2015年11月発売
数百人の士卒がむらがっていた。「幸村殿のもとで死なば、このうえのしあわせはない」との想いが胸中にたぎっていた。寄せ集めの牢人で編成した真田隊だったが、一万の伊達隊を圧倒しつづけた。めまぐるしく進退を繰り返し、わずかな乱れを見逃さずつけこんでゆく。目の当たりにした政宗は鳥肌を立てた。「やはり幸村は怪物だっちゃ。真田の赤武者はもう見たくねえ」。合戦小説の精華!
真田の郷の故地を回復する悲願のために、信州善光寺の商人・次郎三郎は上杉家に身を寄せていたが、信虎追放後の武田晴信(信玄)と、道鬼坊こと山本勘助を通じて結びつくことになる。信濃に再び戦雲渦巻くなかで、駒を操る滋野の一党を糾合し、知謀を尽くして奮戦していた。後に大坂方の知将として知られる真田幸村の祖父・真田幸綱の活躍。名門真田家のルーツに迫る戦国大河がここに!
池井戸花しす、二十八歳。職業はアダルトビデオへのモザイクがけ、趣味はICレコーダーでの隠し録り。「いつだってオチでいたい」と望み、過去を愛おしみ、誰の感情も害さないことにひっそり全力を注ぐ毎日だった。だがそんな彼女に訪れた変化とはー。過去、現在、そして未来が、新しい「今」とつながる、奇跡の物語。
ときは戦国、主君真田幸村のために暗躍するは猿飛佐助・霧隠才蔵・三好清海入道ら古今無双の忍びたち!上田攻めから大坂の陣まで、乱世のなかで繰り広げられる空前絶後の深謀妖闘を名手六人が描く。決定版真田忍者小説アンソロジー。
翻訳家の岸本佐知子が、「二度と元の世界には帰れないような気がする」短篇を精選。エヴンソン、カヴァンのほか、オーツ、カルファス、ヴクサヴィッチなど、奇妙で不条理で心に残る12作。 《目次》 ブライアン・エヴンソン「ヘベはジャリを殺す」 ルイス・アルベルト・ウレア「チャメトラ」 アンナ・カヴァン「あざ」 ポール・グレノン「どう眠った」 ブライアン・エヴンソン「父、まばたきもせず」 リッキー・デュコーネイ「分身」 ダニエル・オロズコ「オリエンテーション」 ルイス・ロビンソン「潜水夫」 ジョイス・キャロル・オーツ「やあ! やってるかい! 」 レイ・ヴクサヴィッチ「ささやき」 ステイシー・レヴィーン「ケーキ」 ケン・カルファス「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」
高尾で発見された手足と顔がない死体は、十年前ストーカー・リカに拉致された本間だった。警察官を殺し、雲隠れしていたリカを追い続けてきたコールドケース捜査班の尚美は、同僚の孝子と捜査に加わる。捜査が難航する中、孝子の恋人、捜査一課の奥山の連絡が途絶えた。彼の自宅に向かった二人が発見したのは……。『リカ』を超える衝撃の結末。
ペンネームに「幸」の付く五人の人気作家が、「幸せ」をテーマに紡いだ小説アンソロジー。結婚披露宴を舞台にサプライズと感動が盛り込まれた「Weather」(伊坂幸太郎)、おばあちゃん掏摸師を主人公にした「天使」(山本幸久)、SFテイストの「ふりだしにすすむ」(中山智幸)、溺め手から幸せに迫った「ハッピーエンドの掟」(真梨幸子)、幸せの対極的な存在を登場させた「幸せな死神」(小路幸也)の五つの物語を収録。
織田信長に見出されて娘婿となり、その薫陶を受けて成長した蒲生氏郷。世界とわたり合うために天下統一を急ぐ信長の下、活躍を続ける氏郷だったが、長島一向一揆での惨劇を目にして心が大きく揺らぎ始めた。そして本能寺の変が…。茶人やキリシタンとしても知られる氏郷には、その器量を畏れた秀吉が毒を盛ったとの説も。死の謎に迫るとともに、グローバルな視点から蒲生氏郷の人生を骨太の筆致で描く長編小説。
中上健次、未完の遺作が初単行本化! 1個3億円のエメラルド3個を携え、ブラジルから来日したオリエントの康の遺児タケオは、新宿で「中本」の一統である“毒味男”や、オリュウノオバの甥っ子である”九階の怪人”と出会う。 “毒味男”の一味は、最初に地上げ屋の斎藤順一郎を焼き殺したが、彼らの周囲をGメンが嗅ぎ回り始めので、一味はと共に紀州・新宮へ舞い戻る。そして、次の標的に土地の実力者・佐倉(この時、130歳近い年齢だが)を選ぶのだが……。 新たな抗争の予感を湛える長編。「千年の愉楽」の続編ともいえる未完作。「週刊ポスト」にて連載中に絶筆した。
初めて司祭となった日本人の生涯を描く 「何のために苦しい旅を続けるのか。いつかは捕まり、殺されることも確実なのだ。しかし、いかなる苦渋にみちても肩から人生の十字架を棄ててはならぬ」……。 船を乗り継ぎ、砂漠をよぎって、日本人として初めてエルサレムを訪れ、後にローマに学び司祭となった実在の人物・ペドロ岐部。 この破天荒な訪欧大旅行は、イエズス会等の組織の保護なしに、個人の自力で成し遂げた、日本人としても最初の快挙だった。やがて彼はキリシタン弾圧の荒れ狂う日本に立ち戻り、使命に生きたのだが・・・・・・。 17世紀前半の日本におけるキリスト教弾圧の貴重な通史であり、「沈黙」とともに、作者のキリスト教観の理論的な最高峰に位置する一冊である。一日本人ペトロ岐部の劇的生涯を描く。 【編集担当からのおすすめ情報】 遠藤周作著の名作・復刻版
古都鎌倉に美しく燃え上がる宿命的な愛 夫は、なぜ失踪したのか? 理由なき別れに苦しみ、無為不安の日をおくる里子は、40代の会社社長で、骨董の目利きでもある男、坂西と出会う。妻子を捨てた夫と、年上の女との情事が日々うつろなものに変っていくのとは対照的に、二人の愛は古都鎌倉の四季の移ろいの中で、激しく美しく燃え上がった……。 日経新聞に連載され話題を呼んだ長編小説。男女の宿命的な愛を鮮烈に映すとともに鎌倉や京都を舞台に、和服や自然を通して日本の四季が美しく描写されており、作品の魅力に彩りを添えている。 【編集担当からのおすすめ情報】 立原正秋著の名作・復刻版
里子と坂西の愛欲の日々に終焉が近づく 鎌倉、京都、箱根、越後……人目を忍んで逢瀬を重ねる里子と坂西。四季の移ろいと、愛の日々の中で”いびつな染付白磁”といわれた里子は”女“として目覚めていく。 里子の友人で坂西の元恋人だった栗田綾江の嫉妬による密告で、二人の仲は坂西の妻・和枝の知るところとなる。宿命の愛と知りながら、里子は坂西と別れる決心をするのだったが……。 日経新聞に連載され話題を呼んだ長編小説。男女の宿命的な愛を鮮烈に映すとともに鎌倉や京都を舞台に、和服や自然を通して日本の四季が美しく描写されており、作品の魅力に彩りを添えている。 【編集担当からのおすすめ情報】 立原正秋著の名作・復刻版
芸能界への登竜門「スタリオンボーイグランプリ」でデビューし、“種馬王子”の異名を持つ小早川当馬。俳優として着実にキャリアを積み、プライベートも好調だったが、突如、がんの宣告を受ける。余命は一年ー。残り少ない時間で、自分は世界に何を残せるだろうか。俳優として、一人の男として、当馬の最後の挑戦が始まる。
当馬は、最後の一年を映画に懸けた。監督の溝畑英治、先輩女優の都留寿美子らを巻き込みつつ、病身を押して撮影に打ち込む。そして、思いもかけず生まれた、新しい愛。「わたしは、当馬さんの赤ちゃん、産んでもいいですよ」。その真っ直ぐな視線に、すでに人生の終わりを見定めた当馬はどう答えるのかー。