2015年6月発売
星野鈴音は十人並以下の容姿。けれど初めて見た瞬間、榊原優一は激しく心を動かされた。見つけた!彼女はダイヤモンドの原石だ。一流の美容整形外科医である優一の手で磨き上げれば、光り輝くだろう。そして、自分の愛人に…。鈴音の「同僚の亜由美より綺麗になりたい、綺麗なほうと呼ばれたい」という願望につけ込み、優一は誘惑する。星野さん、美人になりたいと思いませんか?
くるりとした大きな目と赤い頬、六歳の義妹・花哉は魚の“喜知次”を思わせた。五百石取り祐筆頭の嫡男・日野小太郎に妹ができたころ、藩内は派閥闘争が影を落していた。友人の牛尾台助の父は郡方で、頻発する百姓一揆のため不在がちという。鈴木猪平は父親を暗殺され、仇討を誓っている。武士として、藩政改革に目覚めた小太郎の成長と転封の苦難、妹への思慕をからめて描く清冽な時代長篇!
養鶏場を経営するも、借金まみれ。あげくに追加の設備投資を勧める営業マンを突き飛ばし、鈴木明男は軽トラックで逃亡した。たどり着いたのは神山田という人里離れた山村。昔からの村民、こなたばあちゃんの家で厄介になりつつ、そこで明男が目にしたのは、お金を使わず自給自足、義務や強制のない暮らしを提唱する男、民人がつくった共同体だった。彼らの目的は?本当のエコって何?
2014年に全文芸誌に発表された短篇の中からベスト11を選出しました。そのどれもが傑作、今読むべき“旬”の物語です。目利きの編纂委員を唸らせた作品群は、きっと、あなたを感動の森に誘います。愛と憎しみ、歓びと哀しみ、ときには笑いなど、研ぎ澄まされた文章に人生の機微をギュッと詰め込んだ名短篇の数々。新鋭の煌き、熟練の妙手にて、どうぞご堪能ください。
おれの名は朽網康雄。この街でただひとりの探偵。喫茶店でハードボイルドを読みながら、飲むコーヒーは最高だ。この世界は、生前の記憶と人格を保持した連中が住む電脳空間。いわゆる死後の世界ってやつだ。おれが住むこの町は昭和の末期を再構築しているため、ネットも携帯電話もない。しかし、日々リアルになるため、逆に不便になっていき、ついには「犯罪」までが可能になって…。
「一日百円で、どんなものでも預かります」。東京の下町にある商店街のはじでひっそりと営業する「あずかりやさん」。店を訪れる客たちは、さまざまな事情を抱えて「あるもの」を預けようとするのだが…。「猫弁」シリーズで大人気の著者が紡ぐ、ほっこり温かな人情物語。
施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない。なぜならやっと得た居場所を失いたくないから。その病院に新しい師長がやってきてー。『きみはいい子』と同じ町を舞台に紡がれる、明日にたしかな光を感じる物語。
1977年、和子は祖母のマサとともにお好み焼「いちはし」を切り盛りしながら、娘・志乃の成長を見守っていた。思春期を迎え、親友との出会い、淡い恋も経験した志乃は、やがて自分の進む道を模索し始める…。復興と平和がもたらされた広島の姿を描く、三部作の完結編!
オーラの父が経営するホテルは業績が悪化し、“チャッツフィールド”による買収が進められていた。交渉のためには相手をよく知っておかなければ。そう考えたオーラはチャッツフィールド・ロンドンに滞在し、夜更けに一人、ホテルのバーを訪れた。だがそこで、彼女は憂いを帯びたセクシーな男性に魅了され、彼に誘惑されるまま、熱い一夜を過ごしてしまう。数時間後、オーラは買収交渉の席で、思いがけず彼と再会する。アントニオ・チャッツフィールド?私は“敵”に体を許してしまった。狼狽するオーラを見つめる彼の目の奥には、まだ炎がくすぶっていた。
兄の結婚式に出席するため、トリニティはイギリスに戻ってきた。式が執り行われる教会で再会したのは、初恋の人ザイード!兄の学友で、砂漠の王国イシャラの王子だ。10年前、トリニティはイギリスで学んでいたザイードに心奪われ、初めてのキスを彼に捧げ、この家から連れ出してと訴えた。だが、ザイードはつれなく母国に帰り、忌まわしい出来事が起こった。トリニティは伯母の夫に襲われて身ごもり、その子を流産したうえ、政治家一族の体面のために事件は闇に葬られたのだ。式のあとザイードと二人きりになると、トリニティは感情がこみあげ、衝動的に彼の胸に飛びこんでしまうー重い秘密を抱えたまま。
テディは夫になったばかりのアレハンドロとともに、アルゼンチンへと向かう自家用ジェット機の中にいた。亡き父の理不尽な遺言状さえなければ、こうはならなかった。父はテディが屋敷を相続する条件に結婚を義務づけ、その相手にアレハンドロを指名していたのだ。アレハンドロは南米で一、二を争う辣腕実業家で非情なプレイボーイ。彼は結婚によってテディの父親にかつて奪われた土地を取り戻せる。テディは半年で別れる約束で、期限つきの結婚に同意した。イギリスの田舎育ちの娘など彼には問題外。でも望みを叶えたければ、この人と6カ月暮らすしかない。それがどんなにつらい責め苦でも…。
マリサはダマソから突然求婚され、呆然とした。高級リゾート施設を経営する実業家のダマソとは、ひと月ほど前、旅先で一夜をともにしただけ。しかも彼は翌朝、彼女のベッドから冷たく去っていったのだ。あのときは思いもしなかった。まさか自分が妊娠するなんて。彼女はベンガリア国の王女だったが、双子の兄を事故で亡くして以来、故国へは戻っていない。身重の体となった今ではなおのこと…。そんなマリサの窮状を知ってか、ダマソはさらに意外な提案をした。彼が所有する島の邸宅で、しばらく同居してみないかというのだ。彼を信用していいの?マリサに残された道は一つしかなかった。
天涯孤独のサリーは幼いころから里親のもとを転々として育ち、誰からも養子にしてもらえなかったことが深い心の傷となっていた。そんな彼女は18歳のとき、最愛の恋人トムに一方的に捨てられ、無惨に終わった恋を忘れるために異国へと旅立った。いつか彼と温かい家庭をと夢見ていたのに、またひとりぼっち…。7年後、故郷に戻り助産師として働くことになったサリーを、避けては通れぬ試練が待っていたー敏腕ドクター、トムとの再会が。憎いのに愛しい彼。でも、もうこれ以上傷つきたくない。何年も練習してきたとおり、彼女が冷たくよそよそしい態度で接すると、それがトムの傲慢なハートに火をつけ、容赦ない誘惑が始まった!
サマンサはハンサムで優しい恋人クライヴに夢中だ。父親は「君はあの男の本性をわかっていない」と反対するが、サマンサは、そんな子ども扱いにはうんざりだった。だがある夜、彼女は婚前交渉を迫るクライヴと喧嘩してしまう。彼のもとを逃げ出し、迷い込んだ美しい邸宅の庭で出会ったのは、傲慢で謎めいた実業家、ブレット・キャリントン。驚いたことに彼とクライヴは古くから因縁の関係にあるようで、翌日からブレットはサマンサを毎日のように誘いだすようになった。クライヴを愛しているからと拒んでも、軽くいなされてしまう。あげくブレットは、サマンサを自家用ジェットで別荘に連れ去りー。
家庭教師のマディは新しい雇い主との面接のため、ある宿屋に泊まった。雇い主に気に入られて、年老いてからも家の片隅に置いてもらい、つましいながらも穏やかに暮らすーそんな人生を思い描いて。ところがその夜、あろうことか彼女の眠る客室に忍び込んだ見知らぬ男に夢うつつのうちに体を奪われてしまった!男の正体はなんと、高潔で有名なセイント・オールドリック公爵。不運にも雇い主の知るところとなり、職を失ったマディはショックと恥辱に耐えかね、その場から逃げだした…。ふた月後、マディはあの夜の記憶に怯えながらも公爵邸を訪れたーわたしのおなかにいる子をどうか認知してください、と伝えるために。
“野獣”が新しい花嫁を探しているー子ができぬ妻を殺した、残忍な城主コナー・マクレリーが妻の喪も明けないうちから花嫁を求めているという噂を耳にし、村人たちは震え上がった。やがて、“野獣”は没落氏族の娘ジョスリンに白羽の矢を立てた。弟を人質として城に囚われた今、結婚を承諾する以外、彼女に道はない。そして婚礼の日、現れた長身のたくましい体躯のコナー・マクレリーが欲望もあらわに無遠慮なまなざしでジョスリンを見た。昼間は存在を無視され、夜だけベッドで情熱を交わすー世継ぎをもうける道具としての虚しい結婚生活の幕開けだった。
信じられないほどハンサムな男性が、さっきから私を見ている。それもとびきりの笑みを浮かべて。砂漠の王家主催のパーティを抜けだし、ラウンジに来ていたパイパーは不思議でならなかった。地味で平凡な私をどうして?しかし、やがて男性は隣にやってきてA・Jと名乗った。美女を相手にするようなほめ言葉と誘惑に、パイパーは夢心地。ああ、こんなすてきな人と知り合えるなんて!彼女はまだ知らなかった。彼が砂漠の国バジュールの王子アダンで、次なる獲物が自分だとは。まさか訪れた彼の祖国で、ナニー兼愛人に甘んじるつらい日々が待っているとは夢にも思わず…。
ウエイトレスとして働きながら独りで息子を育てるローズの店に、今や富も名声も手に入れたかつての恋人が現れたーザンダー!初めて愛し、すべてを捧げた男性。彼が町を出て11年。ずつとこの日を夢見ながら、同時に恐れてもいた。隠し続けてきた秘密を、とうとう彼に知られてしまうのだろうか?「きみは昔と少しも変わらずセクシーだ」彼に食事に誘われ、熱いキスを交わした直後、息子がけがをしたと電話が入り、ザンダーの車で病院へ向かったローズ。彼女の息子を見たザンダーは凍りつき、鋭い目つきになった。「きみは…ぼくに話すべきことがあるんじゃないか?」
ジュエルは楽園のような島のホテルで、臨時雇いの仕事を得た。その夜、彼女はバーの前でひとりの男性に声をかけられる。ハスキーな声、ゴージャスで尊大なたたずまい…。柄にもなく、ジュエルは名も知らぬ彼と熱い一夜を過ごす。出勤初日、ジュエルがホテルオーナーのオフィスへ出向くと、そこにいたのは、彼女を官能の極みへと押し上げた、あの男性!彼がギリシア人大富豪、ピアズ・アネタキスだったなんて。ジュエルは翌日、なんの説明もないまま解雇された。セクシーだが冷酷なピアズの子を身ごもっていると知ったのは、それから5カ月後のことだった。