2010年9月発売
雑誌編集者の彩子、歌手志望の町子、金儲けが趣味のOL美紀。同居生活を送る三人は、それぞれの恋愛、仕事を通して人間の真理に目覚めていく。軽やかなユーモアをまとって描かれる、恋愛の美しさと哀しさ、自立と結婚、「女の真実」と「男の典型」-人生を謳歌する女たちの姿がさわやかな感動を呼ぶ傑作長編。
軍用飛行機をバラせ…その男の言葉に若い整備兵は青ざめた。昭和19年、戦況の悪化にともない、切迫した空気の張りつめる霞ヶ浦海軍航空隊で、苛酷な日々を送る彼は、見知らぬ男の好意を受け入れたばかりに、飛行機を爆破して脱走するという運命を背負う。戦争に圧しつぶされた人間の苦悩を描き切った傑作。
派遣会社からの日雇い仕事で食いつなぐフリーターのサトシ。悪徳人材派遣会社に立ち向かう決意をした彼らユニオンメンバーが次々襲撃される。「今のぼくの生活は、ぼくの責任」と言い切る彼をマコトもGボーイズも放っておけず、格差社会に巣食う悪と闘うことに。表題作他3編収録。大好評IWGPシリーズ第8弾。
北の定町廻り同心・神谷玄次郎は14年前に母と妹を無残に殺されて以来、心に闇を抱えている。仕事を怠けては馴染みの小料理屋に入り浸る自堕落ぶりで、評判も芳しくない。だが事件の解決には鋭い勘と抜群の推理力を発揮するのだった。そんなある日、川に女の死体が浮かぶー。人間味あふれる傑作連作短篇集。
うつ病に苦しみ、老父の介護に疲れた家主のもとへ現われた野良の子猫、トラ。子供たちの懇願でしぶしぶ家に入れてから十五年、家主が病いと折り合いを付けたのを見届けたかのごとく逝ったー。共に生きのびた愛猫への想いを綴りつつ、ある家族の、ささやかだけれどかけがえのない苦闘と再生の年月を描ききった名作。
「私は殺人を依頼しました。恋人の妻を殺してほしいと頼みました」誰もが滑り落ちるかもしれない、三面記事の向こうの世界。なぜ、姉夫婦の家はバリケードのようになってしまったのか?妻の殺害をネットで依頼した愛人の心の軌跡とは。直木賞作家が事件記事に触発されてうみだした、六つの短篇小説。
殉教の火、原爆の火に焼かれながら、人はなぜ罪を犯し続けるのか?「聖水」で芥川賞を受賞した著者が、欲望と贖罪、死とエロスの二律背反の中で苦悩し歓喜する人々を描いた連作短編集。人間の内奥を圧倒的な物語性の中で展開し、谷崎潤一郎賞、伊藤整文学賞の二つの文学賞を同時受賞した衝撃的作品。
志郎が新居に決めたアパートの前には、猫が集まる不思議な空き地があった。その猫たちに構うなという大家の忠告に反し、志郎は空き地を車庫がわりに使い、捨て猫を飼いはじめる。だが、それが彼の幸福な日常を一変させる。愛するものを守るために凄惨なまでに闘う人と猫。愛と狂気を描く長編ホラーサスペンス。
花師にして絵画修復師の佐月恭壱。二つの顔を持つ佐月の元に、肖像画修復の報酬が古備前の甕という奇妙な依頼が舞い込む表題作他、藤田嗣治の修復をめぐり昔の恋人に再会する「葡萄と乳房」、女体の緊縛画を描いた謎の絵師を追う「秘画師遺聞」の全三篇を収録。絵画修復に纏わる謎を解く極上の美術ミステリー。
深川で、西国雄藩の藩士と石川島から戻ったばかりの無宿人が相次いで水死した。二人とも、死の直前に、三十間堀に架かる「四人橋」を四人で渡り、自分の影だけが消えたと言い残していたー。なぜ、影は消えたのか。そして、裏にうごめく悪の正体とは!根岸肥前守が、江戸の怪異を解き明かす、新「耳袋秘帖」シリーズ第三巻。
娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は豊胸手術を受けることに取り憑かれている。緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。夏の三日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。日本文学の風景を一夜にして変えてしまった、芥川賞受賞作。
「私を信じてください。それだけで私は幸せです」「私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください」。ゴールデンレトリバーのソックスを飼う時、母は幼いあかりに10の約束をさせた。しかし大人になるにつれその関係に微妙な変化が生まれ…。「でも私にはあなたしかいません」。愛犬と少女の絆を描く、涙なくしては読めない感動物語。
「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまではー。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。
アメリカの最高軍事機密である最新鋭戦闘機F-22、通称“ラプター”が演習中ミャンマーで遭難した。タイで行方不明になっていた仲間を救いに来ていた傭兵・藤堂浩志はアメリカ、中国、ロシア、ミャンマー各国によるラプター奪回戦に巻き込まれる。世界の均衡を揺るがしかねない軍事機密を巡って、ミャンマーから中国奥地へと分け入り、緊迫の争奪戦が始まる。
「“冥王星O”。“吸血鬼”の一人娘を保護してもらいたい」魔界探偵の俺に下される指令は、いつも無茶なもんばかりだが、その中でもこいつは格別だ。なるほど、俺に死ねってことかよ。だが…“彼ら”の館で待ち受けていたのは、不死者の首無し死体。死ねないヤツが死んで、生きたい探偵は化け物に命を狙われる。生き残りたければ、躊躇な!語れ!騙れ!すべてを誤魔化せ!“冥王星O”、最悪のfrom dusk to dawn。
「私は、金毘羅になった!」1956年嵐の夜、人の子の体を借りて、深海から陸に移り住んだ私=「金毘羅」。失った過去の記憶が甦る時、近代が封印した、魂の歴史と祈りの本質がついに開かれる。21世紀いまだ解決されざる内面の神話に挑戦した、超絶怒濤の世界文学。第16回伊藤整文学賞受賞作品。著者記念碑的代表作。
イッポリート自殺未遂の翌朝、エパンチン将軍家の末娘アグラーヤとムィシキン公爵は、互いの好意を確認する。しかし、不可能な愛に悩むナスターシヤの呪縛から逃れられない公爵は、ロゴージンも交えた歪な三角関係に捕われ、物語は悲劇的様相を帯びていく。テンポ良く読みやすい新訳、完結。
超人的な力と鋭い頭脳で難事件を解決する黒服の私立探偵。ただし営業時間は夜間のみ。その正体はー短篇の名手リッチーが生んだユニークな名探偵カーデュラ・シリーズを全作収録した世界初の完全版“カーデュラの事件簿”。さらに「いい殺し屋を雇うなら」「さかさまの世界」など5篇を新訳で贈る。