2010年9月発売
一週間以内に解毒剤を打たないと確実に死亡する毒物を、狂気の生物学者シャマノヴォに注射された三人の男たちは、ホヴァークラフトに乗り、パラトカ制御ステーションをめざしていた。地球でわずかに生き残った三人、カウクとティングマーとブラフは、パラトカに到着したら、解毒剤をあたえるというシャマノヴォの約束を信じるしかなかったのだ。三人の唯一の希望は、危機にさいして逃げだしたK=2ロボットだけだった。
ギリシア神話の神々によって復活させられ、トロイア戦争を観察してきた学師ホッケンベリーがとった行動をきっかけとして、戦いの局面は大きく変化した。刃を交えていたアカイアとトロイアの軍勢が手を組んだのだ。アキレウスやヘクトルをはじめとする英雄たちは、これまで自分たちを守護してきたゼウスら神々に叛旗をひるがえし、苛烈なる戦闘に突入した!ローカス賞受賞作『イリアム』の続篇にして完結篇、いよいよ開幕。
40年前の吹雪の夜、彼は忽然とシカゴの町から姿を消した…偶然のきっかけで、消えた黒人青年の叔母の依頼を受けたわたしは、昔の失踪事件を調べることになる。時間の壁だけが障害かと思われた調査だが、失踪の影にはもうひとつの事件が隠されていた。隠蔽されてきた唾棄すべき事実の露見を怖れる何者かが妨害を始め、わたしの身辺に次々とトラブルが!どんな圧力にも屈しない、V・I・ウォーショースキーの真骨頂。
かつて二度にわたりスペンサーに窮地を救われた元非行少女エイプリル。美しく成長した彼女がスペンサーを頼って現われた。自ら経営する娼館が何者かの営業妨害を受けていると言う。ホークと共に護衛に乗り込んだスペンサーだったが、脅迫に至った事情をエイプリルはなぜか頑なに隠し続けようとする。「これが私。あなたには救えない」と心を閉ざすエイプリルを憂慮するスペンサー。もう一度彼女を救うことはできるのか。
『死の棘』の最後の章ののち発表された八つの短篇。島尾敏雄が、執拗に描き続けてきた“夢”。何故、彼は、これほどまで“夢”にこだわったのか…。夢の中に現実の関係を投影し、人の心の微妙な揺らめきにしなやかな文学的感受性を示した、野間文芸賞受賞作家の名作短篇集。
出会いは、最悪だった。コンビ漫画家、絵門千明は、相方の麻生藤太と立ち寄ったバーで、二人連れの女性客の一人、梶山真智子とちょっとした口論になった。ふたりには、バツイチで子持ちの共通項がある。翌朝。最悪の目覚めを迎えた千明。自宅マンションの呼び鈴が鳴る。そこには、昨夜のバトル相手、真智子の姿があった。「なんで…」お互いに言葉が出ない。真智子は、千明の自宅マンションの一つ隣りに越してきたのだった。30代男女を主人公に描く、「ラブコメ」シリーズ第二弾。
仕事中心に生きている宇田川勇一は、父・総太郎が病に倒れたことを知る。妻、そして心を閉ざしてしまった息子とともに急ぎ故郷・広島へ帰省するが、脳死状態と医者に告げられた変わり果てた父の姿に絶句する。一方で、実家の部屋が纏う空気や呼吸のリズムは、勇一のなかに新鮮な風を起こし始める。ミシミシいわせながら昇る階段。黒光りする廊下の板。ガラガラと懐かしい音を立てる古い引き戸。両開きの窓から入り込む蝉の鳴き声。午後の風に微ぐ柿の葉。「鳥はええぞお。わしは今度は鳥に生まれてくるけえの」そういっていた父の言葉がふと胸にのぼる。
貴子は交際して一年の英明から、突然、他の女性と結婚すると告げられ、失意のどん底に陥る。職場恋愛であったために、会社も辞めることに。恋人と仕事を一遍に失った貴子のところに、本の街・神保町で、古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る。飄々とした叔父を苦手としていた貴子だったが、「店に住み込んで、仕事を手伝って欲しい」という申し出に、自然、足は神保町に向いていた。古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。「第三回ちよだ文学賞」大賞受賞作品。書き下ろし続編小説「桃子さんの帰還」も収録。
坂崎あすなは、自殺してしまう「誰か」を依田いつかとともに探し続ける。ある日、あすなは自分の死亡記事を書き続ける河野という男子生徒に出会う。彼はクラスでいじめに遭っているらしい。見えない動機を抱える同級生。全員が容疑者だ。「俺がいた未来すごく暗かったんだ」2人はXデーを回避できるのか。(講談社文庫) 誰も座らない、1つだけ空いた席。『その人物』が静かに向かった悲しい未来。知ってしまったら、じっとしていられない。『止めるんでしょ、自殺』 これが、彼女の意志 読み始めたら止まらない。懐かしさと切なさでいっぱいになる 坂崎あすなは、自殺してしまう「誰か」を依田いつかとともに探し続ける。ある日、あすなは自分の死亡記事を書き続ける河野という男子生徒に出会う。彼はクラスでいじめに遭っているらしい。見えない動機を抱える同級生。全員が容疑者だ。「俺がいた未来すごく暗かったんだ」2人はXデーを回避できるのか。
黒髪の佳人、佐竹千鶴は椙田探偵事務所を訪れて、こう切り出した。「私の兄を捜していただきたいのです」。双子の妹、千春とともに都心の広大な旧家に暮らすが、兄の鎮夫は母屋の地下牢に幽閉されているのだという。椙田の助手、小川と真鍋が調査に向かうが、謎は深まるばかりー。Xシリーズ、文庫化始動。
大手商社・五井商事の金沢明彦は、イラクで原油取引の交渉中、サハリンの巨大ガス田開発へ異動を命じられる。下位商社トーニチ役員の亀岡吾郎は、通産官僚と結託してイランの「日の丸油田」をブチ上げ、米系投資銀の秋月修二はエネルギー・デリバティブで中国企業をカモろうと企む。国際資源ビジネス最前線。
プーチンが、サハリン巨大ガス田開発の予算超過に激怒。クレムリンの攻撃犬と呼ばれるロシア人官僚や石油メジャーに恨みを抱く英国人父子の介在で、プロジェクトは窮地に。トーニチを辞した亀岡はイランの「日の丸油田」を救おうと奔走する。政治と市場に翻弄される男たちの野望と挫折を描く、大河経済小説。
乃里子、31歳。フリーのデザイナー、画家。自由な一人暮らし。金持ちの色男・剛、趣味人の渋い中年男・水野など、いい男たちに言い寄られ、恋も仕事も楽しんでいる。しかし、痛いくらい愛してる五郎にだけは、どうしても言い寄れない…。乃里子フリークが続出した、田辺恋愛小説の最高傑作。
嫡男新八郎久勝を追い出す形で、美濃仙石家の家督を継ぐことになった権兵衛秀久。それは、信長率いる織田家と、龍興が君臨する斎藤家の勢力争いを受け、田舎領主が生き残るためにとられた苦肉の策だった。情愛の絆で結ばれた兄弟が辿る運命とは!?人気連載コミック『センゴク』から生まれた、痛快戦国小説。
結婚生活が破綻して落ち込む佐和子を励まそうと、父親は事業を始めるように勧める。そのとき、家業の創業者である祖父が彼女に遺した日記のことを思い出す。弁護士が永らく保管していた日記から、大戦間に渡欧して奮闘する日々が甦る。祖父の真意もわからないまま佐和子は生きる糧を求めてパリへ向かう。
佐和子の祖父と愛し合い、身ごもった女性と子供の消息は?同行の滝井の行動力もあって当時の関係者の重い口から生き証人の女性の存在を聞き出し、エジプト・アスワンへ。次第に姿を現していく諜報戦の真実と祖父の葛藤。その足跡をたどる旅の果てに佐和子が受け止めたものは。幸福の意味を問う傑作長編。
突如として起こった大地震。新宿で震災に直面した平凡なサラリーマン・西谷久太郎は、家族に会いたいが一心で大混乱に陥った首都を横断する。生きていれば必ず道は見つかる。次から次へと襲いかかる災厄を乗り越え、ついに自宅にたどり着いた西谷が手にしたものはー。実用情報も満載したシミュレーション小説。
あたし=新井素子の小説のキャラクターたちが現実世界に実体化して以来、驚愕の事態の連続。自宅全焼に誘拐騒ぎ、宇宙人に命を狙われたり。その上、人間に虐げられた動物に同情したキャラクターたちが動物革命を起こす。猫やライオン、カラスにゴキブリの大行進。この混乱の原因は素子にあるというけれど…いたいけな少女が偶然引き起こした絶句すべき大事件の行方は!?番外篇「すみっこのひとりごと」と新あとがきを収録。