2012年発売
掟破りの推理法で真相を解明する水平思考ーラテラル・シンキングに天性の才を発揮する浅倉絢奈、22歳。新人ツアーコンダクターとして国内外を飛びまわる彼女は、旅先で発生するトラブルから難事件まで、予想もつかない手段で瞬時に解決する。中卒だった彼女は如何にして閃きの小悪魔と化したのか?鑑定家の凛田莉子、『週刊角川』の小笠原らとともに挑む知の冒険、ここに開幕。人の死なないミステリ最高峰、αシリーズ第1弾。
木々に彩られた銀の森屋敷と呼ばれる古く美しい家で、愛する家族とばあやのジュディとともに幸せに暮らす少女パット。変化を嫌い、このままの日々が続くことを願うが、時の流れは否応なしに忍び寄り、少しずつその世界を変えていく。大切な友との出会い、家族の出産や結婚そして別離…。プリンス・エドワード島の美しい四季を舞台に、少女の成長と人生における大切な出来事を丹念に描く、モンゴメリの名作。決定版新訳。
施政権返還直前の沖縄、那覇。英字新聞リュウキュウ・ポストの記者・伊波尚友は、ある日ホワイトとスミスと名乗る2人のアメリカ人から反戦活動に関するスパイ活動を迫られる。離島出身ゆえに幼少の頃から差別を受け、沖縄にも日本本土にも憎悪を募らせる尚友は、グリーンカードの取得を条件に承諾。コザに移り住み、反米反基地活動に身を投じながら情報を集めていくー。
反米反基地活動の裏でアメリカ人のスパイとして働く尚友は、罪の意識に苛まれながらも、施設でともに育った混血の美女、照屋仁美との関係にのめり込む。一方、幼なじみの比嘉政信、やくざのマルコウと組んで密かに進めていたアメリカ軍の武器調達にも成功し、いよいよ基地の核兵器収容施設襲撃のときが迫ろうとしていたー。返還前夜の沖縄の過酷な現実に斬り込む傑作小説、待望の文庫化。
女子大生・陽のアパートに毎日、通ってくる男。だまってそれを受け入れる陽。決して「好き」などと甘い言葉を囁かない男・中野は、煙草の香りだけを残して、今日も仕事へと戻っていく。“都合のいい女”-そんな関係に溺れていた。それでもずっと一緒にいられるなら…。8歳年上の彼に少しでも近づきたくて、離れるのが怖くて。死にそうなくらい辛いのに、何も言えず大人を演じてしまう陽。体を重ねるほど想いばかりが募っていく…。苦しすぎる切ない恋の先に待っている結末とは…。前作『スキャンダル・ポリス』で、そのニヒルさが大人気だったキャラ・中野。彼に恋してしまった女の子のちょっぴり大人なラブストーリー。
御側衆本郷康秀が将軍家斉の代参として日光に向かった。極秘の出立、余りにも少ない従者の数、かげまの同行等、不審な点が目に付き、総兵衛は百蔵と天松を伴って一行を追う。一方、この代参に関わる秘密を掴んだおこものちゅう吉も後を追った。御庭番、傭兵たちとの激闘を経て、本郷の恐るべき野望が明らかとなるのだが…。東照宮を舞台に十代目総兵衛の胸のすく活躍を描く第三巻。
末っ子は損だ。いつまでも姉にいたぶられ、ホントに腹立たしいー。元は貧乏男好きの長女・亜矢は見合いの果てに玉の輿婚、転んでもただでは起きない毒舌家の次女・真矢は奇病を克服して、華麗に転職。三女の水絵は大学を出たものの、フリーターの実家暮らしで、新しい恋に一喜一憂の日々。それぞれの恋愛、人間関係を時に優しく、時に厳しく見守る家族の日常を描く長編小説。
豪雨で帰宅困難になった人たちの心模様を描く表題作はじめ、それぞれの日々の悲哀と小さな誇り、職場の人たちとのすれ違いや結びつきを丹念に描き出す6篇。働き、悩み、歩き続ける人たちのための物語集。
15世紀イタリア。中世以降、覇権をめぐってたびたび戦火が広がるなか、各国の君主たちは芸術を保護し、「ルネサンス」と呼ばれる古典の復興運動が巻き起こっていた。その時代に活躍した万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼が生涯をかけて解明し続けた、自然の洞察についての極意が詰まった遺稿の数々を漫画化。
河南省の板橋店で小さな宿屋を営む女将の三娘子は客に焼餅を食べさせ驢馬に変える妖術を使っていた。それを知った旅人が女将を騙し驢馬に変えて酷使するという唐代の怪異譚「板橋三娘子」について、その原話から成立の背景、伝播と変遷の実態を、広範な資料を渉猟し総合的に考察。原話の中国への伝来と翻案による怪異譚としての成立の背景を、関連資料の収集、舞台となった土地の歴史、物語と当時の風俗との関わり、人形を用いる幻術の特異性、さらに小説としての完成度など多面的に考察するとともに、中国の変身術が古代の自然観にもとづく「気」一元論に依拠することを明らかにする。
ひょんなことから雇われ医師として参加することになった、カラコルムの未踏峰ディラン遠征隊。キャラバンのドタバタ騒ぎから、山男のピュアにして生臭い初登頂への情熱、現地人との摩擦と交情…。そして、彼方に鎮座する純白の三角錐とは一体何物なのか…。山岳文学永遠の古典にして、北文学の最高峰。
京都近郊に建つヨーロッパの古城のような館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、既に惨劇は始まっていた。首なし死体、不可解な密室、奇妙な見立て殺人、そして蘇える死者…。「謎」だらけの連続殺人事件を解決すべく登場したのは銘探偵メルカトル鮎ー。彼が導き出した凄絶な結末とは!?麻耶ワールド炸裂のデビュー作。
30年以上SFを書いてきたぼくは、第一線をはなれたような気分になっていたーベテラン作家が、伊藤計劃『ハーモニー』と3・11後のフィクションの可能性を考察する表題作、深井零がパーソナルなコンピュータを追い求めた記憶を語る“戦闘妖精・雪風”シリーズのスピンオフ「ぼくの、マシン」、多世界解釈を巡る異色スペースオペラ「かくも無数の悲鳴」など、変遷し続けるコミュニケーションの様相を切り取った全6篇を収録。
さまざまな「後藤さん」についての考察が、やがて宇宙創成の秘密にいたる四色刷の表題作ほか、百にもおよぶ断片でつづられるあまりにも壮大で、かつあっけない銀河帝国興亡史「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」、そしてボーイ・ミーツ・ガール+時間SFの最新型モデル「墓標天球」など、わけのわからなさがやがて圧倒的な読書の快楽を導く、さまざまな媒体で書かれた全六篇+αを収録。
戦争は終結に向かい、ロシアで革命が起き、そして罹患すれば死にいたるインフルエンザが流行の兆しを見せる1918年。ボストン市警察の若き巡査ダニーは、組合を結成しようとする急進グループへの潜入捜査を命じられる。同じ頃、遠く離れたオクラホマで殺人を犯してしまった黒人青年ルーサーは追手を逃れるためボストンへとやってくる。二人の青年の人生が思わぬ形で交錯する時、時代のうねりは発火点を迎えようとしていた。
逃亡者のルーサーはダニーの実家で職を得、二人は友情の絆を結んでゆく。だが、二人の行く手には数多くの困難が待ち受けていた。任務と仲間の板挟みになり、また許されぬ恋に悩むダニー。追手に怯え、悪徳警官に脅されるルーサー。そしてボストンの町では、生活苦に追い込まれた警官たちの不満が、ついに爆発しようとしていた…歴史の渦に翻弄される人々のドラマを『ミスティック・リバー』の著者が力強く描く超大作。
鎌倉幕府を開いた源頼朝、そして、日本史上の稀代の英雄、源義経の父にして、太政大臣・平清盛の最大のライバルと目された男、源義朝。平家に比肩すべく、関東を源氏の拠点として作り上げ、頼朝再起の基礎を作り、保元の乱では、敵方についた父と弟たちを殺し、源氏の棟梁に君臨した悲運の御曹司の波瀾の生涯。
美しい容姿からは想像もつかないほどガサツな叔母の意外な秘密についての表題作、雨の日だけ他人の心の声が聞こえる少女を描く「雨つぶ通信」、西日暮里の奇妙な中華料理屋を巡る奇譚「カンカン軒怪異譚」など、『花まんま』『かたみ歌』の著者が、昭和の東京下町を舞台に紡ぐ「赦し」と「再生」の七つの物語。