2010年発売
小金にものを言わせ若い女を娶った質屋がその妻に窓から身投げされ、テーブルの上に安置された遺体を前に苦渋に満ちた結婚生活を回想するー。人を愛すること、その愛を持続することの困難さを描いたドストエフスキー後期の傑作「やさしい女」とヴィスコンティによる映画化で知られる初期の佳品「白夜」を読みやすい新訳で収録。
ソルド八世王が誘拐された。王を追っている元王女で戦士でもあるフェンは新たな国パラクレスで襲われる。信頼するテオは倒され、フェンは監禁されてしまい、死を待つだけの状態に。彼女を襲った王に似ているクドラとはいったい何者なのか。王国を巡り、深まる謎と冒険の果てに…。大人気シリーズ第3巻。
父が飛龍想一に遺した京都の屋敷ーー顔のないマネキン人形が邸内各所に佇(たたず)む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読み(カウントダウン)はすでに始まっていた!? シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第4の「館」、新装改訂版でここに。 「遠すぎる風景」に秘められた恐るべき真実!!
現職国会議員に中国のスパイがいるという情報によって、極秘に警視庁外事課に捜査本部が設置された。指揮官として警察庁から女性キャリア理事官が送り込まれるが、百戦錬磨の捜査員たちは独自に捜査を進める。その線上に浮かんだのは、次期総理の呼び声高い芥川健太郎だった。第53回江戸川乱歩賞受賞作。
酸鼻を極めた薬師寺事件から、はや十四年。時効を目前にした七月、蒼こと薬師寺香澄のもとに、謎の封筒が届いた。送り主は「響」、封筒の中身はただひとこと「REMEMBER」-。蒼は京介たちの手を借りずに、過去と向き合い記憶を辿り始める。『原罪の庭』の真相に迫る、「建築探偵シリーズ」最高傑作。
「恐ろしいのは毒草ではなく人間です」。名家・鬼田山家で、「一つ目の鬼を見た」と言い残し、施錠された離れから家人が次々と失踪する事件が発生。さらに長男・柊也が何者かに毒殺され…。関係者全員を前に、古今東西の薬と毒に精通した“毒草師”を名乗る男・御名形史紋が、鮮やかすぎる推理を披露する。
かつて学生運動に身を投じた有川三奈は、病院を多数擁する医療法人会長として辣腕を振るう日々。有川家長男で大蔵官僚の崇に、有力代議士・白井眞一郎の娘との縁談が持ち上がる。革命の志を捨て権力中枢への野心を抱く三奈と、政治家を目指す崇にとって、それは願ってもない閨閥をもたらすはずだった…。
三十年の時を経て、息子と娘の見合いの席で再会した二人。しかしそれは呪われた宿命が動き出す瞬間だった。また縁談のために崇に捨てられた宣子は、彼への復讐を決意する。野望と愛憎が交錯する二世代の男と女。現代版・華麗なる一族を壮大に描く長編小説。
清国と薩摩藩に両属していた琉球ー日本が明治の世となったため、薩摩藩の圧制から逃れられる希望を抱いていた。ところが、明治政府の大久保利通卿が断行した台湾出兵など数々の施策は、琉球を完全に清から切り離し日本に組み入れるための布石であった。琉球と日本との不可思議な交渉が始まったのである。
処分官として派遣された松田道之が琉球に突きつけたのは、尚泰王の上京、清国への朝貢禁止、明治年号の強制など独立どころか藩としての体裁をも奪うものであった。琉球内部でも立場により意見が分かれ…。「世界で軍隊をいちばんきらうという琉球」がどう対処するのか。小説で沖縄問題の根源に迫る不朽の名作。
意を決して告白をした王子・カレル。その恋の相手が自分だと気づかない従者・マリエ。生真面目なマリエは、殿下の想いが叶うよう奮闘するのだがーすれ違いから始まる、不器用な恋の行方は。
少女アリス・リデルの生まれたままの姿を撮影していたルイス・キャロルは、その合間に不思議な未来の話をはじめる…暗黒の検閲社会を描く表題作をはじめ、低IQ化スパイラルが進行する日本社会の暴走を描く「リトルガールふたたび」、夢と現実の中間にある“亜夢界”を舞台に、人間と登場人物との幸福な共存を力強く謳う中篇「夢幻潜航艇」など、SF的想像力で社会通念やカルト思想の妥当性を問い直す傑作中短篇7本。
直参旗本にして大目付の父の代理で、浅草にある饅頭屋の息子の祝言に列席した大河内右京。式の最中、芝で起きた殺しの嫌疑で、その息子がしょっぴかれた。右京が事件の真相を調べ始めると、最近、父・政盛が懸念していた薩摩藩の怪しげな動向に繋がった。結婚したばかりの妻・綾音を連れて、遠く薩摩へ乗り込んだ右京を待ちかまえていたのはー。
東の坂東の地で、阿高と、同い年の叔父藤太は双子のように十七まで育った。だがある夜、蝦夷たちが来て阿高に告げた…あなたは私たちの巫女、火の女神チキサニの生まれ変わりだ、と。母の面影に惹かれ蝦夷の地へ去った阿高を追う藤太たちが見たものは…?“闇”の女神が地上に残した最後の勾玉を受け継いだ少年の数奇な運命を描く、日本のファンタジーの金字塔「勾玉三部作」第三巻。
西の長岡の都では、物の怪が跳梁し、皇太子が病んでいた。「東から勾玉を持つ天女が来て、滅びゆく都を救ってくれる」病んだ兄の夢語りに胸を痛める十五歳の皇女苑上。兄と弟を守るため、「都に近づくさらなる災厄」に立ち向かおうとした苑上が出会ったのは…?神代から伝わる“輝”と“闇”の力の最後の出会いとその輝きを、きらびやかに描きだす、「勾玉三部作」のフィナーレを飾る一冊。
町外れの砂原に建つ“緑の家”、中世を思わせる生活が営まれている密林の中の修道院、石器時代そのままの世界が残るインディオの集落…。豊饒な想像力と現実描写で、小説の面白さ、醍醐味を十二分に味わわせてくれる、現代ラテンアメリカ文学の傑作。
“緑の家”を建てる盲目のハープ弾き、スラム街の不良たち、インディオを手下に従えて他部族の略奪を繰り返す日本人…。ペルー沿岸部の砂の町とアマゾン奥地の密林を舞台に、様々な人間たちの姿と現実を浮かび上がらせる、バルガス=リョサの代表作。
賭博師ボーモントは友人の実業家であり市政の黒幕・マドヴィッグに、次の選挙で地元の上院議員を後押しすると打ち明けられる。その矢先、上院議員の息子が殺され、マドヴィッグの犯行を匂わせる手紙が関係者に届けられる。友人を窮地から救うためボーモントは事件の解明に乗り出す。