2012年5月発売
ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの日のことをー本と音楽と映画、それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。高校の同級生、楡崎綾音・戸崎衛・箱崎一のザキザキトリオが過ごした大学時代を描く、青春小説の新たなスタンダードナンバー!本編に加え、三人の出会いを描いた単行本未収録作「糾える縄のごとく」、さらに文庫版特別対談「恩田陸、大学の先輩と語る」を収録。
幼少の頃に川の対岸に観た“黒くて巨大な機関車”、公民館の池に泳いでいた“マグロのような大きさの鯉”、そしてある日を境に消えてしまった友人A-「意味付けなどいっさい拒否するただそれが起こったままにしか語れない不思議な出来事」を経験した私はやがて、ナイジェリアに赴任することになるのだが…。小説に内在する無限の可能性を示した傑作。
バンカーで信じられない大叩きをしても、堂々と申告する硬骨漢。初めておとずれた優勝のチャンスに、平静さを失う万年ブービー男。人生最後のプレーを終えた、老ゴルファーの後姿…。ゴルフクラブを握る者なら誰でも思い当たるシーンを、端正な筆致で描いた小説集。
デザイン会社に勤める悠木仁絵は35歳独身。いまの生活に不満はないが、結婚しないまま一人で歳をとっていくのか悩みはじめていた。そんな彼女に思いを寄せる幼馴染の駒場雄大。だが仁絵には雄大と宙ぶらりんな関係のまま恋愛に踏み込めない理由があった。二人の関係はかわるのか。人生の岐路にたつ大人たちのラブストーリー。
美人姉妹が住む谷中の“猫屋敷”に猫が増えすぎて、近隣から奉行所へ苦情が来た。やがて、姉妹が以前に鬼平が担当して未解決になった押し込み強盗の被害者と分かり…。根岸肥前が、江戸の怪異を解き明かす「耳袋秘帖」殺人事件シリーズ第五弾。根岸の妻・おたかとの日々を描いた短編「白雲斎のこと」を書き下ろしで収録。
元日の午前零時、全国の初詣客が大量に消失し、同時に警視庁や各県警本部が謎の集団に占拠された。それが日本絶滅計画の幕開けだった。それぞれ特殊な能力を持つ7人組セブンスは、リーダー・タクトの指揮のもと、日本中の人という人を消していく。一体どうやって、なんの目的で?驚愕のパニック・サスペンス。
世界的アーティストだが病気で色がわからないアーチ、朝と夜それぞれ真逆の時間に眠る不思議な双子の妹キサとトア。不便な事もあるけれど、“風のエキスパート”である父と海辺の町の愉快な仲間と共に楽しく暮らしている。だが父の仕事が原因で一家は少し困ったことに…。やさしい四季の物語。文庫書き下ろし掌編を収録。
時代の絶頂を極め、近代落語の祖と言われた大名人・三遊亭円朝と彼を愛した五人の女。江戸から明治に変わる歴史の大転換期に生きた彼らの姿、いつの世も深く果てない男女の仲を、語りの名手がいま鮮やかに炙り出すー全盛を支えた名妓から、淋しい晩年を看取った娘分まで、女を活写する傑作時代小説。
著者自身が厳選した待望の著作集。谷崎潤一郎賞受賞の長篇「槿」および川端康成文学賞受賞の「中山坂」を収録した「眉雨」を一巻にまとめる。八〇年代の逸脱と不安の裡で進行していた危機をエロスと幻影と謎を柱に実験的な長篇に仕立てた著者最大の問題作。そして巧緻な文体の限りを尽くした緊密な短篇集成。
「鬼面ひとを脅すバロック的なスタイルは捨て…やっと自分の声を見いだした」ボルヘス後期の代表作。未開の蛮人ヤフー族の世界をラテン語で記した宣教師の手記「ブロディーの報告書」のほかに、直截的でリアリスティックな短編一〇編を収める。
頼朝・頼家・実朝ら源将軍家の闇に光を当て、ベールに覆われた悲劇を鮮やかに描ききった幻想連作短編集。頼朝と清盛の相剋、謎に包まれた頼朝の死をめぐる因縁を描く「されこうべ」、『修禅寺物語』に想を得た「双樹」、実朝暗殺事件を実朝・公暁双方の生涯からドラマチックに迫る「黄蝶舞う」と「悲鬼の娘」、頼家と実朝の実姉・大姫の儚い生を描く「空蝉」の五編を収録。著者初の本格時代小説、待望の文庫化。
「この国の老いた暦を斬ってくれぬか」会津藩藩主にして将軍家綱の後見人、保科正之から春海に告げられた重き言葉。武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの改暦事業は、文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。改暦の「総大将」に任じられた春海だが、ここから想像を絶する苦闘の道が始まることになるー。碁打ちにして暦法家・渋川春海の20年に亘る奮闘・挫折・喜び、そして恋。
望むことは、罪ですか?彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい。そんな願いが転落を呼び込む。ささやかな夢を叶える鍵を求めて5人の女は岐路に立たされる。待望の最新短篇集。
片野萩子のイメージは、地味で真面目な委員長。一方、幼なじみの稲多大地は、気さくなイケメンで人気者。そんなカテゴリー違いの二人が、とある事件をきっかけに急接近!?山間の田舎町、幽谷町で繰り広げられる、恋と青春と、たまに変身(?)のハートフルご近所あやかし物語。
昭和二十七年。何の前触れもなく姿を消した恋人…末期ガンの母に代わって消えた男を捜す娘は、いつしか母の想いに自分の恋を重ねはじめる。函館の街を舞台に、時代を挟んで向き合う二組の恋人たちの行き着く先はー衝撃の結末が胸を揺さぶる渾身の恋愛長編。
羽田融はラップに夢中な高校二年生。ひょんなことから剣道をはじめるが、剣道部のコーチにして「以前、父親を殺したらしい」矢田部研吾からいきなり一本取る。ところが「マグレだよ」と先輩に言われ…。ラップ命の少年と人生にも剣にも倦んだ男の灼熱の季節と運命の打ち合いまでを揺るぎない文章で構築した超純文学。
税金滞納者を取り立てる皆の嫌われ者、徴収官。なかでも特に悪質な事案を扱うのが特別国税徴収官(略してトッカン)である。東京国税局京橋地区税務署に所属する新米徴収官ぐー子は、鬼上司・鏡特官の下、今日も滞納者の取り立てに奔走中。カフェの二重帳簿疑惑や銀座クラブの罠に立ち向かいつつ、人間の生活と欲望に直結した税金について学んでいく。仕事人たちに明日への希望の火を灯す税務署エンタメシリーズ第1弾。