2011年5月25日発売
生者と死者、現実と幻想の狭間で繰り広げられる交流とは。表題の新作短編を含んだ8つの物語。甘く、切なく、妖しく、そして儚い「小池ワールド」を堪能させる珠玉の作品集。
昭和19年、満州。甘粕正彦を魅了した4歳の少女がいた。天性の美貌を持つ信子は、のちに少女画家中原淳一の目にとまり、「浅丘ルリ子」として銀幕に華々しくデビューした!時は裕次郎、旭、ひばりを輩出した昭和30年代。スクリーンの太陽と大輪の花に、国民は酔いしれた!!めくるめく恋と冒険、スターがスターであった時代の燦めく青春と喝采の日々。自分を貫き生きる女優の、超然とした姿を描ききった傑作大河ロマン。
熱海の網代に軽井沢のセンセを訪ねた浅見光彦は、和菓子店“月照庵”のママから、奇妙な事件の解決を頼まれる。姪・曾宮一恵は、実家で両親と共に毒入りワインを飲んで倒れているのを発見され、ただ一人生き残った。一家心中かと思われたが、彼女は臨死時に幽体離脱して犯人の姿を見たのだという。「紫式部に乾杯」という謎の言葉を手掛かりに、宇治へ向かった浅見を待っていたのは…。和菓子をめぐる哀しくも美しきミステリー。
エリートバンカーから消費者金融最大手・富福に迎えられた大宮紘平は、資金調達の成功、銀行の系列化阻止に手腕を発揮し、社長に昇格する。が、会長におさまったオーナー、里村栄一が絶対君主として君臨し、大宮の目論むクレジットカードへの進出など、多角化もままならない。一方、過剰融資や貸し倒れ増大など、社内には風紀の乱れが蔓延する。消費者金融はなぜ市民銀行になれなかったのか。消費者金融の実態に迫った問題作。
大手都銀の帝都銀行・元常務の大宮紘平は、行内抗争に敗れ、系列の帝都クレジット社長の座も追われようとしていた。かつて頭取候補と目され、カード業界で大宮旋風と言われる拡大路線を展開したその経歴と手腕に目をつけたのは、消費者金融最大手・富福のオーナー社長、里村栄一だった。が、大宮を待ち受けていたのは、富福の驚くべき企業体質だった。消費者金融の絶頂期を克明に描き、その後の凋落を予言した傑作経済小説。
新宿で発生した殺人現場に到着した牛尾刑事は、思わず息を呑んだ。被害者はかつて彗星のごとく現れ、劇的に消えた歌手・蓼科由里。以前歌舞伎町で、上京したての彼女を危難から救ったことがあったのだ。彼女のネックチェーンが別件の殺人被害者の物と知り牛尾は執念の捜査を進めるが、浮上した容疑者は連続不審死を…。様々な人間模様に彩られた雑食の街・新宿の光と影。野望の狩人の悲劇を浮き彫りにした傑作長編ミステリ。
平和が続き、爛熟極まる江戸の天保年間、闇に生き、悪に駆ける者たちがいた。博奕好きの御家人・片岡直次郎(直侍)、辻斬りの剣客・金子市之丞、抜け荷の常習商人・森田屋清蔵、元料理人の丑松、直侍の恋人で吉原の花魁・三千歳、ゆすりの名人で御城坊主の河内山宗俊。6人が挑む悪事は絡み合い、最後の相手はなんと御三家の水戸藩。悪党ゆえの悲哀をあますところなく描いた連作時代長編の傑作。文字が大きく読みやすい新装版。
小学4年生の時に誘拐され、殺害された少女・葛城佐智絵。同級生で佐智絵に恋心を抱いていた郷田亮二は、医学部を卒業して一度は医師なったが、その職をすてて刑事になった。どうしても犯人を突き止めたかったからだ。だが、事件を追う彼の前に「葛城サチ」と名乗る女性が現れる。彼女は殺されたはずの佐智絵にあまりにも似ていた。国際刑事警察機構のエリート駆け出し刑事・郷田が執念で辿り着いた事件の全貌とはー。
大川端に若い女の死体が揚がった。清洲屋とも交流がある商家の娘だった。想十郎は、身投げではなく殺されたのではないかと疑う。少し前、武家の娘も「稲妻返し」という剣を操る賊に襲われ、行方不明となっていた。娘たちの誘拐事件の裏に幕閣内部の策謀があると睨んだ幕府目付から、探索の協力を求められた想十郎は、失脚した父・水野忠邦が会いたがっていると聞かされる。そして新たな誘拐が…。シリーズ第7弾、書き下ろし。
わたしは誰からもちやほやされ、それを知っていながら気づいていないように振る舞う嫌な女でした。でも、ご主人様はわたしの虚栄を見抜かれました。「おまえをおもちゃのように扱う」どうしてこんなに乱暴に扱われて、わたしの体は喜んでいるんだろう?快感と恐怖に包まれて、わたしはここまでいやらしくなれるんだ…。『私の奴隷になりなさい』シリーズで官能小説の可能性を大きく広げたサタミシュウが描くエロスと愛の真実。
警視庁の片山刑事は、夜の盛り場で悪い遊びに興じる16歳の女子高生、立石千恵と出会う。その日を境に改心した千恵は、片山刑事の「彼女」になると宣言する。一方、彼女の父で売れっ子漫画家だったみつぐは、マンション改装計画推進に利用されようとしていた。そして同じ頃、窓際編集者の平栗悟士は、雑誌編集長に抜擢されー。3つの“大改装”がホームズたちをとんでもない事件に巻き込むことに!人気シリーズ第34弾。
幽霊のおじいちゃんと暮らす僕の、高校生になってはじめての夏休み直前。弟の和人や妹の晶子が塔に泊まりに来るということで、なぜか魔女のエスペロスが大はしゃぎ。一方、僕たちは学食で暴れている先輩たちを見つける。エスペロスによると、彼らは猫に祟られているらしい。自業自得でそんなことになったようだけれど、知ってしまったからには助けたい。信久と僕は、彼らのもとに向かうことにしたけれど!?シリーズ第4弾。
クリスマス前日、聖マルグリット学園は、最大のイベント“リビング・チェス大会”の準備で騒がしい。そんな中、いつものように独り読書にいそしむヴィクトリカ、彼女の退屈を追い払うため図書館塔を上る一弥ーグレヴィールの初恋、アブリルの思い、ブライアンとブロワ侯爵の静かな戦い、そしてー降りしきる雪の中解き明かされるのは、それぞれの“秘密”-名コンビ最後の平穏な日々を描く、大人気ミステリ外伝。
時は平安。安倍昌浩は、祖父・晴明のもとで、陰陽師として修行をしながら、直丁として出仕をする日々。そんな中、藤原道長の娘・彰子の入内が決まった。一方、昌浩は、彰子が住む東三条殿から瘴気が上っているのを見つける。以前妖から受けた呪詛を、彰子が発動させてしまったのだ。それは彼女を狙う異邦の大妖怪・窮奇の仕業だった。彰子を救うため昌浩は、窮奇との最後の戦いに挑むー!新説・陰陽師物語第3弾。
美形でモテるくせに女の子に興味もなく、どこか冷めた高校3年生・柊ハル。ある日、酷いいじめにあう1年生の女の子・春川ことを見かけ、なぜか気になって助けてしまう。「私はいらない存在」-孤独に押しつぶされそうなことのために、ハルは部員2人だけの秘密の部活「金魚倶楽部」をつくろうと提案。自分の居場所を見つけたこと、彼女を守ろうとするハル。ゆっくりと心の距離を近づける2人だったがー。第4回iらんど大賞NHK賞受賞作。
「新しい韓国文学シリーズ」第1作としてお届けするのは、韓国で最も権威ある文学賞といわれている李箱(イ・サン)文学賞を受賞した女性作家、ハン・ガンの『菜食主義者』。韓国国内では、「これまでハン・ガンが一貫して描いてきた欲望、死、存在論などの問題が、この作品に凝縮され、見事に開花した」と高い評価を得た、ハン・ガンの代表作です。 ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)- 3人の目を通して語られる連作小説集。