2011年3月発売
元警察官で探偵事務所を営む柚岐村。同じマンションに写真スタジオを開いたカメラマンの狩谷からある女性の捜索を依頼され、一度は断ったのだが…数日後、偶然にも互いに同じ性癖であることが知れ、柚岐村は口封じの意味もこめて狩谷を誘惑する。先輩刑事との辛い過去を持つ柚岐村は、次第にこの正体不明の男に興味を惹かれ…やがて束縛しあわない大人の関係が始まったが…。
新生・公安9課の戦いを描いた『攻殻S.A.C.』初の長編シリーズ『攻殻機動隊S.A.C.SSS』を神山健治監督自らノベライズ。
山の楽しさ、厳しさ、美しさを知り尽くした男・島崎三歩。彼はいま日本アルプスで山岳救助ボランティアを続けていた。要救助者ありの連絡が入ると、三歩はすぐに現場にかけつけ、事も無げに遭難者の命を救う。そんな三歩が暮らす山に、北部警察署山岳救助隊に配属されたばかりの新人・椎名久美がやってくる。久美は、三歩たちの指導の下、厳しい訓練をこなしていくが、実際の救助となると未熟さや過酷な自然を前に、自信を失くし失意の日々が続く。そんなとき猛吹雪の山で多重遭難が発生。救助に向かった久美を待ち受けていたのは想像を絶する雪山の脅威だった。
享保九年(一七二四年)、神君・徳川家康の命日である四月十七日に、八代将軍・吉宗が久能山へ参詣することとなった。幕府の要人たちが準備に追われるなか、鉄砲方を拝命している旗本・井上義継の跡継ぎ小十郎が誘拐される。御用取次の加納久通は、尾張藩がこの策謀に絡んでいるとみて、目安箱改め方の竜巻誠十郎に調査を命じる。事件には誠十郎の父・竜巻順三と、ある「結社」が関係していた。尾張藩邸に潜入した誠十郎と相棒の勘次の前に、書院番頭にして究極の剣技といわれる小野派一刀流の使い手・嶋信綱が立ちはだかる。大好評シリーズ第一部ついに完結。
賢は大学で映画研究会に属している。四年生の賢が監督で映画を撮ることになり、ヒロインには同じ映画研究会の杉崎莉沙が選ばれる。莉沙も実は監督志望で、賢が書いた脚本をめぐって、ふたりは言い争いとなるが、撮影は進む。莉沙の最後のショットを残して、彼女が交通事故に遭い死んでしまい、映画は頓挫する。一年後、賢は莉沙にそっくりな女性を見かける。声をかけ話を聞くと、莉沙の双子の妹の洋子だった。賢は洋子を起用して残されたショットを撮影し、映画を完成させようとするが、一年ぶりに集まったメンバーは、そんな賢に途惑いの表情を見せるのだった。
ロシアマフィアを怒らせた代議士Kのド助平「海外政経事情調査」、「金髪ポルノ」で美人研修生に英語講習する首席事務官M、在外公館・女性家事補助員が見た「公使Aの裏金とSEXの罠」-。尖閣問題、朝鮮半島有事など外交有事の最前線で繰り返されているのは、実に呆れた破格の蓄財と性の宴だった。全篇、個人名を除いてほぼ実話、大宅賞作家にして最強外交官が描く初の小説。
新幹線の車中で男が死亡した。ポケットからはアカベと呼ばれる真っ赤な花と湯山仁三郎という弁護士の名刺が。アカベはかつて流人の島だった南海の孤島・恩根島のみに咲き、咲くと島に不幸がもたらされるという。偶然隣に座っていた弁護士の中原正弘は「早くしないと妹も…」という男のメッセージを手がかりに、秘書の京子とともに恩根島へ向かったが、余所者の二人に島民の口は固く…。
見知らぬ女性から突然届いたメールから始まった主人公の心境の変化を描いた表題作『こんなところに…』ほか、言葉の力、善と悪、生命倫理、生物多様性など、現代人が直面する問題を小説やショートショート、童話の形で軽妙に描く25編。
玉緒が就職のために村を発つ前日、父の発案で撮った家族写真。半年後、帰郷した彼女は写真館に飾られた写真を前に「遅くなってごめんなさい」と呟く(「家族写真」)。断食で衰弱したガンディーの口から漏れた言葉は、幼き頃に別れた息子の名前だった(「わが胸のマハトマ」)ほか、美しく華麗な短篇七本に加え、文庫版「あとがき」を収録。
“西のはて”の都市アンサルでは、他国の圧政により、長い間本を持つことが禁じられていた。かつて交易と文化を担っていた名家に生まれた少女メマーは、一族の館に本が隠されていることを知り、当主である道の長からひそかに教育を受けるようになるー。巨匠ル=グウィンがおくる、新たなファンタジー・シリーズ第二作。
ロンドンの街の底を歩み、法律事務所のために裏仕事を請け負う男エドワード・グラプソン。英才と謳われ、名門イートン校入学を果たした男が、なぜ暗闇の街路で刃を握り締めるに至ったのか。その数奇なる半生が、いま語られはじめる。第二十五代タンザー男爵ジュリアス・デュポート。エドワードの実の父親は、この男爵かもしれない。母の遺品からそのことを知ったエドワードは、己の素性を隠し、裏稼業で知った手管を駆使して、父子関係の証拠を探しはじめた。だがやがて、男爵の寵愛を受ける若き詩人フィーバス・ドーントが姿をあらわす。ドーントこそが、かつてエドワードをイートン校放校に陥れた仇敵であった…。
すでに日本の敗色は濃厚な昭和十九年暮れ、M農地開発公社嘱託として極寒の満洲に赴いた木川正介は慣れない土地で喘息と神経痛の持病に苦しんでいた。さらに、中立を破り突如参戦したソ連軍を迎え撃つため四十二歳にして軍に召集されてしまう。世渡り下手な中年作家が生き残りを賭け闘う姿をあたたかく飄逸味あふれる描写で綴った、私小説の傑作。
地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したというロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のなか、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受けていたのは、人間の認識、主観そのものが通用しない苛酷な現実だったー。『戦闘妖精・雪風(改)』『グッドラック』に続く、著者のライフワークたる傑作シリーズ、待望の第3作。
太平洋戦争が勃発して間もない昭和17年4月22日未明、一隻の大型潜水艦がひそかにマレー半島のペナンを出港した。3万キロも彼方のドイツをめざして…。大戦中、杜絶した日独両国を結ぶ連絡路を求めて、連合国の封鎖下にあった大西洋に、数次にわたって潜入した日本潜水艦の決死の苦闘を描いた力作長篇。
大学3年生の水越千晴は学内の仲間と「シューカツプロジェクトチーム」を結成。目標は最難関マスコミ全員合格!クールなリーダー、美貌の準ミスキャンパス、理論派メガネ男子、体育会柔道部、テニスサークル副部長、ぽっちゃり型の女性誌編集志望と個性豊かなメンバーの、闘いと挫折と恋の行方。直球の青春小説。
大正四年、鬼龍院政五郎は故郷・土佐高知の町に男稼業の看板を掲げ、相撲や飛行機の興行をうったり労働争議に介入したりの華やかな活躍を見せる。鬼政をとりまく「男」を売る社会のしがらみ、そして娘花子・養女松恵を中心とした女たちの愛憎入り乱れた人生模様を、女流作家独自の艶冶の筆にのせた傑作長篇。
晴れて番方若同心となった不破龍之進は、伊三次や朋輩達とともに江戸の町を奔走する。市中を騒がす奇矯な侍集団、不正を噂される隠密同心、失踪した大名家の姫君等々、自らの正義に殉じた人々の残像が、ひとつまたひとつと、龍之進の胸に刻まれてゆく。一方、お文はお座敷帰りに奇妙な辻占いと出会うが…。