2010年7月発売
忌まわしい事件から十二年後。六軒島からただ一人生還した右代宮絵羽が、息を引き取った。彼女に育てられ、右代宮家の財産をすべて相続することになった戦人の妹・縁寿は、家族を失い、自身を孤独に追いやった事故の真相を知るべく、六軒島へと向かうー。一方、幻想世界で繰り広げられる魔女“ベアトリーチェ”との闘いも、いよいよ第四のゲームへ。そして、勝負に負け続ける戦人の前に、彼の味方だという謎の少女が現れるが…!?“赤き真実”に続き、ついに“青き真実”も発動。『ひぐらしのなく頃に』の竜騎士07が描く、“思考の深層”をめぐる冒険。
源平戦乱の余燼さめやらぬ鎌倉初期、京都の摂関家・藤原基房の娘伊子を母に、村上源氏の流れを汲む名門家の歌人・久我通具を父に生まれた道元は、瞳が二重の「重瞳の子」のため天下人か大聖人になるとの予言を受ける。幼少のうちに母を失い世の無常を身に染みて感じた道元は、真実の道を求めて出家。建仁寺で栄西の弟子・明全に師事したが、正法を求める思い止み難く宋へと向かった。仏教の革命者の全生涯を描いた初の大河小説。第三十五回泉鏡花文学賞・第五回親鸞賞。
宋の天童寺で念願の師・如浄和尚に出会い修行に励んだ道元は、心身脱落の境地を得て嗣書をさずかり印可を受けた。帰朝すると、ひたすら坐禅を行なう只管打坐によって悟りを目指すその教えを慕い、のちに永平寺二世を継ぐ懐奘らが入門してくる。道元は安嘉門院邦子内親王らの援助を得て、京都深草に興聖寺を建立。初めて自らの道場で、多くの弟子や信者を前に説法をするのだった。執筆九年、日本曹洞宗開祖の実像に迫る記念碑的作品。第三十五回泉鏡花文学賞、第五回親鸞賞。
弁道生活は順調に流れ、「正法眼蔵」の執筆も進んだ。が、男女や身分による差別を否定する教えに、比叡山の弾圧は日に日に激しくなる。道元はついに京を去って、越前志比庄に下ることを決意。新たに建てた修行道場を、この国に真の仏法が第一歩を記したことを意味する「永平寺」と名づけた。日本曹洞宗の開祖・道元の人間と思想の全貌に迫り、その生涯を描ききった記念碑的大河小説。永平寺建立・「正法眼蔵」大成にいたる長編小説完結篇。第三十五回泉鏡花文学賞・第五回親鸞賞。
榛葉が講師のクッキング教室が開催されることに!!ところがそれを妨害せんとする企みが…!?椿たち生徒会メンバーが、学園の秩序を守るために動き出す!!小説化第2弾は生徒会が主役!!ボッスンたちの出番はあるのか。
結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とはー。
一九七九年八月、作家中野重治が逝去した。中野重治に小説家として見出された佐多稲子は、この入院と臨終に至るまでの事実を、心をこめて描いた。そして五十年に亘る、中野重治との緊密な交友、戦前、戦中、戦後と、強いきずなで結ばれた文学者同士の時間を、熱く、見事に表現した、死者に対する鎮魂の書。毎日芸術賞・朝日賞を受賞した、感動の文学作品。
なぜ人間は生きねばならないのかーー? 戦後文学のカリスマ椎名麟三の代表的2篇! 焼け残った運河沿いの倉庫を改造したアパートに蠢く住民達。瀕死の喘息患者、栄養失調の少年、売春婦の救いのない生態を虚無的な乾いた文体で描き、「重い」「堪える」の流行語と共に作家椎名麟三の登場を鮮烈に印象づけた「深夜の酒宴」。電車の運転の仕事を熱愛する平凡な男が現実の重さに躓きつつ生き抜く様を特異なユーモアで描く「美しい女」(芸術選奨)。戦後の社会にカリスマ的光芒を放った椎名文学の代表作2篇。 井口時男 この地上にあっては、「愛」も「自由」も「幸福」も相対的で不十分な偽物でしかありえない。しかし、「ほんとうにほんとう」のものとしての「美しい女」は、地上の偽物性や相対性を裁き糾弾するのではない。むしろそれは、まがい物たらざるをえない地上の存在の卑小さや滑稽さを許容し、ゆるめ、やわらげてくれるものだ。裁き糾弾するのは旧約の神だが、ゆるめ、やわらげてくれるのはキリストの「ユーモア」である。--<「解説」より>
3582年1月、紡績会社の重役ワリク・カウクは北米アラスカ西部の狩猟小屋で目ざめた。4カ月前、地球が“喉”に落下する直前、恐怖から逃れようと“ピル”を過剰摂取したあとの記憶がとだえている。一方、技師ボールドウィン・ティングマーも同じころ、アラスカ西部にいた。吹雪に閉ざされた小屋を出て町のようすを探りにいくが、公共設備はすべて機能停止し、だれも見あたらない。人々はどこへ消えてしまったのか…。
上司との不倫に破れて自暴自棄になっていたあたしは、平安時代にタイムスリップ!女官・小袖として『源氏物語』を執筆中の香子さまの片腕として働き、平安の世を取材して歩くと、物語で描かれていた女たちや事件には意外な真相が隠されていたー。ミステリーをはじめ幅広いジャンルで活躍する著者の新境地。
五十三歳の男が親友の妻と恋に落ちた時、彼らの地獄は始まった。詩神と酒神に愛された男・田村隆一。感受性の強いその妻・明子。そして、北村太郎は明子に出会って家庭も職場も捨て、「言葉」を得るー。宿命で結ばれた「荒地派」の詩人たちの軌跡を直木賞作家が描く傑作長篇小説。第三回中央公論文芸賞受賞。
不義の恋の果てにこの世に生まれた美しい娘・おさい。江戸を襲った大火によって彼女の数奇な運命は回り始める。遊女、女スリ、大盗賊の娘、そして若き天才戯作者ー出会った人の心を少しずつ揺らし、救いながら、おさいは誰かをずっと待っている。果たして誰が、いつ?謎と人情が心に染みる七つの物語。
「エロマンガ島にいって、エロマンガを読もう」。ゲーム雑誌のそんな企画が通ってしまい、男三人は南の島へ向かう。二泊三日のささやかな旅がそれぞれの人生をほんの少し変えることも知らずに。疲れた心をもみほぐす表題作のほか、著著初のSF、ゴルフ小説、官能小説まで収録した異色で楽しい小説集。
大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ二人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!?いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。
権中納言ながら物好きの貧乏公家・山科言継卿とその家来で世話好き女好きの大沢掃部助は、庶民の様々な揉め事に、もうけ話の匂いを嗅ぎつけ首を突っ込むが、事態はさらにややこしいことに。鉄砲の登場や蹴鞠など混乱する室町末期の京の世相を描き、笑いとペーソスが融合した著者真骨頂のユーモア時代小説。
中国人女性の「王愛勤」ことワンちゃんは、名前のとおりの働き者。女好きの前夫に愛想を尽かし、見合いで愛媛の旦那のもとへ。姑の面倒をみながら、独身男性を中国への「お見合いツアー」に誘うのだったー。日本語を母語としない作家として初めて芥川賞を受賞した著者による、文學界新人賞を受賞した衝撃のデビュー作。
警視庁刑事総務課に勤める大友鉄は、息子と二人暮らし。捜査一課に在籍していたが、育児との両立のため異動を志願して二年が経った。そこに、銀行員の息子が誘拐される事件が発生。元上司の福原は彼のある能力を生かすべく、特捜本部に彼を投入するが…。堂場警察小説史上、最も刑事らしくない刑事が登場する書き下ろし小説。
二十六歳のOL京子は、テレビで偶然見かけた競馬中継で、その場所が初恋の少年に出会った思い出の場所であることに気づく。競馬場の中につくられたジャングルジムのある児童遊園。日曜日に思い立って、その場所を訪れた京子は、そこで当時のままの十歳の初恋の少年に出会う。少年らしい純粋さとわがままな側面をあわせ持つ少年に京子は惹かれていき、毎週日曜日になるたびに、思い出の場所に出かけるようになる。少年とのデートを重ねるうち、京子は十歳の少女だった頃の心に戻り始めるのだった。初恋の少年ともう一度恋に落ちるファンタジックな物語。