2015年7月発売
クラスでは目立たない存在の結佳。習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に彼を「おもちゃ」にしたいという気持ちが高まり、結佳は伊吹にキスをするのだがー女の子が少女へと変化する時間を丹念に描く、静かな衝撃作。第26回三島由紀夫賞、第1回フラウ文芸大賞受賞作。
狂気の建築家が建てた、訪れた者を死に誘う館ー教会堂。そこにたどり着いた人々は次々に消息を絶ち、ある者は水死し、ある者は火に焼かれ、ある者は窒息した状態で、発見される。警察庁キャリアの宮司司は、失踪した部下の足取りを追い、教会堂へと足を向けた。待ち受けていたのは、均衡に支配された迷宮と、『真理』を求める死のゲーム…!天才数学者が出題した極限の問いに、解は存在するのか?
休暇のため高級ホテルを訪れた佐々本家三姉妹ー綾子、夕里子、珠美。温泉で疲れを癒し、美味しい食事を堪能し、フカフカの布団で休みたい…ところだが、事件が彼女達を放っておくわけがない!急な女将の交代劇をきっかけに、ホテルにかかわる人々の間で凄惨な殺人事件が次々と発生!さらに、国友刑事が追う正体不明の殺し屋も現れ、三姉妹の休暇先はますます危険な状況に!三姉妹と国友刑事は、犯罪者を捕らえることが出来るのか!?
一九六二年、西新宿。十二社の花街に建つ洋館「鸚鵡楼」で惨殺事件が発生する。しかし、その記録は闇に葬られた。時は流れて、バブル全盛の一九九一年。鸚鵡楼の跡地に建った高級マンションでセレブライフを送る人気エッセイストの蜂塚沙保里は、強い恐怖にとらわれていた。「私は将来、息子に殺される」-それは、沙保里の人生唯一の汚点とも言える男の呪縛だった。二〇一三年まで半世にわたり、因縁の地で繰り返し起きる忌まわしき事件。その全貌が明らかになる時、驚愕と戦慄に襲われる!!
付添い屋を稼業とする秋月六平太は、遠路鎌倉までの仕事を頼まれた。行き先は、駆込み寺として知られる東慶寺。味噌問屋「森嘉屋」のお内儀お栄は、夫の仕打ちに耐えかねて、離縁を決意したという。一方、六平太のかつての主家である信州十河藩加藤家は危急存亡の秋を迎えていた。財政難のところに、ご公儀から徳川家所縁の寺の改修を申しつけられたのだ。難局を乗り切るには、千両以上借金をしている材木商「飛騨屋」の力にすがるしかない。飛騨屋の妻女と昵懇の仲である六平太に、旧友から呼び出しがかかる。日本一の王道人情時代劇、円熟のシリーズ第五弾!書き下ろし長編時代小説。
天才画家と言われた父が旅先で客死した時、ひとり息子の茜は十二歳だった。たったひとりの身寄りとも言える父の後妻・爽子は、そのとき二十歳。遺された家族として亡き人の思い出を分け合いながら、ふたりは寄る辺のなさを埋めるように暮らしてきた。そして七年。十九歳になった茜の前に、爽子に求婚する男が現れた。頑なに守り続けてきた「母と息子」の関係、茜はその不自然さに、否応なく向き合うことになるー。『マンゴスチンの恋人』の著者が、繊細な筆致で少年期との決別を切なく描く、ビタースウィートな物語。
自由を求めて喫茶店から飛び出した“椅子”と海が見たくて動物園を逃げ出したゴリラ。“ふたり”が長い道行ですれちがう恋する少年と少女、人格者のブランコ、若いヤクザ、演説する桜の木、そして真っ白なハンカチと死んだ猫ーこれは、美しくも悲しい恋物語(「もぞもぞしてよゴリラ」)。気取り屋の狐・インカ帝国を背負った亀・傷ついている鰐・主体性のない馬・熊らしい立派な熊・恋を知らない河馬・見栄っぱりの蛙・「キー」しか言わない豚ー動物たちが主役の皮肉でユーモラスな超短篇30篇(「ほんの豚ですが」)。知られざる二傑作を一冊で楽しめる大人のための物語集。
ウルトラ体育会系だけれども活字中毒でもある文学少年、侃は、高校入学後、仲良くなった友だちに誘われて、テニス部に入ることになった。初めて手にするラケットだったが、あっという間にテニスの虜になり、仲間と一緒に熱中した。テニス三昧の明るく脳天気な高校生活が、いつでも続くように思えたが…。ある日の出来事を境に、少年たちは、自己を見つめ、自分の生き方を模索し始める。少年たちのあつい友情と避けがたい人生の悲しみ。切ないほどにきらめく少年たちの日々の物語。本作品は、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書となる。待望の文庫化!
フジテレビ系ドラマ『リスクの神様』をノベライズ。連日のようにニュースを賑わせている、偽造、隠蔽、不正利益供与、粉飾決算、個人情報流出などの企業による相次ぐ不祥事やトラブル。瞬く間に情報が拡散し、その消去が難しい現代において、たった一度の過ちが、企業や個人への信頼を失墜させてしまうことも少なくない。トラブルに巻き込まれた企業や個人を救う危機管理専門家たちの活躍を描く、硬派な本格社会派ストーリー。サンライズ物産を舞台に、次々と巻き起こる事件やトラブルを、西行寺の見事な危機管理の手腕で解決する。上巻は一話〜五話までを収録。
太平洋戦争末期、海軍報道班員として南洋にやってきた画家松久三十郎は、アラフラ海を枕に活躍する補給船員の山吉船長、カムロー、どん助と出会う。彼らと、軍人、兵隊との交情。そして、故国へ帰り、慰問の便りの縁で若い女性と会う。やがて、再び戦地へ。報道班員を経験した十蘭だから書けた、最高の“戦争小説”が初めて文庫に。
百鬼夜行の都は今、盗賊が跋扈し、陰陽師が名を高めていた。京に上った若侍、大伴の次郎信親は叔母の忘れ形見、萩姫を恋慕う。だが萩姫は一夜を契った男、安麻呂が忘れられない。笛師の娘、楓は次郎を一途に思う。錯綜する男女の思惑。命を懸けた恋の行方は…今昔物語に材をとった王朝ロマンの名作。
日本中を震撼させた未解決事件の真相が!?-雑貨のネットショップ運営の傍ら、あみぐるみのクマに宿る殉職刑事・康雄と探偵業をおこなう和子は、事件解決の手がかりを得て現場へ…(「四十年目のセンチメント」)。その他、占いサイトのパーティで殺人事件に巻き込まれる「狂熱の果て」、占いサイトの核心に近づく和子たちに死の危機が迫る「テディ・マドンナ」など四篇を収録したシリーズ第四弾!文庫オリジナル。
一九三一年、駐華公使・重光葵はテロに遭い、右脚を失う。そこからの彼の人生は、目前に立ちはだかる“階段”を昇り続けるものだった。外交の第一線に復帰し、孤立する日本を救うため日中戦争を終結させようとするも、戦局は悪化。敗戦直後、再び外務大臣になると、誰もがためらう降伏文書への調印を引き受け、マッカーサーとの交渉に挑むのだったー昭和の外交官・重光葵の知られざる生涯に光を当てた長編小説。
東京・吉祥寺の雑居ビル。警察庁の外郭団体、犯罪史編纂室。そこに集う面々は、「ちょうかい」、すなわち「懲戒免職」レベルの危険な警官たちばかり。そんな彼らの真のミッション、それは、「これから起こる犯罪を未然に防げ」というものだった。しかし、彼らを束ねるのは、瞬間記憶の持ち主なのに、まさかの鳥頭という、最凶キャリア女子だったー。
友人とゲイパレードを見に来ていた青年、菱屋修介は、晴天の空にアポカリプティック・サウンドが響くのを聞き、天使が舞い降りるのを見た。次の瞬間、世界は終わりを告げ、菱屋は惨劇のただなかに投げ出された。そして彼が逃げこんだ先は自分の妄想世界である月世界だった。多数の言語が無数の妄想世界を生み出してしまった宇宙を正しく統一しようとする神の策謀と、人間は言語の力を武器に長い戦いを続けていたのだった。
1985年8月12日、午後6時24分。日本航空123便のコックピットを「ドドーン、ドーン」という爆発音が震わせた。「スコーク77!」機長が咄嗟に叫んだその言葉は、「緊急事態」を意味していたー。元JALフライト・エンジニアが、コックピット・ボイス・レコーダやフライト・データ・レコーダをはじめ多数の資料から当時の状況を再現。事故調査委員会の提出した結論とは異なる事故原因をリアルに検証する。御巣鷹山飛行機事故から30年ー。あの日のコックピットを描く迫真のドキュメント・ノベル!
川辺の下町、東京・三河島。そこに生まれた父の生涯は、ゆるやかな川の流れのようにつつましくおだやかだったー。そう信じていたが、じつは思わぬ蛇行を繰り返していたのだった。亡くなってから意外な横顔に触れた娘は、あらためて父の生き方に思いを馳せるが…。遠ざかる昭和の原風景とともに描き出すある家族の物語。