2014年8月発売
「奇妙な仕事」「飼育」「セヴンティーン」「「雨の木」を聴く女たち」など、デビュー作から中期の連作を経て後期まで、全二三篇を収録。作家自選のベスト版短篇集であると同時に、全収録作品に加筆修訂がほどこされた最終定本。ノーベル賞作家・大江健三郎のエッセンス。
人はなぜ変わってしまうのか?罪と罰とは?人は堕落し、何かがきっかけとなって立ち直る。老作家は、痛みと苦しみを経て愛によってよみがえる人間の内面の復活をひたむきに問う。問いは問いを生み、容易に答えは出ない…。19世紀の終焉を目前にし、リアリズムを徹底した果てに、トルストイはついにそれを突き抜けた。
東京の郊外で暮らす、しがないサラリーマン久保田輝之は、ある晩、人を殺めてしまう。自首するべきか?自殺するべきか?いや、しかし、でも…。結局はどちらも選べないまま、逃亡生活を送ることに。はたして、輝之は彷徨の果てに何を見るのか?そして、最後に下した決断とはー。日本全国津々浦々を彷徨い続けること、二年四か月。魂のクライム・ロードノヴェル。
超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。なぜ夫妻は死んだのか?それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか?切なさに満ちた、著者初の純愛ミステリー。
西暦2599年ー。火星有人調査『バグズ2号』計画、中断。生き残った乗務員2名が、地球へと帰還した。そのころ、地球の中南米密林地帯では、政府軍と闇バグズ手術を施されたゲリラ部隊が熾烈な戦闘を繰り広げていた!『アネックス1号』計画へと至るミッシングリンク、小説で解禁。
幼い頃に母を亡くし、大海女と呼ばれた祖母のもとで志摩の漁村に育った野井山孝子は、高校卒業後は海女になるはずだった。しかし、神主の修行を積む白川武雄との出会いから、ふたりの透明な魂は響きあい、孝子は定められた生き方と、女性としての目覚めの狭間で揺れうごく。体ひとつで海の底から生きる糧を獲る少女と、伊勢神宮の伝統ある神社の跡取りの青年ー運命は、ふたりを思いもかけぬ方向へと導いていく。
メイドのルチアは、アンジェロ・コレッティにとって唯一の友人だった。シチリア名家の婚外子として蔑まれ、孤独なアンジェロに、ルチアは幼い頃から寄り添い、支え、慰めた。ある夜、たった一度だけ、二人の情熱が交錯する。だが翌朝、彼は忽然と姿を消してしまい、ルチアの愛は報われぬまま、授かった小さな命までも流産で失うという悲劇に終わったのだった。7年後、アンジェロがシチリアへ戻ってきたとき、ルチアはつい、彼が迎えに来てくれたのかもしれない…と淡い期待を抱いた。だが、何も知らない彼は、メイド姿のルチアに平然と言った。「そんな仕事の代わりに、破格の給料でぼくの世話をしないか?」
音もなく、滑るようにセルゲイ・マリノフの豪華なリムジンは、白夜のサンクトペテルブルクを疾走している。クレメンタインは夢見心地だった。美しい街、たくましい男性。ついさっきまでは、絶望のどん底にいたのに。仕事で訪れた外国の地で暴漢に襲われ、ハンドバッグを奪われた。駆けつけて彼女を救ってくれたのが、セルゲイだった。17歳の頃からずっと働きづめで、愛も知らないクレメンタインは、この束の間のシンデレラ・ストーリーに浸ろうと思った。セルゲイのプライベードジェットにさらわれ、ニューヨークで愛人にされてしまうとは、まさか知る由もなく…。
婚約者に裏切られ、会社も辞め失意の日々を送るビビアンのもとに、ジャック・ストーンが新たな仕事を持ち込んできた。気まぐれに買った自身の広大な屋敷のインテリアデザインをビビアンに任せたいという。彼とは旧知の仲で、その性格はよくわかっている。絶対に相手にノーと言わせないのだ。ビビアンは半ば仕事を引き受ける覚悟でジャックと向き合い、改めて彼がいかに魅力的か気づかされた。そういえば、昔の同僚は彼を“歩く男性ホルモン”と陰で呼んでいたっけ。失恋の傷を癒やしてくれるのは、ジャックのようなとびきりセクシーな男性との情事かもしれない!
エヴァは、しっかり者の姉とおとなしい妹の間で、いつしか、“勝ち気な次女”の役割を演じることに慣れていた。本当は、女らしいと言われてみたいし、恋だってしたい。でも町の男たちはいつだって、美しい姉や妹に惹かれるのだ。ところが、姉の結婚式で出会った新郎の親友、ローマン・キスヴァーダだけは、彼女に興味を引かれた様子だった。エヴァの気性など取るに足らない傲慢さを兼ね備えた、世にもハンサムなこのイタリア伯爵は、エヴァにとってもまた、癪にさわるが何故か気になる、初めて出会うタイプの男性だった。手練手管に長けた彼の誘惑に、エヴァは抗いながらも堕ちていき…。
社長秘書キットの夢は、愛し愛される夫と結婚し子供を授かること。そんな彼女はボスのアレックスに密かに恋をしていたが、仕事が成功し祝杯をあげた夜、ついに念願叶って彼と一線を越えた。翌朝、幸せな気分で出社すると、さっそく社長室に呼ばれ、甘いひとときの続きを予感して胸をときめかせた。ところが、彼女を待っていたのは、アレックスの思いもよらない言葉だった。「ゆうべのことは後悔している。結婚も赤ん坊もごめんだからね」ああ、こんな冷たい人に恋してしまったなんて、なんて馬鹿なの…。3カ月後、キットは何も告げず会社を去ったー彼の子を身に宿して。HQイマージュに大型新人が登場!オーストラリアで“ロマンス界のアカデミー賞”と称されるRUBY賞のほか、読者や書評家が選ぶ賞にノミネートされたM・ダグラスの日本デビュー作。冷血社長と愛情深い秘書が主人公の、シークレットベビー物語。
キーリーは16歳のとき、手ひどい失恋を経験した。家によく遊びに来ていた兄の友人ザックに熱を上げ、思いきって愛を告白したが、みごとに拒まれたのだった。以後、ザックは二度とキーリーの前に現れなくなり、彼女の心には癒やされない傷だけが残った。8年後、研修医となったキーリーは指導医師を見て愕然とする。今なおまぶたの裏に思い描いては胸を締めつけるザックの姿がそこに!キーリーは恋心がまったく衰えていないことを確信するが、彼は1年前に妻を亡くし、女性と真剣に付き合うつもりはないと知る。もう傷つきたくない。この想いは絶対に隠し通さなければ…。初恋を踏みにじった男性と再会し、ふたたび“片思い”をこじらせるヒロイン。ザックが2歳になる娘の世話に困っているのを見かねて、彼の家に住み込んで育児を手伝うことにするキーリー。秘密の恋の行方は?
コンスタンティン…?!父の葬儀に現れたかつての恋人を見て、シエナは呆然とした。漆黒の髪。たくましい肩。男らしい香りーこれは幻ではない。懐かしさがこみあげた次の瞬間、苦い記憶がシエナを現実に引き戻した。2年前彼女は、アトレウス・グループCEOのコンスタンティンに突然婚約破棄され、絶望のどん底に落とされたのだ。今になって、私になんの用があるというの?いぶかる彼女にコンスタンティンは告げた。亡き父が彼に莫大な借金を負っていたと。いったいどうすればいいの?借金を返す手立てなどあるはずもない。「君が借金を返せなければ会社をもらう」彼は氷のように冷たいまなざしで、シエナを見据え…?!人気ベテラン作家の新5部作、傲慢な大富豪たちの愛憎劇。
父を知らず、母にも愛されずに成長したエリンは赤ん坊のライリーを心の支えに、夫が遺したロッジを営んでいる。しかし、そんなささやかな幸せを一通の手紙が打ち砕く。それはライリーのDNA検査を依頼する内容だった。体外受精をしたクリニックで重大な過誤があったというのだ。まさか…息子の父親が、赤の他人だなんて!もしも親権を奪われたりしたら…。言い知れぬ不安を胸に、エリンは夫の喪が明けて最初の客を出迎える。憂いをおびた瞳のハンサムなその宿泊客、サムこそが息子の実の父親で、ライリーを奪い取ろうとしているとは、夢にも思わず。衝撃の真実を知った男女が直面する苦悩と愛の芽生え。
真夏の太陽に誘われ、3つの熱き愛が生まれた。人気作家が贈る、3大ラテン系ヒーローの熱愛名作選集!大学を卒業したフェーベはペトロニデス家の長男との婚約を解消する決意を胸に、ギリシアへ帰国した。そもそも婚約は家族が決めたもので、本当は幼い頃からずっと、次男スピロスを愛していたから。だが、そんなフェーベの想いは黒い運命に翻弄されることにー父の会社が傾き、婚約者の援助がなければ倒産する事態に陥ってしまったのだ!(『憂鬱なフィアンセ』)。ジャスティーンは友人の結婚式でベネチアを訪れ、魅力的なイタリア人男性のウインクに悩殺される。翌日、不注意で運河に落ちそうになった彼女を救ったのは、思いもかけない人物ー昨日から脳裏を離れないウインクの男性リカルドだった。偶然にも、彼が友人の知り合いだったことに運命を感じながらも、愛に臆病なジャスティーンは…(『愛はベネチアで』)。生き別れた母を捜すため、そして政略結婚から逃れるためにスペインへ来たレイチェル。所持金が底を尽き困り果てた彼女は、住み込みの臨時秘書の仕事を見つけた。豪華な城に住む雇い主ルイスは荘園領主のように傲慢な実業家。威圧的な態度に辟易する一方、謎めいた陰に惹かれた彼女は、やがて知るべきでなかった彼の秘密を知ってしまう(『それぞれの秘密』)。
親友の結婚式のため、ミラノを訪れたエリザベス。だが挙式直前になって、彼女の兄と親友が駆け落ちしてしまう。呆然とするエリザベスをさらに追いつめるように、親友の婚約者ルチアーノは彼女に身代わりの妻になれと迫り…(『嘆きのウエディングドレス』)。ケイラは実業家デュアルドと恋に落ちて結婚したものの、彼の狙いが彼女の父の会社を乗っ取ることだと知り、別れた。数年後、亡父の借金を背負い、ケイラは毎日必死で働いていた。そこへ元夫が救済を申し出るー再び彼の妻になることを条件に。(『屈辱に満ちた再会』)
オリンピアは病気の母を救うため、ギリシアの富豪である祖父を訪ねた。母はかつてイギリス人男性と駆け落ちしてオリンピアを産み、そのため、激怒した祖父から縁を切られていた。10年前、17歳のオリンピアは意外にも祖父からギリシアに招待された。孫娘を青年実業家ニック・コザキスと結婚させようとのもくろみだった。ニックはすばらしい男性で、オリンピアはひと目で夢中になったが、彼の親友とのあらぬ関係を言いたてられ、縁談はあえなく壊れた。オリンピアの彼への愛は、以来、行き場を失ったまま…。いまだに怒りのおさまらない祖父は、オリンピアに言い渡した。「わしの許しを得たいなら、ニックと結婚することだ」
婚約者に裏切られた心の傷を癒すため、マリークレールはスイスに来ていた。ホテルに着いたとき、ちょうど出てきた男性とぶつかってしまう。ホテルのオーナー、リー・ハーパーだ。男性とはもう深くかかわるまいと心に決めていたのに、彼の精悍な顔立ち、グレーの目で見つめられると、息苦しくなるほど胸が高鳴った。白銀の山々に抱かれた美しい町で二人は惹かれあい、結ばれる。「結婚しよう」リーの言葉に、マリークレールは素直に頷いた。嫉妬と誤解に苛まれる結婚生活が待っているとは、露ほども思わず。