2014年6月発売
残業を終え帰路を急ぐ赤坂俊一が真っ暗な坂道をのぼる途中、うずくまって泣いている女を見かけた。声をかけると、女はゆっくりと向き直り、両手に埋めていた顔をしずかに上げたーその顔は(「むじな」)。ありふれた現代の一角を舞台に、期せずして日常を逸脱し怪異に呑み込まれた老若男女の恐怖を描いた傑作6編。
人間の顔を瞬時に記憶する異能刑事・狩野真盾。その特殊能力を見出した公安捜査官・吉田は、東京・六本木で発生した奇怪な殺人事件に狩野を起用する。謎を解く鍵はソウルにある。二人は韓国に飛ぶが、そこには驚愕の真相が待ち受けていた!江戸川乱歩賞作家が著す、国際サスペンスの傑作!
クリミア戦争で英仏と戦う祖国を離れて折衡に臨むプチャーチンの艦船が地震、津波で被害を受けて沈没し、乗組員五百人が上陸する事態に。厳しい折衝を終え、幕府の配慮で完成した「戸田号」で帰国の途につくプチャーチン。日露関係のみならず、日本外交史において最大の功労者ともいうべき川路聖謨の生涯。
ドディーは妹の結婚式の花嫁付添人を頼まれ、パニックになった。妹は有名な美人女優ーかたやドディーはぽっちゃり体型。これまでも妹と比べられてみじめな思いをしてきたのに、晴れの席でさらし者になるなんて耐えられない…。すぐさま高級スポーツクラブで働く親友に泣きついたところ、紹介されたのは驚くほどハンサムなブラッド。魅力的な彼に、体の曲線をなでるように見つめられ、ドディーはどぎまぎしてしまう。彼につきっきりで指導されるなんて、どうしたらいいの!?
五感を越える「感覚」で世界を捉え、哀感とユーモア、エロティシズムをも湛える独特の表現が今なお新しい尾崎翠(一八九六ー一九七一)。奇跡のような作品群から代表作「第七官界彷徨」と緩やかに連なる四篇、没後発見の映画脚本草稿「琉璃玉の耳輪」を収録。
イタリアの寒村に育った私生児のぼくは、人生の紆余曲折を経て、故郷の丘へ帰ってきたー。戦争の惨禍、ファシズムとレジスタンス、死んでいった人々、生き残った貧しい者たち。そこに繰り広げられる惨劇と痛ましくも美しい現実を描く、パヴェーゼの最高傑作。
冬に向かうパリ、「私」をめぐる景色は移ろうー「花咲く乙女」とベッドで寄り添い、人妻との逢い引きの夢破れ、ゲルマント夫人の晩餐には招待される。上流社交界の実態、シャルリュス男爵の謎、予告されるスワンの死…。人間関係の機微を鋭く描く第七巻。
庭にある鳥の巣箱に棲みついた邪悪な目。絶対に語ってはいけない話。聞いてはいけない話。書いてもいけない話。こちらが生きていることに気付かない、死者。霊を届ける女、受け取る男。「真っ黄色のワンピースを着た女」の都市伝説…。彼岸と此岸の境を失ったとき、人は人ならぬものとなってこの世を彷徨う。「あちら側の世界」に寄り添い生きる著者が聞き集めた数多の怪異から厳選。大好評の実話怪談シリーズ、第6弾!
ダム建設工事の作業中に、縄文人男性と弥生人女性の人骨が発見された。二体はしっかりと手を重ね、互いに顔を向け合った姿であった。三千年近く前、この男女にいったいどんなドラマがあったのか?新聞記者の佐藤香椰は次第にこの謎にのめりこんでいく。縄文から弥生へ、時代のうねりに翻弄された悠久の愛の物語。
紀元前七世紀、東日本ーピナイ(谷の村)に住むウルクは十五歳。野に獣を追い、木の実を集め、天の神に感謝を捧げる日々を送っている。近頃ピナイは、海渡りたちがもたらしたという神の実“コーミー”の噂でもちきりだ。だがそれは「災いを招く」と囁かれてもいた。そんなある日、ウルクは足を踏み入れた禁忌の南の森でカヒィという名の不思議な少女と出会う。
僕は渋谷の街角で、殺人鬼を追うきみと出会った。ある時は「武者修行中」と笑い、またある時は傷だらけで電話してくる。世間が震える連続事件の現場に必ず現れる美少女。君は一体、何者なんだ?張り巡らされた謎、緊迫のクライマックス。ストーリーテリングの手腕が炸裂する、青春ミステリーの新機軸!
岩手と宮城の狭間に秘かに存在する「月ノ森」。ここの地で湧水「命迦泉」の番を始めた二人は、様々なものと巡り逢う。人と、人にあらざる者と…。中国をはじめアジア各地の神仙、怪異譚や幽霊話を手掛けてきた著者が、初めて出身地・東北を舞台に紡いだ再生物語。
重田ミドリ、小学3年生。住み慣れた街を離れて父・広の新しい恋人ー平野源三ーの家に転がりこんだ。そんな事実を受け入れられないミドリの母・貴美子。だから離婚話もなかなか進まない。でも進まない理由はそれだけではなくー。よのなかにあふれる“ふつう”からほんの少し外れたところにいるミドリたち。口に出してしまったら、何かが変わってしまう、何かが壊れてしまう、そんなおそれを抱きながら生きる彼らに訪れた、幸せの結末とは。
食堂の火事で死亡した「私」は、墓地がないため火葬もされずにこの世の周縁をさまよっている。美しく聡明な最愛の元妻、都市の隙間であえぐ貧しいカップル、病院から姿を消した育ての母と27体の嬰児、そして、鉄路で拾った「私」に細やかな愛情を注いでくれた鉄道員の義父…。現代中国を生きる庶民の悲哀と懐旧と純真を、曇りなき瞳で写しとった最新長篇。
八十上学園の高校生・佐々木いちろは、放課後にこっくりさんをしていたが、ある質問をしたことで校舎から出られなくなる。閉じ込められたのは、いちろ、幼馴染のとおこ、妖しい先輩・清丸のほか4人。“階段のブリッジ女”“校長室のゾンビ犬”…黄昏刻の学校に巣食う恐怖の七不思議といちろは戦うことになるが!?関連動画再生数累計1,000万超!!人気フリーホラーゲームノベル化!
「第一回晴雲ラブンガク大賞」を受賞して、華々しく文壇にデビューした恋愛小説家・夢宮宇多。その勢いを買われてか、恋愛小説のようにロマンティックな体験談を持つ女性を実際に訪ねて話を聞く、というネットテレビ番組のホスト役の仕事が入ってくる。担当編集・井上月子の説得で仕事を受けることとなったのだが、そこで出会った女性は、まさに現代のシンデレラのようなエピソードを持つ女性であった。しかし、夢宮宇多は話を聞くうちにエピソードの隠された真実に気づいていく…。その一方で、夢宮宇多の受賞作は亡くなった彼の幼馴染みが書いたのではないか、という疑惑が浮上し、物語は意外な展開を見せはじめるがー。アガサ・クリスティー賞受賞の鬼才が放つ、連作恋愛ミステリ!!
「おまえも一緒においで。お文のところへ連れていってやるよ」月の光の下、影踏みをして遊ぶ子供たちのなかにぽつんと現れた、ひとつの影。その正体と、悲しい因縁とは。「ぼんくら」シリーズの政五郎親分とおでこが活躍する表題作をはじめ、「三島屋」シリーズの青野利一郎と悪童3人組など人気キャラクターが勢揃い!おぞましい話から切ない話、ちょっぴり可笑しい話まで、全6編のあやしの世界。
明日から夏休みという暑いある日のこと。東京下町にある中学校の1年2組の男子生徒が全員、姿を消した。彼らは河川敷にある工場跡に立てこもり、そこを解放区として、体面ばかりを気にする教師や親、大人たちへの“叛乱”を起こした!女子生徒たちとの奇想天外な大作戦に、本物の誘拐事件がからまって、大人たちは大混乱に陥るがー。何世代にもわたって読み継がれてきた、不朽のエンターテインメントシリーズ最高傑作。