2013年5月発売
寺の境内に身につけているものを投げ込めば、駆け込みは成立するー離婚を望み、寺に駆け込む女たち。夫婦のもめ事を解きほぐすと現れるのは、経済事情、まさかの思惑、そして人情の切なさ、温かさ。鎌倉の四季を背景にふっくらと描かれる、笑いと涙の傑作時代連作集。著者自身による特別講義を巻末収録。
遺産目当てに三十歳も年上の会社重役と結婚した沢田伊佐子。女盛りの肉体を武器に、奔放に生きる彼女のまわりにはまた、欲望に身を焼かれて蟻のようにうごめきまわる人々が群がってくる。一方、そんな人々を冷やかに、密かに眺める者もいるー欲まみれの男女が入り乱れ、犯罪が犯罪を呼ぶ異色のサスペンス。
同窓会に参加するため帰郷したまゆみは、別れた彼と再会する。プロポーズを退けて東京で働くことを選んだ彼女と故郷で教師をしながら野菜畑を育てる彼。終わったはずの恋が10年の時を経てふたたび芽吹くー。恋愛小説の名手が描きだす、野菜のようにみずみずしく、栄養と幸せ満点の、3組の恋の物語。
虫にしか興味のない大学教授に亡父の面影を重ねて身悶える女子大生「かげろう稲妻水の月」、ロハスなヌーディズムに目覚めた同僚がハタ迷惑にせまる「素っ裸の王様」、花粉症治療のためにマス寿司をどか食いする彼「虫のいどころ」-ちょっぴりフェティッシュな趣味や性癖に振りまわされる大人の恋の短編集。
学校と音楽をモチーフに少年少女の揺れ動く心を瑞々しく描いたSchool and Musicシリーズ第一弾は、校舎屋上の音楽室に集う鼓笛隊おちこぼれ組を描いた表題作をはじめ、少女が語り手の四編を収録。嫉妬や憧れ、恋以前の淡い感情、思春期のままならぬ想いが柔らかな旋律と重なり、あたたかく広がってゆく。
20世紀初頭のスコットランド。英国王族でありながら、公爵令嬢ジョージーの暮らしは貴族とは名ばかりの貧乏生活。凍えそうな古城でこのまま一生を終えるのかしら?ところがある日、最悪の縁談を耳にしてしまったジョージーは、思わずロンドンへ逃げ出すことに。そこで生活のためにはじめた仕事は、なんとメイド!王族にあるまじき行動が王妃さまの耳に入らないことを祈りつつ、慣れない掃除に悪戦苦闘する毎日。でも、メイドから見た貴族の生活は意外に面白いかも!?そう思いはじめた矢先、仕事帰りの彼女を待ち受けていたのは、浴槽に浮かぶ死体!初めての仕事に殺人事件まで…ジョージーのロンドン生活は一筋縄ではいかず!?-。
人は誰も、自分や愛するひとの死を怖れ、死んだあとには何ものこらないのだろうか、という思いを抱えている。不思議な「視る」力をもった少女イゾベルを主人公に、その怖れを優しくぬぐい去るかのような幻想的な表題作は、早世した愛息への鎮魂の想いから生まれた。『秘密の花園』のコマドリ誕生に秘められたストーリーを南イングランドの四季の移り変わりのなかで綴ったエッセー、かのアンデルセンを思わせる童話、さらに、没後に少部数の特装本で出版され、アメリカ国内でも、今日読むことがほとんどかなわない遺作「庭にて」の三篇は、いずれも初邦訳。バーネットからの美しい贈りもの。
タイムトラベル能力の調整のために行う“時間消化”中に、若き日の祖父に出会ったグウェンドリン。絶好のチャンスとばかりギデオンや“監視団”のメンバーには内緒で、ルーシーとポールがクロノグラフを盗んで逃亡した謎を解明しようと画策する。クロノグラフが十二人のタイムトラベラーの血を読みこんだとき、いったい何が起きるのか?そしてグウェンドリンに固執するサンジェルマン伯爵の思惑は?ドイツで百万部突破のタイムトラベル・ファンタジー第二弾。
僕は機械しか愛せない。人間は非論理的だ。恋人も友人もいないけれど、でも人間と関係を結ぶなんて非効率で面倒くさいじゃないか。そんなある日、僕は職場の事故で片脚を失う。そのときひらめいたのだーエンジニアとしての才能を注ぎ込んで、生身より断然高性能の脚を開発しようと。名づけて「美脚」。その出来は素晴らしく、僕は残る片脚も機械化した。これが僕の未来を開いてくれたー僕に共感を抱いてくれた初めての女の子、ローラとの出会い。恋の成就。会社が与えてくれた大規模な開発チーム。思いのままに研究を進められる自由。だが僕は知らなかった、すべての背後に社の軍需部門の思惑があったことを。やがて暴走をはじめる開発チーム。姿をあらわす「機械化兵士」開発計画。それは僕の彼女、ローラまでも巻き込んでゆく。大地を揺るがして疾走し、轟音とともに跳躍する機械の脚。それを武器に、理系オタクは恋人のために死地に赴く。ダーレン・アロノフスキー監督で映画化決定、ガジェットとイノヴェーションの世紀を切り裂くギーク・サスペンス。
「私の音色は薄緑なの」ヴァイオリンのような甘美な声で娘は言った…。“勇気と想像力ある秘書求む。当方は隠退した聖職者。テノールの声とヘブライ語の多少の知識が必須”。謎の求人に応募した主人公が訪ねたのは、人里離れた屋敷だった。そしてそこには美しい娘がいて…。
富士山の絶景を楽しめる「フジサン特急」に乗車したカップル。二人は終点の河口湖駅で降りるが、帰りの列車に乗ってきたのは女一人だけだった。消えた男は、そのまま失踪を遂げてしまう。彼は「日本ミステリーの会」というサークルの活動で、青木ヶ原樹海を調べに行ったらしいのだが…。さらに、サークルのメンバーの一人が殺害された!十津川警部の名推理。
長女・征子は百貨店の幹部社員。独りで生きると決めてマンションを購入した。次女・月子は専業主婦。幼い娘を放り出しブログの世界に逃避している。三女・凪子は姉たちにも告げていない体の秘密を抱えたまま結婚した。母・佐喜子は夫と姑への我慢が限界に達し、ついに家出をする。三人姉妹と母親、それぞれの傷を抱えて生きる四人の女性の哀しみを包み込む物語。
貴公子然とした容姿端麗の名探偵、神津恭介。世間にも名高き彼の下に、事件は絶えず舞い込む。荒廃した劇場で偶然見つけた女性の死体、自分自身の遺骸の探索を請う女…。謎めいた犯罪の蔭に女たちの姿を垣間見た時、思慮深き神津の瞳は静かに憂愁をたたえる。数ある神津恭介作品の中から、「女性」にまつわる短編六作を収録。傑作セレクション第二弾。
人気推理作家の夫・浪江譲二から、愛人が妊娠したことを喜びとともに知らされた妻・多鶴子。憎しみは殺意へと変わり、夫の殺害を決意する。完全犯罪を企てたが…(「小さな孔」)。傑作ミステリー6編と、文庫未収録の「ライバル」「夜の演出」の2編を収録。
新世界生命保険・大島恭平が支社長に赴任して半年、中央支店の業績は急回復。三十六歳で単身赴任、やり手の上司に、セールスレディたちから熱視線が集まる。恭平は、営業ノルマに追われる彼女たちを心身ともにサポート。連日連夜のベッドインで、売上げはますます絶好調!溢れる気力と体力で、仕事に邁進し、部下たちとの情事に奮起する。爽快!「野望シリーズ」。
初対面の相手でも、たちまちするりとその懐に入ってしまう。小谷夏子は男をその気にさせる天才だ。彼女との未来を夢見た男は、いつの間にか自らお金を出してしまうのだ。そんな生来の詐欺師を遠縁に持つ弁護士・石田徹子は、夏子がトラブルを起こすたび、解決に引っぱり出されるのだが…。対照的な二人の女性の人生を鮮やかに描き出し、豊かな感動をよぶ傑作長編。
無謀にも将軍綱吉に衣装自慢を仕掛けた豪商の石川屋六兵衛とその妻およし。危ないと知りつつ幕府批判の風刺画を引き受けた人気浮世絵師の歌川国芳。曰くつきの家を買った平賀源内が起こした殺傷事件の顛末。時代の風潮に反発し、心の赴くままに意地を貫き、破滅をも恐れない風狂な人々を描いた七作の短篇集。女流文学賞受賞作品。
単身赴任の男が宴会の翌朝目覚めると、そこに妻がいた。ポケットにはあるものが…「始末書」(勝目梓)。部屋住みの賢吾が兄の頼みで美しい新妻と一夜を過ごすことになった夜、予期せぬ事が次々と…「あによめ」(睦月影郎)。小説現代に好評掲載された名手10人の手になる「10分で読める」短編官能小説集。