2015年5月23日発売
旗本家次男の角次郎は縁あって米屋の大黒屋に入り婿した。関宿藩での藩米横流し事件解決を助太刀した功により、大黒屋は関宿藩御用達となった。だが、商いが軌道に乗り始めた矢先に舅・善兵衛が人殺しの容疑で捕まる。角次郎は善兵衛の無実を信じ独自に事件を調べるが…。妻と少しずつ心を重ね、家族一丸となって米屋を繁盛させていく物語。富士見新時代小説文庫で好評を博した「入り婿侍商い帖」シリーズ続編第1弾。
交通事故で幼い息子を失って以来、亀裂のできた夫婦の縁を描いた「桜ひらひら」。妻が娘を残して家出。イクメンとして有名な夫だったが、実際は何もできず…「仮面パパ」。一見バラバラな8つの物語は、幼い息子を虐待して殺してしまった母親のニュースに触れる8組の人々を巡っていくー。それは“ひとごと”と言い切れるのか。それぞれの人生の一片を、温かくも鋭い眼差しで切り取り、家族の絆を描く感動の号泣小説。
高校生の木崎奏が近ごろ親しくなった年上の友人・御劔耕助は、物語を考え、絵を描き、自分で上演する紙芝居屋だ。ただし観客のニーズに応じないバッドエンド仕様が祟って、まったく商売にはなっていない。ところが不思議なことに彼の紡ぐ物語はそれを必要としている人にとって、ときどき大きな“救い”になることがあるらしい…それが生者か死者かは関係なく。紙芝居が切ない過去をひもとく、心ほっこりミステリ、第2弾登場!
江戸城の台所人、鮎川惣介は、将軍家斉に気に入られ、御家人でありながら御小座敷に召される身。周囲の妬み、僻みは毎度のことながら、此度も将軍から有り難迷惑な頼み事が舞い込んだ。家斉が日本に留めていた異国の男に、料理を教えてほしいというのだ。末沢主水と名付けられた、赤鬼のような容姿の男の扱いに悪戦苦闘する惣介。そんな折、惣介は、江戸城内で囁かれる不穏な噂を耳にするがー。珠玉の書き下ろし時代小説。
江戸の猫鳴小路にて、骨董商“おそろし屋”を営む謎めいた女主人のお縁と、用心棒でお庭番の月岡。お縁には、大奥にいた過去があった。同じ骨董好きの将軍・徳川家茂の寵愛を受けてたのだが、その旺盛な好奇心と真贋を見極める才がゆえ江戸城の秘密を知ってしまい、逃げ出してきたのだー。ついに、江戸の存亡にすら関わる“おそろし屋”の曰くが、ある首壺とともに語られる。深遠なる骨董奇譚、感動の完結巻!
二次団体とフロント企業を、警視庁「足抜けコール」の小柄な女につぶされた関東貴船組。その女が麦秋だと知った組長の勲は、人知れず物思いにふける。一方翔は、暴力団に恨みを持つ麦秋が特に関東貴船組にこだわっていることに気づき、麦秋の力を借り、藤田を関東貴船組から足抜けさせようとする。麦秋は、勲の忠告も聞かずに覚醒剤の売買に手を染めようとしていた藤田に、ある方法で近づいていくが…。ノベライズ第2弾!
沖縄県八重山諸島は古くから自らを象徴する星々を愛でてきた。星々には島ごとの神が宿り、親島である石垣島には、そんな島の神々が近況を伝え合う御嶽があった。八重山諸島の言い伝えによれば島と島は家族のようにつながり支え合っているという。神々が群星御嶽に集うとき、再会した親子の会話は宴となり、新たな物語となってともに輝きを増していくー。唄の島と言われる、鳩間島を舞台にした文庫版書き下ろし短編も収録!!
戸山大学に入学した坂月蝶子は痩身の文学青年・神酒島先輩から声をかけられ、“スイ研”-酔理研究会に入ることに。そこで目にしたのは、数々の酒と恋と、日常の謎。新歓コンパや野球交流戦、月愛でる学園祭に雪の冬合宿と、移ろう四季の中で出合った謎を神酒島はするすると解いていく。酒に酔えない体質の蝶子だが、神酒島が読み解く謎の理は不思議な酔いの余韻を残していき…。切なくてじれったい、青春恋愛ミステリ!
立てこもり事件で被害者を助けた際に、骨折した片山。人質だった女性から、お礼とお詫びをかねて、ロッジ“霧”へ招待される。晴美、ホームズ、石津と共に夜行列車に乗り込むと、少女が転がり込んできた。放っておけない片山たちは、一緒にロッジへ行くことに。そのロッジには、謎の人物に集められた男女3人が、報酬を得るために、家族として過ごしていた。片山たちを待ち受けていた真相とはー。人気シリーズ、第38弾。
四谷のお岩稲荷の近くで銃声が響いた。左腕を撃たれた男は、運転免許証から吉良義久だと分かったが、本人は記憶を失っていた。十津川警部たちは、男を自宅まで送ったついでに、部屋を覗いてみると、三河湾周辺の写真集や観光案内などが並んでおり、「忠臣蔵」で悪者になっている吉良家の名誉を挽回するような書きかけの小説があった。自分の記憶を取り戻すために旅立った吉良を追って、十津川も亀井とともに三河へ向かう。
寛文6年。松尾宗房は身分を越えて俳諧の同志だった主君・藤堂良忠を亡くし失意に暮れていた。ある夜、宗房は芭蕉翁という奇妙な老人に会うが、それを境に藤堂家で不吉な出来事が起き始める。良忠の妻の名代で樒塚に赴いた宗房は謎の蔓草に襲われ、眼光鋭い美青年・河合惣五郎に助けられる。だが惣五郎は一連の事件は宗房が原因だと言ってきて!?後の松尾芭蕉と旅の仲間が藤堂家の秘密を解く。今までにない怪異ミステリ!
丸の内のオフィス街で爆破事件が発生。現場の物流企業で事情聴取を行った一之瀬は、企業脅迫事件と直感する。昇進前の功名心から事件担当を名乗り出ると、教育係の藤島からは一人でやれ、と突き放されてしまった。管内で新たに殺人事件も起き…。新米刑事・一之瀬に、自立の刻が訪れる。文庫書き下ろし第三弾。
近衛中佐・新城直衛は捕縛に現れた騎兵中隊を瞬時に無力化し、直ちに聯隊に復帰。賊徒より皇宮を奪還し陛下の御宸襟を安んじ奉るべく、“近衛嚮導聯隊選抜龍挺隊”を編成、宮城突入を下命した。市街全域を叛乱軍が制圧し、五将家の策謀が蠢くなか、新城は自らの手で血路を拓く!皇都動乱、遂に決着!!書き下ろし短篇「猫のいない海」収録。
チェーホフを訳し始めて三十年超。このユモレスカ二冊で、個人全訳が終わる。チェーホフを訳すことで、慰められ、励まされてきたという訳者。推敲を重ねたていねいな訳文から、ロシア民衆の愛すべき姿、優しい心根が浮かび上がる。傑作の名高い作品から知られざる名品まで、短篇小説好き垂涎の魅力的な作品群。人間がいとおしくなる読書体験。
ユモレスカとは、ユーモア雑誌などに掲載された読み物のこと。依頼者の要求は二つ。滑稽であること、短く書かれていること。チェーホフは色々な媒体からたくさんの注文を受けた。そして、ありとあらゆる職業、社会階層、素性の人を取り上げ、小説手法上も様々な実験を行った。チェーホフ文学の源泉ユモレスカは、今も読者の心をとらえてやまない。
幼いころ、泰子の家でいっとき暮らしをともにした見知らぬ女と男の子。まっとうとは言い難いあの母子との日々を忘れたことはない泰子だが、ふたたび現れた二人を前に、今の「しあわせ」が否応もなく揺さぶられてー水面に広がる波紋にも似た、偶然がもたらす人生の変転を、著者ならではの筆致で丹念に描く力作長編小説。