2012年発売
怒涛の日々を送るベルリン警視庁のラート警部。ベルリンを震撼させる殺人事件の謎、消えたロシア人歌姫の消息、都市に暗躍する地下組織、ひそかにベルリンに持ち込まれたとささやかれる莫大な量の金塊の行方…。予測不能の成り行きで、絶対絶命のピンチに陥ったラートに光明は射すのか?転換期の首都と人を鮮やかに活写する、傑作大河警察小説。ベルリン・ミステリ賞受賞作。
優等生の委員長と不良少女の淡い恋、すべてはそこから始まった。彼女が自力で人生を立て直すことができたなら、十年後にあるものを渡そう。そして約束の日、三年前から行方不明だという彼女の代わりに、夫を名乗る人物がやってきたがー。ニューヨークから帰ってきた青年と、幽霊騒動に巻き込まれた少年少女、そして最高の「相棒」が織りなす、約束と再会の物語。
1948年1月26日。雪の残る寒い午後。帝国銀行椎名町支店に白衣の男が現われた。男が言葉巧みに行員たちに飲ませたのは猛毒の青酸化合物。12人が死亡、四人が生き残り、銀行からは小切手と現金が消えた。悪名高い“帝銀事件”である。苦悶する犠牲者たちのうめき、犯人の残した唯一の物証を追う刑事のあえぎ、生き残った若い娘の苦悩、毒殺犯と旧陸軍のつながりを知った刑事の絶望、禁じられた研究を行なっていた陸軍七三一部隊の深層を暴こうとするアメリカとソヴィエトそれぞれの調査官を見舞う恐怖、大陸で培養した忌まわしい記憶と狂気を抱えた殺人者。史上最悪の大量殺人事件をめぐる12の語りと12の物語ー暗黒小説の鬼才が芥川龍之介の「薮の中」にオマージュを捧げ、己の文学的記憶を総動員して紡ぎ出す、毒と陰謀の黒いタペストリー。
勇者互助組合ーそれは、役目を終えた退役勇者達によって運営されている、時空を超えて様々な世界の『勇者』をサポートする組織。現役勇者や退役勇者同士の交流にも力を入れており、交流型掲示板の設置・保守もその活動のひとつである。そんな勇者の、勇者による、勇者のための掲示板で交わされる、『勇者』の概念を揺さぶるような、禁断の本音トークの数々-あまりにも理不尽な設定、信頼できない仲間への愚痴、誰にも相談できない秘密の失敗談…勇者同士でしか分かちあえない、胸に秘めた思いを解き放つべく、今日もまた、勇者互助組合・交流型掲示板にスレが立つ。
妻を看取って十余年、人生の行き止まりを意識し始めた嶺村浩平は、古いトランクからかつての大学のゼミ仲間・瀬戸重子の若々しい写真を見つける。そして甦る、重子と一度きりの接吻を交わした遠い思い出。思わぬ縁で再会した重子の勧めで、七十代にして初めて携帯電話を持った浩平は、秘めた想いをメールに込めるが…。恋に揺れる、老いの日々の戸惑いと華やぎを描く傑作小説。
結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだー。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。不安定で茫漠とした新婚生活を経て、あるときを境に十一年、妻は口を利かないままになる。遠く隔たったままの二人に歳月は容赦なく押し寄せた…。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。
ギリシア神話にしか登場しなかった伝説のトロイア。しかし、その伝説を信じ、ついにはトロイアの都が実在していたことを証明してみせた男ーシュリーマン。18か国語を操り、巨万の富を築いた実業家でありながら、どんな環境におかれても希望を見失わず、トロイア発掘の夢を追い続けた人物の情熱的な生涯をつづった自伝を漫画化。
男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田の心を捉えたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情。女たちの世界を観察することに無上の悦びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれー。濃く熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説。『親指Pの修業時代』『犬身』で熱狂的な支持を得る著者5年ぶりの新作。著者26歳の時に書かれた単行本未収録作も併録。
今日も仕立に心血を注ぐ榎田。そして、そんな榎田を淫靡な世界へと誘う芦澤。一見平穏な見える日々。だが、一人の中年刑事が芦澤の右腕、木崎と弁護士、諏訪との関係、さらに木崎の組への裏切り行為に気づいたことで、破滅へのカウントダウンが始まる。諏訪が組に捕らわれ、今度はその人質交換として木崎が榎田と組長の孫娘・優花を攫う。一方で木崎の始末を命じられる芦澤。八方塞がりの闇の中、一発の銃声が…。
佳幸は新進気鋭の金属彫刻アーティスト。従兄弟の博光がパリで実業家のアルマンと恋に堕ちたのがきっかけで、アルマンの親友、ジャン・ミシェルから熱い秋波を送られているが、所詮彼は遊び人…と若干引き気味。そんな佳幸とジャン・ミシェルがラスベガスのコンテンポラリーアートフェアで再会した。煌めく夜に二人の関係も一気に燃え上がるかと思われたが…。素直になれない佳幸。パリー神戸ディスタントラブ。
藍染惣右介が引き起こした戦いは、多くの傷を世界に残しつつも終結した。…黒崎一護の力を代償として。尸魂界を訪れた織姫と語り合ったルキアは決意する。誰よりも、誰かを護りたいと願っている少年の力を、もう一度取り戻すことを。ルキアの送った一通のメール、その内容が、死神たちの心を動かすー。
幕末の動乱期、伝説の「人斬り」がいた。その名は「緋村抜刀斎」。修羅の如き強さで「最強」の名を欲しいままにしていた。時は流れ、明治十一年ー。男は「人斬り」の名を捨て不殺の「流浪人」となっていた!?-。
自分をレイプしたワンボックスカーの4人組を探してほしいーちぎれた十字架のネックレスをさげた美女はマコトにそう依頼した。広域指名手配犯B13号を追うさなか、若者ホームレス自立支援組織の戦慄の実態が明らかになる表題作ほか3篇、最高の燃焼度で疾走するIWGPシリーズ第1期完結10巻目。
「これこそが日本だ!」戦争で何もかも失った蒲生太郎。かつての戦友の誘いに応じて秋田にやってきたら、そこは息苦しい人生観がくるりと変わる、まさに別世界だった。温厚な金木医師、マタギ免許皆伝のイワオ、色っぽい敏子。そして悪戯ばかりの悪ガキども。艶やかなユーモアたっぷりに描く、ふるさと賛歌。
一流企業に勤める夫が50歳を目前に失踪した。妻の睦子は自分に落ち度があつたのかと戸惑い、懊悩し、それでも仕事を探して働きに出る。だがそこで直面したのは、社会の厳しさだった。一方、夫の瞭平はホームレスとなっていたー。夫の失踪をきっかけに夫婦それぞれの人生を見つめなおす、再生の物語。
温厚な父が秘めていた40年前の不思議な恋、江戸から消えた女房が見せる奇妙な夢、少年時代の後悔を振りきれない男の帰郷…。切ない恋愛から艶めく時代小説まで自在に描きだす、著者の才が冴えわたる6篇。恐怖や迷いに立ち止まってしまった大人たちの、切なくて、ちよっと妖しい世界を詰め合わせました。自作解説付き。
伏ー人であって人でなく、犬の血が流れる異形の者ーによる凶悪事件が頻発し、幕府はその首に懸賞金をかけた。ちっちゃな女の子の猟師・浜路は兄に誘われ、江戸へ伏狩りにやってきた。伏をめぐる、世にも不思議な因果の輪。光と影、背中あわせにあるものたちを色鮮やかに描く傑作エンターテインメント。
本所深川で隠密廻り同心が斬殺された。この同心は、町奉行所も容易に手を出せない無法の地・八右衛門島の探索をしていたという。一向に動こうとしない南町奉行に不審を抱いた秋山久蔵は、真相を追って八右衛門島にひとり潜り込むが、久蔵の前に現れたのはこの地に似つかわしくない謎の女だった。人気シリーズ新装版第5弾。