2012年5月発売
九月、阪神競馬場。レース中に一頭の馬が暴走し、落馬事故が発生。勝利した女性騎手・夏海は、事故の裏で馬の所属する厩舎内で、馬主と調教師が対立していたことを知る。折しも落馬した騎手の父親が厩舎で何者かに襲われ、重傷を負った。親子は狙われたのか?幼馴染みの騎手のため、トレーニング・センターや阪神競馬場で事情を探っていた夏海は、元同僚や新人騎手に会う中である疑いを抱きー。新鋭の描く競馬ミステリー。第30回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞。
明治の世に起こる怪事件の数々を、青年探偵・結城新十郎が快刀乱麻を断つ名推理で真相に迫る!怪しい新興宗教団体の連続変死事件の謎を追う「魔教の怪」、衆人環視の中、燃えさかる密室から人が消える「赤罠」、神の怒りに触れて死んだ男の隠された過去を明らかにする「狼大明神」、バラバラになった死体から意外な被害者と犯人を推理する「トンビ男」など全12篇。文豪・坂口安吾の幻の傑作推理連作集、堂々の完結。
チョコザイをアメリカに連れ帰ろうとしたラリー井上は、偶然沢と舞子を見かけたチョコザイが、自ら捜査に参加しようと行動を起こしたことに衝撃を受ける。チョコザイが次々と事件を解決していたと知り、ラリーは彼を沢たちのそばに置くことに決めた。一方、沢と舞子は突然現場にチョコザイが現れたことに驚きながらも、再び力を借りて事件を解決していくが…。話題の新感覚ミステリー、ノベライズ3ヶ月連続刊行第2弾。
人間兵器として育成された「メギド」という人格を併せ持つ根岸達也。沖縄でのマキエとの幸福な生活も束の間、ふたたび死地を求めて九州へ旅立つことになった。だが鹿児島に降り立った直後、戦中のパイロットとしての記憶が蘇った。それは元陸軍の特攻経験者のものなのか?失われた記憶を辿り、やがて閉山の危機にある炭鉱に到った達也は、労使闘争の渦中に巻き込まれた…。大好評シリーズ第3弾。文庫書き下ろし。
時は平安。安倍晴明の末孫で見習い陰陽師の昌浩は、黄泉の封印を守るため都を奔走していた。だが、晴明の式神・紅蓮(相捧の物の怪)の魂が、封印を解く鍵として、屍鬼に取り込まれてしまう。昌浩は封印を守るため、紅蓮を自ら手にかけるしかないのか!?高淤の神から借りた神殺しの力・白い焔を手に、昌浩は封印を解かんとする宗主が潜む出雲の国へと出立するがー!?大人気の陰陽師物語、風音編、激動のクライマックス。
目を上げると鏡の中の見知らぬ女が、自分をみつめているー。美容整形で、彫刻的美貌を手に入れた麗子。しかし葬り去ったはずの容貌は、心まで飼い馴らすことはできなかった。愛されることを渇望し、満たされない日々を生きる女の心に、ある日ともった恋心。想いを募らせ追いかけていった先の山荘で目にした衝撃の情景とは!?ともに一つになって闇の底に転落していこうとする男と女の倒錯した愛の形を描く、異色の恋愛小説。
ワンマン社長の独裁体制のもと、全国紙・東京経済産業新聞社は混迷を深めていた。ついには子会社の手形流出という仰天の事態が発生。架空発注で手形を乱発し裏金作りにあてていたのだ。バブル経済を煽ったとの批判を受けつつも、日本経済の発展を支えた誇りまでかなぐり捨てるのか?心ある新聞記者たちの、醜聞にまみれた経営陣との闘いが始まる!マスコミ経営の内実を暴き、報道の倫理と責任を鋭く問う、経済小説の真骨頂。
日本経済を牽引してきたとの自負を持つ、大手新聞社の東京経済産業新聞社に激震が走った。政官財を巻き込んだリクエストコスモス社未公開株事件に連座して、社長が引責辞任したのだ。しかしそれは、醜聞の始まりにすぎなかった。乱脈経営の末、バブル崩壊で破綻した名門商社が、マスコミ対策として、東経産新聞内部の協力者に巨額の金を支払っていたことが明らかになり…。第四権力の驕りと堕落を白日の下に曝す衝撃の問題作。
街で噂の占い師、その名は小梅。その正体は誰も知らず、謎に包まれていた…はずだったのに!!?小梅の目の前に突然現れたヤ○ザ(!?)みたいな芸能マネージャー、武元。なんと、小梅をスカウトしに来たらしい。『てめえ…、よし分かった、お前トランクに乗れ』「暴力反対!変態!」-最悪の出会い方をした二人。運命のいたずらか。タロット占いによって奇妙な恋は動き始め…予測不能な展開!衝撃の結末!伝説の占い師が唯一占えなかったものとは。
新人社員くんの何気ない仕草が不思議に気になる、先輩女子今井さんの心の揺れ動き(「日々の春」)。同棲女性に軽んじられながら、連れ子の子守りを惰性で続ける工員青年に降った小さな出来事(「乳歯」)。故郷の長崎から転がり込んだ無職の兄が、弟の心に蘇らせたうち捨てられた離島の光景(表題作)などーー、流れては消える人生の一瞬を鮮やかに刻む10の忘れられない物語。
目の前を悠然と流れる筑後川。だが台地に住む百姓にその恵みは届かず、人力で愚直に汲み続けるしかない。助左衛門は歳月をかけて地形を足で確かめながら、この大河を堰止め、稲田の渇水に苦しむ村に水を分配する大工事を構想した。その案に、類似した事情を抱える四ヵ村の庄屋たちも同心する。彼ら五庄屋の悲願は、久留米藩と周囲の村々に容れられるのかー。新田次郎文学賞受賞作。
ついに工事が始まった。大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。百姓たちは汗水を拭う暇もなく働いた。「水が来たぞ」。苦難の果てに叫び声は上がった。子々孫々にまで筑後川の恵みがもたらされた瞬間だ。そして、この大事業は、領民の幸せをひたすらに願った老武士の、命を懸けたある行為なくしては、決して成されなかった。故郷の大地に捧げられた、熱涙溢れる歴史長篇。