2013年発売
夏休みも中盤に突入し、風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。な、なんとサメが飼育員に喰いついている!駆けつけた神奈川県警の仙堂と袴田が関係者に事情聴取していくと、すべての容疑者に強固なアリバイが…。仙堂と袴田は、仕方なく柚乃へと連絡を取った。あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。平成のエラリー・クイーンが贈る、長編本格推理。
1845年、ニューヨーク。火事で顔にやけどを負ったティムは、創設まもないNY市警察の警官になった。ある夜、彼は血まみれの少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走った彼女の言葉どおり、胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。だがそれは、街を震撼させた大事件の始まりにすぎなかった…。不可解な謎と激動の時代を生き抜く人々を鮮烈に活写した傑作。
血に濡れたネグリジェ姿で売春宿から逃げてきた10歳の少女、バード。馬車に乗った黒頭巾の男が子どもの遺体を街外れに埋めたらしいという彼女の証言によって、ティムは19もの子どもの遺体を発見してしまう。彼らの多くは、胴体を十字に切り裂かれていた…。宗派対立、アイルランド系移民排斥などを背景に、苦難に負けず「前に進みつづける」人間たちの勇姿を描いた雄篇。
大島不動産販売前社長の遺児で、難病に苦しむ大島雅弘の世話係を務めていた若宮恵美子は、派閥争いのあおりを受け、新設部署への異動を命じられた。雅弘をトップに、3名だけでクレーム対応をする部署らしい。現社長の高丸は、反高丸派の旗頭である雅弘に無理難題を押しつけ、責任を取らせて追い出したいのだー。次から次へと問題物件を押しつけられ途方に暮れる恵美子の前に、「探偵」を名乗る奇妙な男が現れて…。前代未聞の名探偵(?)犬頭光太郎登場!!居座り、自殺、ゴミ屋敷、ポルターガイストに失踪まで。お部屋に関する問題を、人間離れした能力で華麗に無理矢理解決!破天荒極まりないミステリー!
幼いころ毎晩、祖父から残酷で暴力的な話を聞かされて育った男は、祖父の望みどおりの荒くれ者となった。仕事を求めてメキシコの港町に流れ着き、やがて、その町で満月の夜のたびに催されるイヌと人との1対1の闘い、ドッグ・ファイティングにファイターとして参加するようになるー恋愛の極点を目指す血と暴力の物語。大型新人デビュー作!
アカ狩りがはびこりレイシズムとセクシズムの壮絶な暴力が横行する街。核戦争の恐怖に覆われた末世澆季、ハルマゲドンを預言する黒人カルト教祖の荘重な声が響き渡る…異常なまでの外見偏重とその裏返しの内面の歪み、肥大化した自我のケダモノと化した青年の破滅と現実への帰還を描く「カフカ的パルプ・フィクション」。ディック二十五歳の処女作。あまりの過激さゆえ長く筐底深く沈めることを余儀なくされ、死後四半世紀を経てようやく日の目をみた問題作。待望の日本語版。
謎の人物モンテ・クリスト伯となったかつての青年ダンテスが、いまはモルセール夫人となっている昔の恋人メルセデスの子息アルベールとローマで親交をむすび、パリでついにメルセデスと対面する。新しい読者を絶えず獲得してきた不朽の名著、第三冊。
目覚めるとそこは二十二世紀のロンドンー緑かがやき、水は澄み、「仕事が喜びで、喜びが仕事になっているくらし」。社会主義者・美術工芸家モリス(一八三四ー九六)の実践と批判、理想と希望が紡ぐ物語。ユートピアの風を伝える清新な訳文に充実した訳注を付す。
『蜻蛉日記』は、大政治家の藤原兼家の妻として、波瀾に富んだ生涯を送った道綱母が、その半生を書き綴った王朝女流文学の代表作。結婚生活の苦しみ、夫兼家とその愛人たちへの愛憎の情念が、流麗にして写実的な筆致で描かれる。作品中の和歌は、一段の精彩を放っている。韻文と散文が互いに交響することで、物語に独特の陰翳を与えている。室生犀星の味わい深い現代語訳により、日本古典文学の豊穣な世界に、現代の読者を誘う。
11歳の少年の、故国からイギリスへの3週間の船旅。それは彼らの人生を、大きく変えるものだった。仲間たちや個性豊かな同船客との交わり、従姉への淡い恋心、そして波瀾に満ちた航海の終わりを不穏に彩る謎の事件。映画『イングリッシュ・ペイシェント』原作作家が描き出す、せつなくも美しい冒険譚。
いつのまにかなくなったもの、というのが、人生にはたくさんある。たとえば、赤ん坊のときに好きだったぬいぐるみ。水玉模様のかさ。初めてできた友だち。恋とは気づけなかった幼くてまばゆい初恋…。松尾たいこの彩り豊かなイラストから角田光代が紡いだ5編の小説には、そんな愛しくてなつかしい記憶がぎっしり。人生の出会いと別れをこまやかに綴った、せつなくもあたたかい作品集。
作家の“私”はなかなか思うように執筆がはかどらない。小説の取材で、宇宙線研究所や盆栽フェスティバルなど、様々な地を訪れる“私”だったが、いつも知らず知らずのうちに不思議な世界へと迷い込んでしまう。苔料理を出す料亭、海に繋がる大浴場、ひとが消えてゆくアートの祭典。これは果たして現実なのか。幻と現の狭間で、作家は日々の出来事を綴り続けるー。日記形式で紡がれる長編小説。
大正三年、東京。画家を志して家を飛び出した槇島功次郎は、雪の無縁坂で、容姿端麗な青年画家・穂村江雪華と出会う。風変わりだが聡明、ずば抜けた画才を持つ雪華は、この世に未練を残して死んだ者の魂を絵で成仏させる、驚くべき能力の持ち主だった。果たせぬ恋、罪深き業…死者たちの断ち切れぬ思いが、二人の周囲に不可思議な現象を巻き起こす。幻想と怪奇に満ちた、大正怪異事件帖。
母親から育児放棄されかけている幼い兄と妹は、花火大会の夜にデパートでわざと迷子になる。公園で出会った女に連れて行かれたマンションで待っていたのは、甘いケーキと、そして…(迷子のきまり ヘンゼルとグレーテル)。「白雪姫」「シンデレラ」「みにくいアヒルの子」など誰もが知る西洋童話をモチーフに泉鏡花文学賞受賞作家が紡いだ、美しくも恐ろしい七編を収録した短編集。
店内を大改装することになった個性派ホストクラブ「club indigo」。仮店舗での営業中、ホストたちはプライベートで様々な事件に巻き込まれてしまう。ホストの一人・犬マンは、公園で知り合ったホームレス画家の青年と交流を深めていた。しかし、青年が殺人事件の犯人と疑われて!?(『シン・アイス』)など、大人気ミステリーシリーズ第3弾は、ホストたちの恋や店外での素顔を描いた連作集!
道頓堀に巨大なタコが現れた。対処に大わらわの大坂西町奉行所の面々をよそに、大食漢の名物奉行・大邉久右衛門が用人・佐々木喜内に命じたのはー(『蛸芝居』)。連日連夜、豆腐ばかりの献立に、久右衛門は爆発寸前。どうやら財政難のせいばかりではないようでー(『地獄で豆腐』)。書き下ろし1編を含む垂涎必至の4編を収録。大坂を舞台に描く、謎あり恋ありグルメありの食いだおれ時代小説第2弾。