2010年7月発売
夜の国道で道路の中央に蹲っている少年がいた。彼は、一緒に暮らしていた老人が死ぬ間際に残した言葉を守り、飼っていた蟹が海岸で産卵しようと移動するのを、命がけで守ろうとしていたのだった。それを知ったドライバーたちは、最後まで少年が見守れるように動いた。しかし、蟹と少年にはさまざまな難敵が襲いかかってくる(「妖獣鬼」)。人間の孤独や哀しみの深奥に迫った、傑作動物小説集。
黒船来航、団十郎の謎の自殺と揺れる世の中で、江戸っ子浮世絵師国芳は吉原でトロロ事件を巻き起こしたりしながらも、機転とユーモアで話題作を次々と生みだしてゆく。娘の登鯉は、歌舞伎役者の坂東しうかに刺青をつけて言い寄られたり、新場の小安とは、素直になれなくてもどかしかったり。高野長英の娘との思いがけない再会、芸者や花魁の幼馴染みのじたばた悩んでいる様子に、心も揺れる。そして謎の夜鷹の出現で明かされる登鯉の出生の秘密。そんな中で、南町奉行所が焼け、遠山の金さんが倒れた!いよいよ佳境の国芳と登鯉をめぐる浮世模様、第四弾。
引退した名警官ガス・ランダーは、ウエストポイント陸軍士官学校のセアー校長に呼び出され、事件の捜査を依頼される。同校の士官候補生の首吊り死体から、何者かが心臓をくり抜き持ち去ったというのだ。捜査の過程でランダーは、ひとりの協力者を得る。彼は青白い顔の夢想家で、名をエドガー・アラン・ポオといったー青年時代のポオを探偵役に迎えた、詩情豊かな傑作ミステリ。
才気煥発なポオを協力者に、士官候補生の遺体損傷事件を調べる元辣腕警官のランダー。だが、そんな彼らの前に、第二の死体が現れる。そして、令嬢リーへの愛に全霊を捧げるポオとランダーの関係にも、暗雲が立ちこめはじめていた。内なる孤独を抱えるふたりの男が、陸軍士官学校を震撼させた殺人事件に見出した真実とはー。19世紀アメリカを舞台にした、圧巻の歴史ミステリ大作。
年収四十億の財力にモノをいわせ、弱小県立高校野球部長に就任した若き女性実業家・小金澤結子。甲子園出場のため結子が繰り出すゴージャスかつエグい手練手管に部員たちはヘキエキするが、少しずつ勝利する喜びを知ってゆき…。万年弱小チームに、甲子園出場の奇跡は起こる、のかー。
「身の丈サイズでゆるーくやっていきたいと思う反面、ダサいもの、価値観に一ミリでも合わないものは受け入れたくない」。矢部健太高校二年生、夏休み直前。そんな彼が…。84年にタイムスリップ「つっぱり」メンバー達とのひと夏のふれあい。
長崎奉行手附出役として、天領・長崎で縦横無尽に事件解決に当たる近藤重蔵。そんな重蔵の前に現れたのは、江戸の地で最愛の人、音若を無残にも殺した仇敵りよだった!りよはなじみの悪党・喜兵衛の一味と行動を供にし、長崎でも悪事の限りを尽くす。重蔵は音若の仇を討つことが出来るのか。傑作時代小説シリーズ第五弾。
吃音による疎外感から凡庸な言葉への嫌悪をつのらせ、孤独な風狂の末に行方をくらました若き叔父。彼にとって真に生きるとは「アサッテ」を生きることだった。世の通念から身をかわし続けた叔父の「哲学的奇行」の謎を解き明かすため、「私」は小説の筆を執るが…。群像新人文学賞と芥川賞のダブル受賞。
見習い同心の光太郎は、妻が二百文も出して鼠除けに効く「睨み猫」なる絵を買ったことに呆れていた。ところが定中役の上司・龍之介も、同じ絵を願人坊主から入手したのだという。そして龍之介の亡き父が遺した日記をめぐる、恐るべき謀略と過去が次第に明らかになって…。シリーズ第三作。文庫書下ろし。
依頼人からの無理難題を解決するのは己の腕一本のみ。京流の剣の達人にして、まだ見ぬ伝説の強敵と対峙することを夢想し、胸を踊らせる。だが普段はひたすらに不機嫌。「二」という数字とお人好しは大嫌い、雇われるのはもちろん我慢ならない。豪快すぎる男の生き方を描いた7話を収録。期待の新鋭が放つ、痛快時代小説。
1974年、世界はかつてない暗黒時代を迎えていた。第二次大戦で圧倒的勝利を収めたナチス・ドイツが、ヨーロッパのみならず、世界の大部分を支配していたのだ。そしてナチスの魔手は、ついにアメリカ合衆国へと伸びようとしていた。アメリカにとって最後の希望は「プロテウス作戦」-過去へと精鋭部隊を送りこみ、歴史の進路を変えて、ナチスを叩き潰す作戦であった!ホーガンが迫真の筆致で描く時間テーマSF超大作。
西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント大主教国は肉体改造により真空に適応した“酸素いらず”の国だった。海賊狩りの任にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカに暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたという彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが…。シリーズ第3巻。
廃線が決定したローカル鉄道を救いたいと、退職した上に会社を創ってまで田舎町にやって来た三人組ー才色兼備でMBA取得の女性ミュージシャン、良心的な融資を誇りにしてきた元銀行支店長、そして鉄道オタクのリタイア官僚。最初は戸惑っていた町民たちも、次々繰り出される彼らの奇抜な計画に、気づけばすっかり乗せられて。なぜか再建を渋る町長の重い腰は、果たして上がるのか。
双子のように育った遠子と小倶那。だが小倶那は“大蛇の剣”の主となり、勾玉を守る遠子の郷を焼き滅ぼしてしまう。「小倶那はタケルじゃ。忌むべきものじゃ。剣が発動するかぎり、豊葦原のさだめはゆがみ続ける…」大巫女の託宣に、遠子がかためた決意とは…?ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジーが幕を開ける!日本のファンタジーの金字塔「勾玉三部作」第二巻。
嬰の勾玉の主・菅流に助けられ、各地で勾玉を守っていた“橘”の一族から次々に勾玉を譲り受けた遠子は、ついに嬰・生・暗・顕の四つの勾玉を連ねた、なにものにも死をもたらすという“玉の御統”の主となった。だが、呪われた剣を手にした小倶那と再会したとき、遠子の身に起こったことは…?ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジー、いよいよ最高潮。
京都の医大に勤める秋沢宗一は、同僚の結婚披露宴で偶然、十三年前の恋人・亜木帆一二三に出会う。不思議なことに彼女は、未だ二十代の若さと美貌を持つ別人となっていた。昔の激しい恋情が甦った秋沢は、女の周辺を探るうち驚くべき事実を掴む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ…。気鋭が放つ、サスペンス・ミステリー。
最強と謳われる陸上自衛官・真田聖人の妻が惨殺された。妊娠六ヶ月、幸せの真っ只中だった。加害少年らに下った判決は、無罪にも等しい保護処分。この国の法律は真田の味方ではなかった。憤怒と虚無を抱え、世間から姿を消した真田は復讐を誓う。男は問うー何が悪で、何が正義なのか、を。本物の男が心の底から怒りをあらわにしたその瞬間…。残酷で華麗なる殺戮が始まった。
羽賀組はかつて博徒集団だったが、今は鳶職や家屋解体工を抱える会社だ。四代目組長を継いだ羽賀亮は、刑事を本業としているため、元博徒の彦坂成昭に会社を仕切らせ、堅気として生きている。が、父が事故死と見せかけて殺されたかもしれないという疑念を持ち始めた羽賀は違法と知りながら、裏社会の人脈を持つ彦坂を使って真相を探るが…。