2012年発売
コメディ映画だけが救いのマッサージ師・金子堅三は、客として出会った映画監督・海馬五郎に「弟子入り」することに。はじめての撮影現場は、北九州のさびれたシャッター商店街。スタッフ・キャストが退屈しのぎにはじめた賭けは、78歳にして初主演の老優・小関泰司のNG回数を当てるというものだった…。
圧倒的人気を誇る教師、ハスミンこと蓮実聖司は問題解決のために裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学園祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。蓮実による狂気の殺戮が始まった!ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。
脚本・監督作『ゆれる』『ディア・ド クター』が高い評価を受け、執筆活動 でも『きのうの神さま』が直木賞候補 になるなど、常にその創作活動が注目 されている西川美和さんの小説処女作 です。田舎を嫌って都会に出た奔放な 弟・猛と、田舎に残り実家を継いだ実 直な兄。対照的な二人の関係が、幼馴 染みの女性の死をきっかけに、大きく 揺らぎはじめる……。本作は、同名映 画の小説化(ノベライズ)という位置 づけになりますが、登場人物ひとりひ とりの視点から描かれた心象風景は、 文学作品として非常に高い完成度を誇 り、第二十回三島由紀夫賞候補にもな っています。
かめくんは自分がほんもののカメではないことを知っている。クラゲ荘に住みはじめたかめくんは模造亀。新しい仕事は特殊な倉庫作業。リンゴが好き。図書館が好き。昔のことは憶えていない。とくに木星での戦争に関することは…。日常生活の背後に壮大な物語が浮上する叙情的名作。日本SF大賞受賞。
自己満足で患者の傍にいるなんて偽善者よ。 栗原一止は、信州にある「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医である。医師不足による激務で忙殺される日々は、妻・ハルの支えなくしては成り立たない。昨年度末、信濃大学医局からの誘いを断り、本庄病院残留を決めた一止だったが、初夏には恩師である古狐先生をガンで失ってしまう。 夏、新しい内科医として本庄病院にやってきた小幡先生は、内科部長である板垣(大狸)先生の元教え子であり、経験も腕も確かで研究熱心。一止も学ぶべき点の多い医師だ。 しかし彼女は治ろうとする意思を持たない患者については、急患であっても受診しないのだった。抗議する一止に、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。彼女の医師としての覚悟を知った一止は、自分の医師としての姿に疑問を持ち始める。そして、より良い医者となるために、新たな決意をするのだった。 【編集担当からのおすすめ情報】 青年医師・栗原一止(いちと)に訪れた、最大の転機! 豪華キャストで映画化もされた大ベストセラー 二年ぶりの最新作にして、シリーズ第一部の掉尾を飾る 最高傑作ついに登場! 全五話からなる極上の物語をお楽しみください。
『真昼の怪』の調査で夏休みを潰してしまった刻子たちは、 雅の父・蒼然の紹介で、彼の知り合いが経営する海沿いの古民家へ宿泊することになる。 飽きもせず愛の言葉をささやき続けるジャンに戸惑う刻子。 そんな彼らの様子を見守る(楽しむ)佐々子と金之助。 一方、刻子に思いを寄せる雅はジャンの存在に心中穏やかでいられない。 旅先といえども相変わらずの彼ら、と思いきやーー 「……生身だと、欲情して困ります」 「ジャンのことが気になる? 僕のことよりも……?」 ジャンと雅が刻子に急接近!? 美形でオタクなエクソシスト
きっと世界で一番、私は飛びたいと思っている。大ロングセラー『100回泣くこと』の著者が贈る、“空飛ぶ”青春部活小説。「鳥人間コンテスト」アナウンサー・羽鳥慎一氏大絶賛! の爽快ストーリー。
ヤクザの見習い、フィリピン逃亡、クラブのボーイ、売れっ子作曲家を経て、半島でひとり隠棲する伯父の「ひっさん」は、身内で唯一の大人の男だった。おれは社会に出たものの、万年正月のような家庭内乞食に墜ち、あぶく銭を手に入れ、インドネパールを彷徨う。が、悟りも開けず帰国したら…。自由と自堕落、人の生き死にをとことん描く、天衣無縫の傑作長篇。
芥川の死、そして昭和文学の幕開けー「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった」(堀辰雄)。そこに溢れだした言葉、書かずにおれなかった物語。昭和二年から一七年に発表された、横光利一・太宰治らの一六篇を収録。
劇団員の夏帆は、アルバイトをしながら日々の生計を立てている。一人暮らしの32歳。20代のころのように素直に夢を追うこともできず、かといって郷里には戻りたくない。アルバイトの住宅地図の調査に訪れた埼玉県のベッドタウンは、小学校の頃に一時期住んでいた街だった。夏帆は小学校の同級生と再会し、その夜、彼女の家に向かう途中で運悪く通り魔に遭遇してしまう…。「日常の些細な悪意」の連鎖が引き起こす長編サスペンス。
インドで襲われ一年後に亡くなった父の『占い拠 七ノ瀬』を継いだ桜子は、客が喜ぶ占いをするのが苦手で、占い師として致命的。そんな桜子を心配して、表に裏にと駆けずり回るのが乾耕太郎だ。ふだんはしがないフリーカメラマンをしている。仕事がないときがよくあるのだが、そんなときは奔走しっぱなし。というのも桜子に気があるからだ。二人の前に立ちはだかる五つの謎を解いて、男を上げろ、耕太郎。
「替天行道」の志を受け継いだ楊令の闘いと、熱き漢たちの生き様を壮大なスケールで描いた、北方謙三の『楊令伝』。文庫版全十五巻完結を記念して、公式読本が文庫オリジナルで登場。地図や年表、厖大な登場人物たちを網羅した人物事典、著者のエッセイや対談、さらにはここでしか読めない担当編集者のウラ話など、『楊令伝』の世界をもっと楽しむためのコンテンツが満載。
砂漠の熱い風に全身をさらして、そのうち、肉が全部こそげ落とされて、骨になってしまえばいいーかつて彼はそう言った。愛する男が異国の地で突然亡くなった。アルコールと薬物の同時摂取が原因だという。彼は生きることが辛かったのではなかったか?愛していると囁きあったのは偽りではなかったか?ひとり残された女は、死んだ男を追い求め、彼が直前まで過ごしたヨーロッパへと旅立つ。
鎌倉時代の半ば。玄界灘に浮かぶ壱岐島で、幼なじみの二郎と宗三郎は、浜に流れ着いた一人の少女を発見する。少女の名は麗花。母国の高麗を追われ、親を失っていた。三人は島で兄妹のように育つが、やがて蒙古の大軍が壱岐を襲い、過酷な運命に巻き込まれてゆく。何のために生き、誰のために戦うのかー元寇という巨大な時代の嵐に立ち向かう若者たちを描いた、魂を揺さぶる歴史大長編。
蒙古軍の圧倒的な力に壱岐は蹂躙され、多くの民が命を奪われた。主君を失いながらも戦火を生き延び、蒙古への復讐心に燃える宗三郎。絵師を目指して隣国の宋に渡った二郎。裕福な養父のもとを出て芸の世界に身を投じた麗花。それぞれの道を歩む三人は、年を経て再び蒙古の脅威にさらされる。凄絶な戦いを生き抜き、若者たちは光をつかむことができるのか。若き才能が活写する、迫真の歴史長編。
紀伊半島は熊野川の河口に位置する街、森宮。医者の槙隆光は貧しい者から治療費を取らないことから親しみを込めて“毒取ル先生”と呼ばれていた。ときは1903年、豊かな自然のなかで暮らす槙たちの周りには鉄道敷設や遊郭設置などの問題が起こり、一方で日露戦争開戦の足音がすぐそこに迫っていたー。歴史上の人物に材を取り、当時の情勢と熊野の人々を瑞々しく描いた第51回毎日芸術賞受賞作。