2015年7月発売
あらゆる霊や怪を引き寄せてしまう多賀宮善が、通称「ほどき屋」の奈旬一郎に気に入られ、やむなく共に仕事をする羽目になった。奈と彼の秘書・雪緒の関係が気になる多賀宮は、ひょんなことから雪緒の記憶の中へと潜り、ふたりの秘密の過去を覗き見てしまう(「南天香水」)。他に、単独で仕事の依頼を受けた多賀宮の災難(「緋の鳥居 銀のしっぽ」)、ほどき屋と結え師の真髄に迫る物語(「薄闇やぐら」)を収録した、シリーズ第3弾!
生真面目な女子大生の水沢琴音は、青年実業家・白石周平の秘書のアルバイトを始めた。琴音は優しく無邪気な周平に惹かれ、やがて愛人になる。そして初めての夜、周平は言ったー「君を性的に調教したい」。戸惑いつつも、淫乱な「もう一人のわたし」に気付いていた琴音は彼を受け入れ、「調教」はエスカレートしていく。しかし、欲望と愛情で結ばれた二人を待ち受けていたのは、あまりにも残酷な運命でー。
横浜で英語を学び12歳で渡米。契約社会のなか、奴隷として売られる逆境も乗り切った。帰国後は教師、官僚、相場師、銀行員と、官・民でさまざまな職に就く。武器は堪能な英語力と、型破りな発想力、そして持ち前の楽天主義。失敗を繰り返しつつも、現場からの視点を失わない姿勢は、一流の財政センスへ結実してゆくー。日本経済を救った男・高橋是清の生涯を克明に描いた第一級の歴史小説。第33回新田次郎文学賞受賞作。
銀行家としてあらたな一歩を踏み出した是清は、日露戦争の戦費調達という使命を帯び、倫敦で極東の新興国・日本をアピール、日本国債の売り出しを成功させる。以来、昭和金融恐慌の鎮静化、世界恐慌後のデフレ脱却など、日銀総裁、大蔵大臣、首相を歴任して、危機のたび辣腕を振るった。大震災と2度の恐慌を乗り越えた奇跡の男は、なぜ二・二六事件で凶弾に倒れなければならなかったのか。不世出の財政家・高橋是清の生涯。
退屈な毎日を持て余す高1の泳。サーフィンをしている瞬間だけは、全てを忘れられる気がした。そんなある日、泳は“終わらない波”ポロロッカの存在を知る。「この波に乗ってみたいー」。こみ上げる想いに、泳はアマゾン行きを決意する。アルバイトや両親の説得を経て、退屈な日常が動き出す。降り立った異国が出会ったのは、様々な価値観と強烈な個性を持った人々。泳はもがきながらも、少しずつ成長していき…。
学校に建つ男女の生徒を象った銅像。その切り落とされた指先が指し示す先は…(「未来へ」)。真夜中の旧校舎の階段は“増える”。子どもたちはそれを確かめるために集合し…(「増える階段」)。まだあどけない娘は時折食い入るように、何もない宙を見つめ、にっこり笑って「ぶらんこ」と指差す(「お気に入り」)。読むほどに恐怖がいや増すー虚実相なかばする怪談文芸の頂点を極めた傑作!初めての百物語怪談本。
通り魔から女子高生を庇い、不慮の事故で殺され、加木智紀の人生は幕を閉じた…はずだったのだが、気がつくと目の前には女神と名乗る美女が。彼女は智紀を異世界に転生させてくれると言う。事の発端の通り魔ー杵崎亨は悪神の力によって異世界で再び生を受けていたのだ。智紀は心身共に“24時間疲れない”能力を得て、通り魔を追い異世界へ。不眠不休の“0歳児”が異世界無双!!24時間チート無双ファンタジー!書籍限定スペシャル特典・書き下ろし特別編も特大収録!!
「ポーランドのポー」「ポーランドのラヴクラフト」の異名をとる、ポーランド随一の恐怖小説作家が描く、幻視と奇想に満ちた鉄道怪談集。鋼鉄の蒸気機関車が有機的生命を得て疾駆する、本邦初訳14の短篇小説。
「結婚式が自己顕示欲にまみれたただのフェスティバルだとしたら、お葬式こそが人生最大の愛のイベントである」葬送儀礼の研究のため、全国を巡り実地調査を続ける鬼木場あまね。土葬の慣習がのこる地域の葬儀を取材できることになったのだが…葬送儀礼に魅せられた美人助手鬼木場あまね、柳田國男オタクの民俗学教授福満博美。一癖あるふたりが繰り広げる葬送学ミステリ!!
伏木商店街は一見、どこの街にもあるような駅前の商店街。でも、おいしい洋食屋や、腕のいい靴屋にまじって、特別仕上げで運気アップのクリーニング屋(「クリーニングの柴田」)や、持ち主がいなくなった“時”を預かる時計屋(「間下時計舗」)、思い出が蘇るメンチボールを揚げる肉屋(「塚田精肉店」)もあるし、倦怠期の夫婦が仲直りするオツな映画館もある(「シネマエウレカ」)。看板犬ならぬ、看板怪獣だっている(「三ツ谷煙草店」)。迷いこんだら抜けられない、魅惑の商店街にようこそー。星新一を継ぐショートショートの名手が贈る31の物語。
北アルプス剣岳付近の雪渓で落石事故が起きた。木塚はパーティーを離れ、確認したところ、著名な登山家の蛭川の遺体があった。事故死の処理に釈然とせぬ木塚は独り調査を進め、やがて木塚のパーティー・蛭川のパーティーとも参加者全員に動機があることが分かった…。雪山という密室で連続して起こる惨劇は、事故なのか、殺人なのか。次々と予想が覆される山岳ミステリの金字塔。
頼朝の追捕の手を逃れ、姿を隠していた義経は、若き頃、その身を寄せた奥州の藤原秀衡を頼り、平泉に向かうことを決意する。大仏殿勧進のための山伏に姿を変えた義経主従は、最大の難所である安宅の関を弁慶の雄弁と機智で通過し、無事平泉にたどり着く。衣川に館を構え、つつましい生活をおくる義経だったが…。義経の最期、盛者必衰の理を描く第二十巻。大河歴史小説完結。
この家は、どこか可怪(おか)しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が……。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢(けが)れ」となり、感染は拡大するというのだが──山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!
ある日、高校生の姉が家を出た。僕は出来の悪い弟でいつも姉に魅かれていた。バラバラになった家族を捨てて僕も、水際を歩きながら考える。姉と君子さんの危うい友情と、彼女が選んだ人生について…。危うさと痛みに満ちた青春を17歳ならではの感性でまぶしく描く坊っちゃん文学賞受賞作(「魚のように」)。ほか、家庭に居場所のないふたりの少女の孤独に迫る短編「花盗人」を収録。
少女の想像の中の奇妙なセックス、女の自由をいまも奪う幻の手首の紐、母の乳房から情欲を吸いだす貪欲な嬰児と、はるか千年を越えて女を口説く男たち。やがて洪水は現実から非現実へとあふれだし、「それ」を宿す人々を呑み込んでいく…。水/土/空気/火の四つの元素、そして世界の名をもつ魅惑的な物語がときはなつ生命の迸りと、愛し、産み、老いていく女たちの愛おしい人生。
霧の町、軽井沢。航空会社をリストラされた岳夫は、父親が遺した古い別荘で一人暮らすため、東京から越してきた。自由と不安の間に揺れる彼の新生活は、次々と立ち現れる女たちに翻弄される。誘いをかけてくる人妻、知的な女性獣医、ワケありらしい小料理屋の女将と、その十九歳の娘ー。したたかで魅力的な女たちと運命に漂う男の恋愛ラプソディ。
霊南坂の名家に生を受けた敷島四兄弟は、異なる道を歩んだ。奉天総領事館に勤務する外交官、太郎。満州で馬賊を率いる、次郎。関東軍の策謀に関わる陸軍小尉、三郎。左翼思想に共鳴する早大生、四郎。昭和三年六月、奉天近郊で張作霖が謀殺された。そして時代の激流は彼ら四人を呑みこんでゆく。「王道楽土」満州国を主舞台に、日本と戦争を描き切る、著者畢生の大河オデッセイ。