2012年発売
大正一三年三月、不世出の作家・安部公房生誕の二週間後に刊行された、実母ヨリミによる生涯唯一の小説。恋愛に至上の喜びを見いだす男女五人の愛憎劇は、やがて人間の本質へ迫るドラマへと一変していく。瑞々しい感性と深い洞察力、簡潔で凛乎たる文章ー資料的重要性もさることながら、文学性の極めて高い、二一世紀の今、さらなる輝きを放つ、幻の名作。
生涯で膨大な作品を残した室生犀星。大正から昭和初期にかけての著作の中から、結婚や家族を対象したもの、芥川龍之介を中心とした交遊関係に言及したもの、関東大震災を経験し生と死について触れたものを各章に分けて編纂。小説、詩歌のみならず、日記や書簡からも犀星の文学に対する姿勢や精神を読み解く作品集。
結城麻子・東京の呉服屋の一人娘「夫婦のつながりは、セックスだけじゃないでしょう?」×桐谷正隆・千桜の夫。婿養子だが野心家「俺は、今すぐにでもあんたを抱きとうてたまらんのや」、桐谷千桜・京都の葬儀社の社長令嬢「もう逃がさへん。あんたはうちの奴隷や」×小野田誠司・麻子の夫。ブライダル会社の営業「お願いだから、もう苛めないでくれ」。共犯関係は緊張を帯び、秘密の濃度は高まり、堕ちていくー身も心も焼き尽くすねじれた快楽の行方。恋ではない、愛ではなおさらないもっと身勝手で、もっと純粋な、何か。夫婦だからこそ言えない秘密がある。『ダブル・ファンタジー』を超える衝撃の官能の世界。
姉の代わりに出演したテレビの心霊番組で、イタリア人エクソシストのジャンに突然プロポーズをされた刻子。 初対面なのにいったいなぜ? しかもエクソシストは結婚できないはずなのに! つきまとうジャンをどうにか撒いてその日は無事に帰宅したものの、 なんと次の日、校門で待ち伏せされていて……!? 美形でアニメオタクなエクソシストと、霊感女子高生の除霊ラブコメディ!
やりたいこと、夢、特になし。自慢は家事の腕前だけ。そんな佳人が背中を押されて始めたのは、見ず知らずの男女6人+管理人のタカ先生での共同生活。“シェアハウス小助川”という名前の医院を改築した大きな“家”でー。優しすぎて生きづらい、不器用な若者たちの成長を温かい視線で描ききった長編エンタメ。
“知恵伊豆”この賢者なくして「徳川の平和」はなかった。老臣たちの権謀を抑え、江戸城下の建設に腐心する松平信綱に最大の試練「島原の乱」が迫る。松本清張賞作家が為政者の真の勇気を問う意欲作。
東欧の元諜報部員、国連平和維持軍の被曝した兵士、ハンガリー動乱で対峙した二人の将軍、古びた建物を駆け抜ける不思議な風の歌…。ベルリンの壁崩壊以後、黄昏ゆくヨーロッパをさすらう記憶の物語。
奇跡、幻影、魔法、予知夢ーーあらゆる超自然が信じられていた、暗黒の時代の物語 『オトラント城』は最初のゴシック小説であり、今日のホラー小説の原点である書。格調は損なわずに斬新な新訳で刊行する。『崇高と美の起源』は、そのゴシック美学をはじめて理論化したエッセイ。 『オトラント城』 ホレス・ウォルポール 著/千葉康樹 訳 『崇高と美の起源』 エドマンド・バーク 著/大河内昌 訳
書きたい気持ちが童話を生み出す力になる! アイデアの出し方や登場人物の描き分け、ストーリーの進め方などを、名作童話や小説、コントなどを具体例にして解説し、童話を組み立てるためのコツを余すところなくふんだんに伝授する。さあ、童話を書こう! まえがき 第1章 人称と文体 旅立ち 一人称と三人称 敬体と常体 第2章 アイデアは無限に 身近なものから 客と噺家 歌詞もメロディーも 一枚の絵 ヘンリー・ダーガー マリー・ローランサン 第3章 登場人物の魅力 個性をはっきり 性格を活用 キャラクターの奥行き 相関関係 第4章 背景の設定 舞台背景と時代背景 生活背景 異世界と現実世界 第5章 構成と構造 起承転結 三つの“リ” 枠のなか 第6章 ストーリーの進め方 展開法と帰納法 話の続き プロップのカード 第7章 小道具の活用法 パイプにリンゴに塗り薬 銃と帽子とカーネーション 白テン・トランク・録音機 ウサギの着ぐるみ・ぬいぐるみ 第8章 タイトルのつけ方 タイトル グレード 連作 第9章 パロディーとオマージュ 『ふたりのロッテ』 「蜘蛛の糸」 『シンデレラ』 『椿姫』 第10章 テーマとラスト テーマは背骨 ラストの余韻 楽園に あとがき
女は素知らぬ振りをして、いつも抜かりなくすべてを整えているー。仕事を辞め、失意のうちに東京を引き払って田舎で暮らすことに決めた岳夫。ボロ家に手を入れ、一人静かな暮らしを始めた彼の前に現れた一匹の犬と女たち。思いがけなく展開する人生に立ち向かう、大人のための物語。
玄宗側近の楊国忠に賄賂が流れ込む。国難を憂えた朝衡、すなわち阿倍仲麻呂は、密かに楊貴妃暗殺計画を練るが、真備は冊封体制下に入ることと引替に、玄宗から新羅への不干渉と、天皇号承認を引き出す。揺れ動く国情、戦いの予感。一方、冊封使となった朝衡は実に三十七年ぶりに帰国することになり、鑑真の渡海に手を貸すが遭難、唐に舞い戻ると、安禄山が謀反を起こしー。近衛兵となった真幸の運命は?歴史活劇の白眉。1999年読売文学賞受賞作。
藤原広嗣の庶子、真幸は遣唐大使護衛士として大陸へ渡った。長安には玄宗皇帝の信頼を一身に集める日本人高官、朝衡すなわち阿倍仲麻呂がいた。在位四十年、玄宗は楊貴妃への愛に溺れていた。帝国の財政、司法、警察の絶対権を司る男、楊国忠。兵馬の大権を握り、辺境に陣取る安禄山。二人が衝突すれば、国難は必至。智謀に優れた吉備真備が加わり、各人の思惑が錯綜する中、真幸は思わぬ役割を命ぜられー。壮大な大河小説。
1995年1月17日、兵庫県一帯を襲った阪神淡路大震災。死者6347名を出したこの未曾有の大地震には、数々の不審な点があった……『下山事件』『TENGU』の著者が大震災の謎に挑む長編ミステリー。
八神俊彦は自らの生き方を改めるため、骨髄ドナーとなり白血病患者の命を救おうとしていた。だが、都内で連続猟奇殺人が発生。事件に巻き込まれた八神は患者を救うため、命がけの逃走を開始するーー。
吉原近くで斬られた男は、火盗改同心・風間の密偵だった。密偵は、死者を出さない手口の「梟党」と呼ばれる盗賊を探っていたが、太刀筋は武士のものと思われた。与力・雲井竜之介が謎に挑む。シリーズ第2弾。