2010年発売
「あんたは山を降りなさい」。薬草のお茶で身体の悪い人を癒してきた祖母の言葉が、十八歳になった雫石の人生を動かす。自給自足の山の生活を離れ、慣れぬ都会で待っていたのは、目の不自由な占い師の男・楓との運命的な出会い。そしてサボテンが縁を結んだ野林真一郎との、不倫の恋だった。大きな愛情の輪に包まれた、特別な力を受け継ぐ女の子の物語。ライフワーク長編の幕が開く。
思わぬトラブルに巻き込まれ、火事によって住まいを失くした雫石は、占い師・楓の留守宅に住み込み、働き始める。しかし、退屈も人の権利と言いたげな都会暮らしに慣れるにつれ、山で身につけた力は鈍るばかり。心は不安にふるえる。一方、離婚した真一郎は、あらためて雫石に寄り添い、再出発の途を探るのだった。懐かしい魂の輝きはどこにあるのだろう。『王国』第2部。
真一郎の亡き友が遺した見事な庭園で、友の美しい義母が妖しく微笑む。恋の行き末にたちこめる暗雲。そんなとき、祖母から届いた翡翠の蛇は、嘆く雫石に新しい時の到来を告げる。孤独の底で未来を見つめる楓、そして身を捨てて楓を支える片岡さん。雫石がふたりと結んだ絆の強さと、自分の運命に気付くとき、眠っていた力が再び輝く。ライフワーク長編はいま深遠なるクライマックスへ。
カリスマ書店員、礼人の野望は幼なじみの獣医、一真とラブな関係になること。対人関係がめっぽう不得手な一真の唯一の理解者、専属“通訳”として十年以上、片想いを絶賛続行中の礼人だったが、彼の仲介で里親となった仔猫をダシにこのところ急接近。ある日、風邪でぶっ倒れた礼人のSOSで駆けつけてくれた一真に、とうとう理性の鎧が外れて…。親友から恋人へ…そして嫁へ…!?桃色ステップアップ大作戦。
クラスの雰囲気をつくる“裏掲示板”。発言力のあるやつにビクビクする日々。目立たないよう適当に過ごせればいいと思っていたぼくが、変わりたいと思った。自分らしくあることの大切さ、素敵さ。そのことに気づかせてくれたのは、君ー。坪田譲治文学賞作家が贈る青春群像劇。
願いがかなうんですね?このカクテルを飲むと…。こころの痛みに一杯のカクテルをどうぞ。苦いけれど甘いひとときの官能の味。心とからだが密着する恋の恍惚。生きてるって素敵!それぞれの人生のきれはしを描く7篇の物語。
きっかけは本当につまらないことだった。穏やかな暮らしを揺さぶった、彼の突然の暴力。それでも私はー。互いが抱える暗闇に惹かれあい、かすかな希望を求める二人を描く表題作。自分とは正反対の彼への憧れと、衝動的な憎しみを切り取る「クロコダイルの午睡」。戸惑いつつ始まった瑞々しい恋の物語、「猫と君のとなり」。恋愛によって知る孤独や不安、残酷さを繊細に掬い取る全三篇。
奇異と驚嘆、教えに満ちたイスラム文学の最高峰!最愛の妻の不貞を目撃してしまったシャハリヤール王は、女性への不信感が募り毎晩処女を求めては翌朝には殺してしまうようになる。そんな王の惨行を止めるべく、シェハラザードは王に物語を語り始める…。中世のアラビアでうまれ、18世紀以降ヨーロッパをはじめ各地でベストセラーとなったイスラム文学の最高傑作を漫画化。
無自覚トラブルメーカーの三枝は、ある晩、酔っ払いに絡まれていた女子大生を助けたのだが…お礼にと誘われたレストランで恋人の王とばったり。またもや大喧嘩に…。ところが、すべては王の元愛人、上海マフィアの姜が仕組んだ罠ー王に初めて男の味を教えた妖艶な美貌の持ち主…姜。何も知らない三枝は姜に攫われ、アヤシゲな性具で辱めを…。姜の狙いは一体…?年の差リスキーラバーズを襲う最凶の敵ー。
神奈川県警を辞め、私立探偵の看板を掲げた真崎薫のもとを、高校時代の野球部の仲間で、今はスポーツ選手の代理人を務めている長坂が訪ねて来た。その依頼を受け薫は、やはり昔の仲間であり、メジャーから日本に戻ってきたプロ野球選手の結城と会う。憔悴した様子の結城は、息子が誘拐されたと真崎に打ち明けるのだったが…。横浜を舞台に繰り広げられるハードボイルド小説、待望の第2弾。
ケロスカーの計算者ドブラクは、ベラグスコルスを“ソル”で本格的に稼働させようとしていた。この次元エンジンを本格的に稼働させられれば、ダッカル次元を自由に航行できるようになり、ローダンたちを追跡するツグマーコン艦隊を振り切って逃げられるにちがいない。だが、ベラグスコルスの実験中、異常事態が起きた。“ソル”とともに航行している、拿捕したツグマーコン艦“モルゲン”が、突然溶解しはじめたのだ。
西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく罹患者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていくーすべての発端を描くシリーズ第2巻。
共産党一党独裁が終焉を迎えつつあった一九八九年夏のソ連、在日朝鮮人の小説家・林春洙とルポライター・姜昌鎬は中央アジアを当局の招待で旅している。スターリン体制下の一九三七年、極東沿海州を追われ中央アジアに強制移住させられた「高麗人」たちを訪ねるのが目的である。二人は故国喪失者の哀切の日々を知るー日本語文学として、世界的視野での表現への挑戦が始まる。
ソ連崩壊前夜、故郷を追われた「同胞」の壮絶な体験を聞くために中央アジアを訪れた在日朝鮮人小説家・林春洙は西ドイツでの恋を思い出す。それは背徳の恋であり、祖国の分裂という問題が暗い影を落とす恋でもあった。政治の力に蹂躙された人々との出会いを経て、林春洙は民族、そして人間そのものに思いを馳せる。東西冷戦終結後の世界を見すえ、いち早くなされた文学的達成。
美しかったサンゴの海をもう一度、取り戻したいー。金城健司は、妻・由莉と二人の子供たちと沖縄の地で幸せな家庭を築いていたが、ある日、潜った海で、異変を目にする。サンゴが白化して、死滅していたのだ。それまでの飲食店の仕事を辞め、サンゴの養殖と海への移植に乗り出す。しかし、現実は甘くなかった。試行錯誤の移植作業、学会からのバッシング、莫大な借金…。すべてを乗り越えるため、愛する妻と家族、そして彼の熱意に打たれた仲間たちに支えられて、健司は世界初というサンゴの人工産卵に挑む。
ダメ親父のバッタもの商売が原因で、兵庫県の尼崎から茨城県の下妻に引っ越してきたロリータ少女・桃子は、そこで絶滅寸前のヤンキー少女・イチコと出会い、二人は無二の親友になる(ここまでは前作)。それから桃子は、なぜかロリータ・ブランドのモデルになったイチコと代官山へ通うようになっていたが、ある日いつものように東京駅から乗った高速バスで殺人事件に遭遇し、足止めを食らう。しかも警察はよりによってイチコを容疑者と見なす。桃子探偵は真犯人捜しを始めるが…。友情と愛と仁義の『下妻物語』第二作(で、完結編)。