2015年8月7日発売
2011年3月11日。東京・錦糸町の錦糸ホールで新世界交響楽団のコンサートが開かれようとしていた。演目はマーラーの交響曲第五番。しかし、14時46分、東日本大震災が発生する。そんな中、3カ月前に離婚したばかりの八木雪乃、音楽評論家の永瀬光顕、アイドルおたくで今は楽団のヴァイオリニストのファンである堀毅、夫亡きあと、三田のワンルームマンションで暮らす川喜田すずらは会場に向かうが…。
しっかり者の事務職員・莢子は、大失恋後に交際を始めた篤志との結婚を夢見る。だが完璧な恋人に思えた彼には思いもよらぬ秘密が…。30代女性の揺れる心と人生の選択を優しい目線で細やかに描く。読めば今よりちょっと自由になれる、すがすがしい成長物語。
メアリは白血病患者のために骨髄を提供した。だが、それが恋人の男の怒りをかう。彼女の美しい肌に傷がついたと、身勝手な理由で男はメアリを責めー暴力をふるった。家を出た彼女は、過去をふりきるように大胆な行動に出る。素性もよくわからぬ骨髄の提供相手に会うと決めたのだ。そこにいたのはレオという優しく繊細な男性。メアリは次第に彼に惹かれていくのだが、それが悲劇の始まりだった。その頃、街では路上生活者を狙った殺人が起き…不穏さを物語に練りに練り込んだ“サスペンスの女王”による傑作。
一九二一年に生まれた双子の姉妹。米西海岸のユダヤ人地区で、支え合い喧嘩しながら二人は大人になった。しかしある日姉が失踪し……双子の妹を語り手に、波瀾の世紀を生きた人々を描く感動長篇
ときは遠未来。海王星軌道上の“ジレンマの監獄”から脱獄を遂げた名うての量子怪盗ジャン・ル・フランブール。かれを救出したのは、戦闘サイボーグ少女ミエリと喋る宇宙船“ペルホネン”だった。火星での冒険のすえ、過去の記憶と、謎の“箱”を入手したジャンは、次なる行き先を封鎖された地球へと定める。いっぽう地球では、ソフトウェア生命である精霊と暮らしたことで家族からなかば縁を切られていた有力者の娘タワッドゥドが、姉から奇妙な命令を受けていた…。アラビアン・ナイトの世界と化した異形の地球で展開する、ポストヒューマン時代の冒険譚!『量子怪盗』続篇。
第153回芥川賞受賞作 「早う死にたか」 毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、 ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。 日々の筋トレ、転職活動。 肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。 閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!
暑い夏。冷やしうどんに胡麻豆腐をのせ、青紫蘇と茗荷を薬味に食べる一品に始まり、穴子の八幡巻き、鰹膾など、季節にあわせた美味い料理を出す湯島三組町の田楽屋。そこで修業中の若侍飛川角之進は、湯屋の娘おみつと一緒になるため、お互いの両親から許しを得ようと決意した。その矢先、角之進は、江戸を騒がす、黒狐のお面を被った兇悪な押し込みについて、岡っ引きから相談され…。
森で暮らす小鬼は、弟を探して迷い込んだ少女・民と出会う。 過去見の術を使って弟がいた過去世を見せるが、その為に民は錯乱し、身内に『鬼の芽』を生じさせた。 鬼の芽は、破裂し、非道を働けば、地獄に落とされ、現世へ二度と戻れない。 だから小鬼は、生まれ変わる度に生じる鬼の芽を、千年にわたって、摘みとる業を自ら望んで背負うことに……。 人の心の機微を、気鋭の著者が描く、ファンタジー小説。
次郎三郎は信州善光寺の行人として各地を渡り歩く商人だ。信濃国で産駒に長けた滋野一族の末葉だが、戦国の混乱で武田家に真田の郷の本貫地を追われ、山内上杉家に身を寄せている。武田に恨み骨髄の次郎三郎だが、武田信虎が追放される大事件を奇貨に、旧領回復を目指していた。後に大坂方の知将として知られる真田幸村の祖父・真田幸綱の活躍。武田・真田の興亡を描く戦国大河第二弾!
つかの間千草苑を離れ、亡き妻との思い出のある地へと旅立つ祖父の木太郎。黄昏時、波打ち際に佇む彼に囁きかけるものは(「浜辺にて」)。若さ故の迷いから、将来を見失ったりら子が、古い楠の群れに守られた山で、奇妙な運命を辿った親戚と出会う(「鎮守の森」)。ひとと花。緑たちの思いが交錯する物語。花咲家のひとびとが存在するとき、そこに優しい奇跡が起きる。書下し連作短篇全六話。
黒船に乗り込み異国にまで向かった公儀御庭番、戊辰戦争で三十余戦無敗を誇ったやくざ部隊、薩英戦争に呪術と体術で挑んだ山伏忍者、攘夷志士と交わり情報攪乱にいそしんだ会津藩密偵……。幕府、朝廷、薩長はじめ全国三百藩は、開国・尊皇攘夷の嵐のなか、どのような生き残り策を考えたのか? 未曾有の国難の陰で、密偵、忍者、志士らの情報戦争を活写する時代アンソロジー! 井川香四郎、平谷美樹、多田容子ら9氏のオール書下し競演。
英国のファンタジーの女王として名高い、映画「ハウルの動く城」原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズの短編集。正統派ファンタジーや幻想譚、SFテイストの作品やユーモラスな小品など、ジョーンズのさまざまな側面が味わえる一冊。ジョーンズ作品への入口としても最適。単行本「魔法!魔法!魔法!」収録の18編のうち、15編を文庫化。
クンデラ、カフカをはじめ、数々の特筆すべき作家を生んだ中欧は、大国ロシアとドイツに挟まれ、この100年間に最も激しく地図が書き換えられ続けてきた地域にほかならない。多言語・多民族の複雑さと、常に介入され「歴史になれない歴史」をもつ不条理さは、しかし、中欧の詩学に比類なき輝きを与えた。抵抗の時代に中欧文化の本質を見つめた著者が、実存の痛みを結晶させた珠玉のエッセイ。日本語版のための書き下ろしも収録! 訳者序 「想像の共同体」としての中欧 ──トランスナショナリティーとマージナリティー ── まえがき──円卓の中欧 第 I 章 中欧の困難さ──アネクドートと歴史 第 II 章 実存の困難さ──神話とチェコ文学 第 III 章 第一次共和国の困難さと希望──概念と社交生活 第 IV 章 亡命の困難さ──逃走する知識人 第 V 章 文学の困難さ──物語と歴史 あとがき──アルマリウムと、もう少しの言葉 訳者あとがき 人名索引