2012年10月発売
『虚像の道化師 ガリレオ7』を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書くことはもうない、ラストを飾るにふさわしい出来映えだ、と思っていた著者が、「小説の神様というやつは、私が想像していた以上に気まぐれのようです。そのことをたっぷりと思い知らされた結果が、『禁断の魔術』ということになります」と語る最新刊。 「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の4編収録。ガリレオ短編の最高峰登場。
「私はいま宇宙と同じ大きさになっているはずである」(埴谷雄高「闇のなかの黒い馬」)。現在を突破する言葉の力、小説だけが語れた真実。昭和二七年から四四年に発表された、幸田文・島尾敏雄・三島由紀夫らの一三篇を収録。
「死ぬ日まで天を仰ぎ、一点の恥じ入ることもないことを」-。戦争末期、留学先の日本で27歳の若さで獄死した詩人、尹東柱(1917-1945)。解放後、友人たちが遺された詩集を刊行すると、その清冽な言葉がたちまち韓国の若者たちを魅了した。これらの詩を「朝鮮人の遺産」と呼ぶ在日の詩人金時鐘が、詩集『空と風と星と詩』をはじめ全66篇を選び、訳出した。原詩を付す。
「わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった」-。やし酒を飲むことしか能のない男が、死んだ自分専属のやし酒造りの名人を呼び戻すため「死者の町」へと旅に出る。旅路で出会う、頭ガイ骨だけの紳士、幻の人質、親指から生まれ出た強力の子…。神話的想像力が豊かに息づく、アフリカ文学の最高傑作。作者自身による略歴(管啓次郎訳)を付す。
「SM小説は単なるポルノでは終わらせない、俺が文学にまで高めてやる」老いてなお盛んだった故・団鬼六氏の遺志を、その生前より受け継ぎ、男女の情愛と人間の業を、徹底的に肯定し、文学として昇華することを目指す書き下ろし官能文芸。 常識やルールに縛られない恋愛小説を世に問う裏には、妄想の復権という目論見もあります。あらゆる場所が閉塞感に満ち満ちている時代に、妄想力に溢れた情愛小説こそがなにかを突破していくと。 「悦」は一流の官能作家陣、賛同を得て越境してくる別ジャンルの作家陣、また、異能のエッセイストたちによって、ワンランク上の官能文芸を総合的に提供しています。
ホームズという未解決事件を解き明かせ!事件簿に登場する「ソア橋」の難問や「マザリンの宝石」に迫り、ホームズの聖地であるスイスを巡礼し、ボーイスカウトや当時の首相などの文化・政治状況にも言及して、いまもなお多くの謎に包まれているホームズの不思議な世界を深く読み込む。
大阪の旧家で今日も起こる幸せな奇跡。本だらけの祖父母の家には禁忌があった。書物の位置を決して変えてはいけない。ある蒸し暑い夜、九歳の少年がその掟を破ると書物と書物がばさばさと交わり、見たこともない本が現れた!本と本が結婚して、新しい本が生まれる!?血脈と蔵書と愛にあふれた世界的ご近所ファンタジー。
七王国の“鉄の玉座”を賭けた王都での決戦の夜、湾を埋めつくした大船団は、緑色の燐火に呑まれ巨大な鎖に捕らわれて次々に沈没し壊滅した。一夜明けて、民衆は都の無事を喜び、少年王ジョフリーに快哉を叫ぶ。南部総督タイレル家との婚姻による同盟も決まり、ラニスター家の勢力は隆盛を極めた。一方、敵対するスターク家には、かつてなく過酷な運命が舞いおりていた…ローカス賞3作連続受賞に輝く至高の異世界戦史。
“五王の戦い”が収束し、七王国の統治は事実上ラニスター家にゆだねられた。辣腕たる“王の手”タイウィン公の手により、民はひとときの平和を享受する。だが、様々な怪異が各地で目覚めつつあった!北の奥地では、“異形”とその配下の“亡者”の脅威におびえた野人たちが、マンモスや巨人を引き連れて、“壁”を破壊せんと押し寄せる。また王都決戦に敗れたスタニスのもとでは、“光の王”の女祭司が怖るべき呪術を…。
今年一月に芥川賞を受賞した『共喰い』がベストセラーとなり、今もっとも注目を浴びる作家・田中慎弥さんの受賞第一作です。日中戦争で傷を負い不名誉な形で戦線を離脱、複雑な胸中を隠したまま戦後を過ごしてきた「父」が、昭和天皇の死を受けてとった行動とはーー。 田中氏自身を彷彿とさせる作家が受け取った読者からの手紙、という「枠物語」の手法をとりながら展開される数奇な物語。「父と息子」「戦争の記憶」「介護」といった骨太のテーマが、不気味な蜘蛛のイメージと共に描かれます。 「戦争体験」「父と子」「介護」といった重いテーマに正面から挑んだ意欲作。また、一種のミステリーとしても読める構造をもっており、文学の醍醐味をとことん味あわさせてくれる珠玉の一作です。なお、カバー装画は線香の炎で紙を焼き、繊細なイメージを描き出す異色のアーティスト・市川孝典さんの作品です。こちらも合わせてお楽しみください。
中東を革命の炎に包む「アラブの春」の発端となった一青年の焼身自殺。その瞬間を、文学は、思想は、いかに表現し、それに応答できるか。生きるなかで打ちのめされ、辱められ、否定され、ついに火花となって世界を燃え上がらせた人間の物語。
観客でごったがえすブロードウェイのローマ劇場で非常事態が発生。劇の進行中に、NYきっての悪徳弁護士と噂される人物が毒殺されたのだ。名探偵エラリー・クイーンの新たな一面が見られる決定的新訳!
昭和9年浅草。神隠しの因縁まつわる古木「触れずの銀杏」の下で発見された男の死体。だが直後に死体が消えてしまう。神隠しか、それとも……? 美貌の天才にして唯我独尊の毒舌家・朱雀十五が謎に挑む!
エネルギー戦略の失敗から、日本では19年前に「夜」制度が導入された。節電のため夜間は電力の供給が完全に途絶え、外出は禁止。通信・警察・医療機関も全停止する。親に内緒で、冒険気分で「夜」の吉祥寺に出た高校生・アキラと仲間たち。だが彼らは知らなかった。「夜」には「何か」が目を覚ますことをー。1人、また1人と仲間たちが消えていく。彼らはこの恐怖の一夜を生きのびられるのか。新世代サバイバル・ホラーの決定版。
造形美術の第一人者として世界の注目を浴びる著者。80年代、自分の魂を探りNYに生きるゲイの性愛を描き、新人文学賞を受賞した傑作が、現代に蘇る! 愛に飢えた青春の痛みを、耽美な文章で綴る。
ついに神々との絶望的な闘いに挑むサイボーグ戦士たち。しかし、神々の圧倒的な力の前に次々と仲間が倒れていく。生き残った彼らが最後にとった作戦とは……? 幻の大作、堂々の完結!
古城に隠された謎を解け!かつて掏摸だったリアムは、名探偵ホームズを目指して少年探偵団で修業中。貧民窟に住むリアムの下に、ウィザフォード伯爵の遣いが現れた。父と伯爵の関係とは?伯爵の子・エドワードが語る「13年前の殺人事件」とは?過去の秘密が現在の闇と混じり合い、リアム父子の運命も変えていく。一方、リアムの失踪を探っていた他のメンバーは、あの“教授”の陰謀へと近付いていく…。
しあわせな暮らしを求めて、同居することになった女3人。一人暮らしは寂しい、家族がいると厄介。そんな女たちが一軒家を借り、暮らし始めた。さまざまな事情を抱えた女たちが築く、3人の日常を綴る。