2010年8月発売
直参旗本・日向半兵衛は、出世のことしか考えない同僚に嫌気がさし「あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって死にたい」という願いを込めた「無用庵」で隠居暮らしを始める。のんびりと過ごすはずだったが、舞い込んでくる事件の数々。「口は悪いが情けにゃ弱い」日向半兵衛が難事件を解決する痛快時代小説。
大坂冬の陣後、つかのまの平穏な日が続く京、洛中に、一人の世捨人が暮していた。名は金森宗和。飛騨高山藩主の嫡男であったが、父より廃嫡された故である。茶の湯では名の知れた宗和の許には、大坂方や徳川方、様々な人が出入りしていた。最後の闘い、夏の陣で宗和は思わぬ事態に巻き込まれるのだが…。連作歴史短篇集。
貧困家庭に生まれた耳の聴こえない娘イヴ。暴君のような父親のもとでの生活から彼女を救ったのは孤高の女フラン。だが運命は非情で…。いや、本書の美点はあらすじでは伝わらない。ここにあるのは悲しみと不運に甘んじることをよしとせぬ女たちの凛々しい姿だ。静かに、熱く、大いなる感動をもたらす傑作。
時は移り明治の初年。時代の混乱は、「かわせみ」にも降り懸かっていた。東吾は、戦乱で行方不明、源三郎は凶賊の手にかかり落命、麻生家も源右衛門ら三名が殺害された。だが、麻太郎、花世、源太郎ら次代を背負う若者たちは悲しみを胸に抱えながらも、激動の時代を確かな足取りで歩き出す。大河小説第二部、堂々のスタート。
絵画に描かれた巨大な歓喜仏に抱かれ、臨死体験者・磯村澄子は死んだ。奇妙な衣裳に極彩色の化粧、そして額に描かれた第三の眼。首吊り自殺か他殺か?警察の捜査は遅々として進まず、やがてさらなる殺人がー。事件の謎を解く鍵はチベット「死者の書」にあった。著者会心の傑作ホラー・ミステリー。
不倫解消で閑職に飛ばされた本宮つぐみ。仕事に全てを捧げ、横目で寿退社を延々見送ってきたのにこの始末…ドツボな彼女の前に「二次元にしか理想の女はいない」と口走る五歳年下のネットワークエンジニアが登場し、奇妙な同棲が始まるが、そこへ昔の男が現れて。草食男子の可愛さ炸裂。三十路の幸福を探る書き下ろし長編。
宍倉六左衛門は御家断絶で裏長屋の浪人暮し。労咳の妻も抱え人足仕事に精を出すも看病の甲斐なく妻は先立つ。かつては管槍の遣い手として島原の乱で活躍した六左衛門も既に還暦。天涯孤独となり、侍らしい最期を決意し、死に場所を求めて彷徨ううちに由比正雪の企てを知るが…。江戸勃興期の侍を描いた著者渾身のデビュー作。
覇者は外科の世界で大成するといわれる医学部剣道部の「医鷲旗大会」。そこで、桜宮・東城大の“猛虎”速水晃一と、東京・帝華大の“伏龍”清川吾郎による伝説の闘いがあった。東城大の顧問・高階ら『チーム・バチスタ』でおなじみの面々がメスの代わりに竹刀で鎬を削る、医療ミステリーの旗手が放つ青春小説。
俺は今、無意味な物語を拾い、読みながら歩いている。在存理由としての食餌。消える記憶と、脳内に潜む探偵。逢うたびに顔の変わる恋人。交錯する複数の“冥王星O”。…“冥王星O”?それはー俺の名だ。物語を紡ぎ続ける“越前魔太郎”とは一体何者なのか。知らぬうちに裏返る世界は、まるでメビウスの輪。重なり合う運命の交差点で、謎は解かれ、現実は崩壊する。
「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。ときは一九四二年、十七歳の祖父はドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた。軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。だが、この飢餓の最中、一体どこに卵なんて?-戦争の愚かさと、逆境に抗ってたくましく生きる若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンタテインメントの傑作。
ヨルショル霧状星雲のヨル・ベータ星系を調査するべく派遣された旧ミュータントのベティ・タウフリーは、とんでもない窮地に陥っていた。人類にたいして叛乱を企てているマルティ・サイボーグ、ムサイの発明したモジュール放射プロジェクターのせいで、ベティは意識の搬送体であるムサイの肉体を自由に使えなくなったのだ。ヨル・ベータ星系のムサイの状況に不審をいだいたアトランは、艦隊180隻の派遣を決意するが…。
ロングピース社が開発した著述支援用人工知能CAWシステムが出力する、悪名高き宇宙海賊・〓(とう)冥の物語ー火星の赤い砂漠の町サベイジのバー“軍神”で、〓(とう)冥はフィラール星の女官長シャルファフィンと名乗る女の訪問を受け、火星で行方不明になったという王女の捜索を依頼されるが…王女捜索に乗り出す〓(とう)冥、それを追う宇宙海賊課のお荷物刑事ラテルとアプロがくりひろげる、記念すべきシリーズ第1長篇の新装版登場。
料金は一日百二十五ドルと必要経費。報告書は作成しますが、調査方法の指図はお受けしませんー夜遅くに事務所を訪れた男は、息子の恋人の行方を捜してくれと依頼する。簡単な仕事に思えたが、訪ねたアパートで出くわしたのはその息子の射殺死体だった。依頼人が被害者の父親ではないことも判明し、さらには暗黒街のボスが脅迫を…圧力にも暴力にも屈しない私立探偵V・I・ウォーショースキーの熱い戦いが始まった。
公園の木から吊り下げられていたのは、テレビの人気スターの射殺死体だった。たちまちマスコミが殺到し、知事までが捜査に介入してくる。やがて第二の死体が発見され、捜査は難航のきざしを見せ始めた。いっぽうジェッシイのもとには、前妻のジェンがストーカーに狙われていると泣きついてくる。捜査で身動きの取れないジェッシイは、恋人の私立探偵サニー・ランドルにこの件を託すが…二大キャラクターが競演の注目作。
夜会での奇妙な事件から六ヶ月後、ムィシキンはペテルブルグに帰還した。ナスターシャ、ロゴージンとの愛憎入り交じった関係はさらに複雑怪奇なものとなり、さまざまな階層の人々を巻きこんでいく。自らの癲癇による至高体験や、現実の殺人事件にも想を得た、ドストエフスキー流恋愛小説を、画期的な新訳で。
亡きひとたちに支えられ、生きのびて在るわが身…。プールから自転車で帰る途上、田んぼの十字路で出会った女。以前に見た覚えはあるが、名も素姓も想い起こせぬその女にもらった「先生のあさがお」の種。あさがおの先生といえば、四年前に逝ったあの上品な老人しかいないはずだが…。浅間山と八ヶ岳にはさまれた信州の秋景のなかで「わたし」をかたどる記憶のあいまいさに寒ざむと立ちつくす。他者の死に深く関わる医業で疲弊し、自裁の崖っぷちまで追われた身が、ひとや猫や自然に救われ、かろうじて生きのびた、いま。妻と分かちあう平凡で危うい初老の日常を静謚な筆致で描く表題作ほか「熊出没注意」「白い花の木の下」を収録。信州の自然を背景に、ひとの生死のあわいを描く最新作品集。
木島安兵衛が江戸に帰って八年が過ぎ、遊佐友也は十四歳になっていた。コンビニエンス・ストアで万引きをした後、家に帰らず逃げ続けていた友也だったが、深夜、巨大な水たまり状の穴の中に吸い込まれ、百八十年前の江戸時代にタイム・スリップしてしまう。ちょうど、この世界では、安兵衛が菓子屋を営んでいるはずー。そう思って、安兵衛を探し続ける友也だったが、菓子屋「時翔庵」はつぶれており、安兵衛もなぜか消息を絶っていた。失意の底にいる友也だったが、追い打ちをかけるように周囲の人たちから、くせ者として追われる身となるがー。
難関の入部テストをくぐり抜け、みごと名門海堂高校野球部へ入部した吾郎と寿也。二軍、一軍へとはい上がるため意気込む吾郎たち。しかし彼らを待ち受けていたのは“夢島”と呼ばれる養成所での想像を絶する猛特訓だった。そんななか、吾郎は持ち前の気力と体力で、ハードなトレーニングを次々にクリアするが、そのたぐいまれな才能ゆえに、教官の乾から目をつけられ、執拗な嫌がらせを受けるはめになる。入部早々前途多難の海堂高校野球部で、吾郎は無事レギュラーを勝ち取ることができるのかー!?累計二十五万部ヒットの人気シリーズ、待望の第四弾。