事件から3年。チームを解散し、別の道を歩み始めていたアキとカオル。ところがある日、カオルは級友の慎一郎が見に行ったイベントの話を聞いて愕然とする。それはファイトパーティーを模したもので、あろうことか主催者は“雅”の名を騙っていたのだ。自分たちの過去が暴かれることを恐れ、カオルはアキに接触するがー。
きみが見つける物語。ずっと忘れない、世界は変えられると感じた日のことを…。ティーンエイジ・レボリューション。痛くて切なく美しい十代の日々を描く、極上のエバーグリーン・ストーリー。
19世紀末、英国の町に隕石のようなものが落下した。墜落現場では巨大な円筒状の物体と中から得体の知れない醜悪な生き物が現れた。やがてそれは英国全土を巻きこんだ冷酷非道な侵略戦争へと広がってゆく…。支配する者とされる者の関係を描き、SFのひとつの原型を創ったH.G.ウェルズの不朽の名作を漫画化。
家族を事故で亡くし、すべてを失いかけた槇人を救ったのは、憧れの従兄弟・慶一だった。慶一の言葉を信じ、その身を委ねる槇人。だが慶一の狙いは、花嫁だけが知ると言われる槇人の家…青海川家の隠し財産だった。しかしその存在を知らない槇人…慶一の目論見を聞かされても、幼い頃から想い続けている慶一を憎むことができず…。一方、痺れを切らした慶一の弟・英一は…。隠し財産に翻弄される運命の花嫁。
少女漫画雑誌の編集者、真田と最近売れ始めた俳優の直哉は大学時代からの親友同士、真田がゲイであることを告白しても二人の仲は変わらず、当時売れない劇団員だった直哉は、真田の部屋に同居させてもらっていたことさえも…。だが、真田の想いは違った。友情を超えた恋愛感情。直哉の体を奪いたい…欲望を遂げたい…八年以上もそんな辛い恋を続けてきていた。そんな折、直哉が恋人と別れて…。ギリギリ境界線ラブ。