2013年発売
大学の美学科に在籍する「私」は卒業論文と進路に悩む日々。そんなとき、唐草教授のゼミでひとりの男子学生と出会う。なぜか黒いスーツを着ている彼は、本を読み耽るばかりでいつも無愛想。しかし、ある事件をきっかけに彼から美学とポオに関する“卒論指導”を受けて以降、その猫のような論理の歩みと鋭い観察眼に気づきはじめ…『黒猫の遊歩あるいは美学講義』の三年前、黒猫と付き人の出会いを描くシリーズ学生篇。
女子高生の森田ゆかりは、16年前ハネムーン先で失踪した父親の消息を求めて、ソロモン諸島・アクシオ島を訪れた。そこで出会った「ソロモン宇宙協会」の所長、那須田と名乗る男は、父親捜しを手伝うかわりに、ゆかりを協会にスカウトする。そこには、軽量化を余儀なくされたロケット打ち上げのため、小柄で体重の軽いゆかりを飛行士に採用しようという協会の思惑があったのだが…。野尻宇宙開発SFの原点、ついに復刊。
その春、戦争は自分らを殺そうとした。イラク、アルータファル。21歳の三年兵バートルは、18歳の初年兵マーフィーを無事に故郷に連れ帰ると約束していた。しかし、凄惨を極める戦闘を次々と経験していくうちに、二人は予期せぬ運命をたどることになる。イラクで戦うとはどういうことだったのか。元兵士が戦争に直面した若者たちの感情を、痛切に、瑞々しく描いたデビュー作。PEN/ヘミングウェイ賞、ガーディアン新人賞受賞。
都のあちらこちらに楽しげに現れては、伽羅の匂いを残して消える不思議の女がいた。露子姫の前にも姿をみせたという話を晴明が耳にした翌日、蜘蛛の巣に妙なものがひっかかったと僧が訪ねてきた。早速、博雅と寺に赴き、蝶のようなそれを放した晴明が知ることとなった女の正体とは?「はるかなるもろこしまでも」他、全九編。
地位も才能もないが、やる気もなく志も低い准教授・桑潟幸一、通称クワコーを、毎月毎月、襲う怪事件。何とかしないとヤバイじゃんクワコー、と首をつっこむ文芸部の変人女子たちにいじられながら、首吊り幽霊の謎ほか、春のキャンパスを騒がす3つの事件にクワコーが挑む。芥川賞作家が贈る脱力+自虐のユーモア・ミステリ。
生まれなかった子が、新たな命を身ごもった母に語りかける。あたしは、海のそばの「くけど」にいるよー。日本の土俗的な物語に宿る残酷と悲しみが、現代に甦る。闇、前世、道理、因果。近づいてくる身の粟立つような恐怖と、包み込む慈愛の光。時空を超え女たちの命を描ききる傑作短編集。泉鏡花文学賞受賞。
人は己の血にどこまで縛られるのか?高名な日本画家の家系に生まれながら、ペットの肖像画家に身をやつす時島一雅は、かつてない犬種の開発中というブリーダーの男に出資を申し出る。血の呪縛に悩みながら、血の操作に手を貸す矛盾。純白の支配する邪悪な世界への憧憬。制御不能の感情が、一雅を窮地へと追い込んでゆく。
冬の白鳥だけが名物の東北の町で、筋金入りのバンカラ高に通う「僕」。先輩からイビられる非モテの日々-地元のローカル番組で「おもしろ素人さん」を募集しているのを見つけた僕は、親友たちの名前を勝手に書いて応募するのだが…。「あまちゃん」の脚本家が放つ疾走感溢れる“地元系”青春エンタメ。
路傍に立てられた死者を弔う十字架ー刻まれた死の日付は明日。そして問題の日、十字架に名の刻まれた女子高生が命を狙われ、九死に一生を得た。事件は連続殺人未遂に発展。被害者はいずれもネットいじめに加担しており、いじめを受けた少年は失踪していた。尋問の天才キャサリン・ダンスは少年の行方を追うが…。大好評シリーズ第二作。
ネットいじめに端を発する事件は殺人にエスカレートした。犯人は失踪した少年なのか?ダンスは炎上の発端となったブログで報じられた交通事故の真相を追う。ネット上の悪意が織りなす迷宮。その奥底にひそむのは悪辣巧緻な完全犯罪計画。幾重にも張りめぐらされた欺瞞と嘘を見破った末、ダンスは意外きわまる真犯人にたどりつく!
女子中学校の頃から仲良し四人組の友情は、アラサーの現在も進行中。ピアノ講師の咲子、編集者の薫子、美容部員の満里子、料理上手な由香子は、それぞれ容姿も性格も違うけれど、恋に仕事に悩みは尽きず…稲荷寿司、甘食、ハイボール、ラー油、おせちなど美味しいものを手がかりに、無事に難題解決なるか!?
沖野国明は昆虫学のフィールドワークからの帰国後、思い出の場所、市立図書館が閉鎖されたことを知る。見納めのため友人と深夜の図書館に忍び込み、高校を卒業したての女子三人組に出会う。彼ら不法侵入者達にとって予期せぬ苛酷な一夜が幕を開けたー。恐怖の閉鎖空間で石持ワールドが炸裂する強力長編。
ロシア人の血を引く白皙の子爵・麻倉清彬は、殺人容疑をかけられた親友・多岐川嘉人に呼び出され、上野のカフェーへ出向く。見知らぬ男の死体を前にして、何ら疚しさを覚えぬ二人だったが、悲劇はすでに幕を開けていた…。不穏な昭和の華族社会を舞台に、すべてを有するが故に孤立せざるを得ない青年の苦悩を描いた渾身作。
家康を父に持つ於義丸は双子で生まれたため、忌避される。兄信康のとりなしで家康に息子として数年後に認知させた。しかし、秀吉の養子として徳川家を出され、豊臣秀康と名乗らされた。それも束の間関東の結城家に養子にだされ、父・家康の監視役とされる。家康が恐れた息子の短くも波乱の生涯を描く歴史巨編。
平家滅亡の直前、女院らとともに西海に逃げた松虫と鈴虫の姉妹。松虫が屋島の戦いで、源氏方の那須与一に扇を射抜かれたことから姉妹は疎まれ、浜で暮らすようになるが、さらに公吏としてやってきた那須兄弟の宴席に侍ることになる(「平家蟹異聞」)。落日の平家をめぐる女人たちを華麗な文体で描いた短編集。
貧しい親に捨てられたり放置されたりしている子供たちをさらうことで自らの「家族」を築き、威厳ある父親となったビグア大佐。だが、とある少女を新たに迎えて以来、彼の「親心」は、それとは別の感情とせめぎ合うようになり…。心優しい誘拐犯の悲哀がにじむ物語。待望の新訳!
小伝馬町の牢から火が出て、罪人たちが切放になった。その後、戻ってこなかった囚人に勘定所道中方の役人がいた。勘定奉行の父の命を受けた夏目影二郎は、行方を断った役人の所在をつき止め、始末する旅に出るが、行く先に巨悪の影が…。鏡新明智流の豪剣で悪に立ち向かう。佐伯泰英の原点ともいえるシリーズ決定版の第三弾!巻末に佐伯泰英外伝を特別収録。
「カレシがいるのに他にも気になる男の人ができてしまいました」「子供が何を考えているのかさっぱり判りません」-モーさんは小さなショットバーのバーテンダーで、客からの相談に乗ることも多い。しかし悩みを解決するためのアドバイスが次々とおかしな波紋を巻き起こし、ついにはまさかまさかの秘密が露わになって…。ちょっぴり苦い読後感が癖になる連作ユーモアミステリー。
幼くして母を亡くし、継母と文筆家の父に育てられた才気煥発な娘あそぎ。そのまっすぐな気性は時に愛され、時に人を傷つける。夫婦の軋み、婚家の没落、夫の病ー著者・幸田文自身を彷彿とさせる女性の波乱の半生を、彼女を取り巻く人々とのつながりの中でこまやかに描きあげた長編小説。
19世紀ロンドン。貴族令嬢テオは、後見人アシュブルック公爵の跡取りジェームズと兄妹のように仲良く過ごしてきた。ある音楽会の夜、とつぜんテオはジェームズから「きみはぼくのものだ」と告白され、その場で荒々しく唇まで奪われてしまう。互いへの想いに気がついた二人は、幸せの絶頂で結婚。ところが、新婚二日目にとんでもない事実が発覚する。この結婚は、ジェームズの父がテオの信託財産を使い込み、それを隠蔽するために仕組まれたものだったということが!テオの信頼を一気に失ったジェームズは、屋敷から永久追放された。-月日は流れ、かつて“みにくい公爵夫人”と揶揄されたこともあったテオは、いまやファッション界をリードする女性実業家として成功を収めていた。そんな彼女の前に、7年も消息を絶っていたジェームズが現われて…!?『みにくいあひるの子』をモチーフに描く、愛がおこした奇跡の物語。おとぎ話シリーズ第3弾!