2010年発売
早春の夕暮れ、三河以来の旗本大河内家では、跡取りの右京の婚礼が行われようとしていた。しかし、花嫁の綾音を乗せた駕篭が門前に着こうというとき、右京はまだ板橋にいた。父の大目付・政盛の代参で川越へ赴き、用事を済ませ、江戸へ戻る途中に事件に巻き込まれたのだ。新たな門出を迎えたひょうたん息子と頑固親父に更なる試練が…。
新署長赴任の朝。署の正面玄関前で、容疑者を連行中の刑事が雑居ビルから狙撃された。目の前で事件に遭遇した歌舞伎町特別分署の沖幹次郎刑事は射殺犯を追う。銃撃戦の末、犯人のひとりを仕留めるが、残るひとりは逃亡した。金を生む街、新宿歌舞伎町で暴力組織が抗争を開始したのだ。息も吐かせぬ展開と哀切のラストシーン。最高の長篇警察小説。
貞元二十年(西暦八〇四年)。遣唐使として橘逸勢らとともに入唐した若き留学僧・空海。洛陽での道士・丹翁との邂逅を経て長安に入った彼らは、皇帝の死を予言する猫の妖物に接触することとなる。憑依された役人・劉はすでに正気を失っていたが、空海は、青龍寺の僧とともに悪い気を落とし、事の次第を聞くことになった。
妖物が歌ったのは李白の「清平調詞」であり、約六十年前、玄宗皇帝の前で楊貴妃の美しさを讃えた詩であった。白居易という役人から示唆され、一連の怪事は安禄山の乱での貴妃の悲劇の死に端を発すると看破した空海は、その墓がある馬嵬駅に赴く。墓前には白居易ー後の大詩人・白楽天が。彼は空海に、詩作に関する悩みを打ち明けるのだった。
胸に赤いAの文字を付け、罪の子を抱いて処刑のさらし台に立つ女。告白と悔悛を説く青年牧師の苦悩…。厳格な規律に縛られた一七世紀ボストンの清教徒社会に起こった姦通事件を題材として人間心理の陰翳に鋭いメスを入れながら、自由とは、罪とは何かを追求した傑作。有名な序文「税関」を加え、待望の新訳で送る完全版。
ラール人が仕立てた、にせものの“マルコ・ポーロ”は、アトランが用意していた欺瞞惑星オルクシィを破壊してしまった。アトラン率いるNEIの本拠惑星のポジションを知る“事情通”が、ラール人をオルクシィに案内したにちがいない。アトランとラス・ツバイの搭乗する“ソルセル=2”は、にせ“マルコ・ポーロ”を撃破すべく、ヨルショル霧状星雲に向かった。だが、そこには、思いもよらぬ存在が待ち受けていたのだ。
ドォラー海軍120隻の大艦隊は、アーマゲドン環礁をめざし出発した。そこで40隻のタロット艦隊と合流するためだ。一方、コリサンデとチスホルム、エメラルドの連合艦隊160隻も、チャリス王国を攻撃すべく出撃しようとしていた。これに対し、セェレブ王子は最新のガレオン船30隻を率いてドォラー艦隊を撃破すべくアーマゲドン環礁をめざす。またハァロゥルド国王も80隻のガレー艦隊でコリサンデ連合艦隊に立ち向かうが…。
江戸城、大奥。余人には推し量りがたい愛憎の渦まく伏魔殿で、一人の女が非業の死を遂げた。時を同じくして、呉服商の跡取り息子が惨殺され、事件を追っていた南町奉行所の同心もまた帰らぬ人となる。不可解な死の積み重なる中、密命を受けて調査に乗り出した田中丙内は、カギを握る娘イトへと辿り着く。そして同じ頃、首斬りの剣豪・山田浅右衛門もまたこの事件に関わり始めるのだったー。丙内の剛剣と浅右衛門の秘太刀は、千代田の城の奥深くから放たれる凶刃を払い、罪無き町人の娘を守りきれるのか!?普段は「独活」とさげすまれ、密命とともに「鬼」へと変わる丙内の痛快事件録、待望のシリーズ第2弾。
フリーターの秋川瑞希は、テレビプロデューサーの叔母から、霊能力者・エステラの通訳兼世話役を押しつけられる。嫌々ながら向かったロケ現場。エステラの透視通り、廃ビルから男性のミイラ化した死体が発見された!ヤラセ?それとも…。さらに、生放送中のスタジオに殺人犯がやって来るとの透視が!?読み始めたら止まらない、迫真のホラー・ミステリー。
加門耕次郎が気がつくと、見たこともない異様な世界にいた。荒れ果てた大地、濁った空、そして大地に描かれたマス目に配置された人々-。たくさんの人々が倒れている中、目覚めているのは4人だけ。生者の上空には白い丸が、死者の上空には黒い丸が浮かんでいた。どうやら、この世界はオセロゲームのルールに則って生死が決定されるらしい。圧倒的に不利な状況の中、神の手に対抗し、より多くの人々を甦らせる逆転の手はあるのか?一手ごとに緊張感が高まる中、加門たちの運命は。
ルカナート13歳の初恋…『信じるならば君の心を』 シルヴィアナとライオスの恋…『何度でも』 ラシュ、シーリー、ヨーサム、三人の出会い…『さても楽しき』 コカゲとルカナート花祭りの夜…『だからひそやかに祈るよ』
果てしない闘争の中心となって、再び自らの居場所を失ったタケルは、渋谷の街に身を潜める。そのタケルを追って笹目はテロ組織「アトラ・ハシース」の秘密に近づいていく。組織はエンキドゥという最強にして最後の刺客を送り込む。執拗なまでにタケルの抹殺にこだわる総帥ウト・ナピシュテムの真意は?そしてタケルのなかに秘められている「和の力」とは?迫真のアクション巨編、ここに完結。
万年金欠状態の梅寿の個人事務所“プラムスター”に時代劇オーディションの話が舞い込んだ。一門をあげての参加の末に、合格したのは金髪トサカ頭の竜二。芝居の面白さにハマり込み、落語の修業も上の空。案じた梅寿は地方のボロ劇場に竜二を送り込むが、ここがまた曲者ばかりの芸人の巣。さらには東京vs大阪の襲名を賭けた世紀の対決が勃発して…。ますます快調!青春落語ミステリ第三弾。
街中で喪服姿の妻を見かけ不審を抱いた慎一は、弔われた故人の名が、結婚前の妻と同じ「斉藤響子」だったことを知る。葬儀の翌日、彼女は姿を消した。慎一は響子の跡をたどろうとするが、手がかりは持ち去られるか処分され、唯一の肉親である母親とも連絡が取れない。さらに、そもそも二人の婚姻届すら提出されていなかったことが判明する。彼女は何者だったのか、そして何の目的で慎一と結婚したのかー。(『オリーブ』)。
バスケの強豪校でイジメに遭い、失意のまま都立T校に編入した陽一を待っていたのは、弱小バスケ部の個性的な面々だったーー。連戦連敗の雑草集団が最強チームとなって活躍する痛快青春小説。
異常者により10数年間、奇怪な館に閉じ込められていた少年・ロコ。だが、館を訪れた少女・リサと出会ったことで、ロコの胸にはある決意が芽生えることになる。「生きることを始めた」少年はいま、1人の少女のために恐怖と絶望の世界へ走り出した!倒れてさえ、思うままに。光と闇。死と再生。そしてロック。焼けつくような痛みと、やわらかな暖かさに包まれた大槻ケンヂの真骨頂。単行本未収録作品を加えた、充実の小説集。
太古のゴビ砂漠。部族の若者ボグドは、美しき少女ファヤウを自らの力で迎え入れ、夫婦となるが、他部族の襲撃により引き裂かれてしまう。ボグドは、遙か彼方に連れ去られた妻の姿を求め、一人旅立つが…!?そして、舞台は18世紀南太平洋、現代アメリカの地底湖へ。時空を超えた愛の邂逅と、戦うがゆえに手にできる“楽園”の意味を壮大に描く、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作にしてデビュー作。
映画「不思議の国でアリスと Dive in Wonderland」原作 【アリスは“不思議の国”だけじゃない! “鏡の国”で立派な女王になるアリスを見届けよう! 原文の言葉あそびの楽しさそのままを「新訳」で!!】 ●ここがポイント (1)さすが新訳!! 前作に引きつづき、今に息づく、美しい日本語でアリスが読めます。 難解で読みづらいなんてこと一切なし! そしてくずれた日本語でもありません。 アリスの上品かつかわいらしい台詞を楽しめます。 (2)アリスが女王になる!? チェスについての詳細な解説 物語の肝(きも)はなんといっても「アリスが女王になる」こと。 “不思議の国”はトランプの国でしたが、“鏡の国”はチェスの国。(将棋とちがってチェスはコマが鏡合わせに置かれます) つまりこの物語ではアリスはチェスの女王(クイーン)に「成る」のです。 物語はチェスの棋譜にそって展開しており、訳者あとがきでそれが詳細に解説されていて、それがめちゃくちゃ面白いです! (3)アリスの面白さはライム(韻) 本作は、とくに詩の韻を重視して訳出されています。ラストに掲載される美しい詩をもとにご説明しましょう。 [な]つ 七月の 空【青く】、 [つ]れだって船で遊べば、夢【多く】。 [の]んびり川に流れる追【憶】-- [ひ]っそりと身をよせあ《いて》、 [ノ]ンセンスのお話、夢中で聴《いて》。 [あ]きもせぬ三人の子が《相手》-- ※【 】《 》で韻がふまれています。[ ]はつなげて読むことができます。 ちなみにこの詩の訳文がすごいのは、脚韻がふまれているだけでなく、行頭の文字をつなげるとある一文がみえてきます。 近年ネットではやっている“タテ読み”を、百年以上も前のルイス・キャロルはすでにやっていたんですね。 「なつのひノあ」……。このあとどんな言葉が続くでしょう。本文でぜひお読み下さい。 (4)詳細な解説付き&詩の楽譜も! 訳者あとがきでは、ほかにも物語が生まれたいきさつや、作品に関する詳しい解説・裏話が読めます。 ・この本が出版されたころ、アリスのモデルである、実在のアリス・リドルが大恋愛していた相手とは? ・アリスが大人になるのを見まもる白の老騎士は、だれのカリカチュア? ・意味不明すぎるジャバーウォッキーの詩の「ぬなやか」は何と何の合成語?(ほかにもこの詩の用語に関する詳細な説明も掲載) アリスファンならニヤリとしてしまうこと、まちがいなし! おまけに、それぞれの詩の楽譜もついています。 「鏡の国のアリスです♪」を楽譜にあわせて歌いましょう! 1 鏡の家 2 しゃべる花々のお庭 3 鏡の国の虫 4 トゥィードルダムとトゥィードルディー 5 ウールと水 6 ハンプティ・ダンプティ 7 ライオンとユニコーン 8 「これはせっしゃの発明でござる」 9 女王アリス 10 ゆさぶって 11 目が覚めて 12 夢を見たのはどっち? 訳者あとがき