2015年発売
タクシードライバーの千春には、正当防衛で人を死なせた過去があった。ある日、千春のタクシーを予約していた小学生が失踪する。その後少年の行方は判明したが、千春の過去に関連づけた噂が流れたため後味の悪さを残していた。さらに彼女の周りでは、不穏な出来事が相次ぐ。一体誰の、どんな思惑があるのか。
十五歳のわたしの家にとつぜんやってきて、一緒に住むことになった三十七歳のレミちゃん。むかし作家を目指していたレミちゃんには「ふつうの人と違う」ところがあった…。季節のうつりかわりとともに描かれる人と人とのきずな、人間のみにくさと美しさ。そして涙がおさえられない最後が待ち受ける。
二十二年前、妻と姦夫を成敗した過去を持つ地方藩の執政・阿部重秀。残された娘を育てながら信じる道を進み、窮乏する藩財政を救う秘策をついに編み出した今、“ある事情”ゆえに藩政を退こうとするがー。重秀を襲ういくつもの裏切りと絶望の果て、明らかになる人々の“想い”が胸に響く、感涙の時代長編。
猟奇殺人の犯人が捕まった。陪審員の理解は得られず、男は凶悪犯の巣窟・孤島の牢獄アルカトラズへと送られる。折しも第二次世界大戦の暗雲が垂れ込め始めたその時期、囚人たちの焦燥は募り、やがて脱獄劇に巻き込まれた男は信じられない世界に迷い込む。島田荘司にしか紡げない、天衣無縫のタペストリー。
JR西日本の社長宛てに脅迫状が届いた。九月十五日一一時五〇分大阪発の寝台特急トワイライトエクスプレスに爆弾を仕掛けた。爆破を回避したければ、金沢駅到着までに現金一億円を列車内に積みこめ。ただし、金沢までに爆弾を見つけることができたなら爆破はしないという奇妙なものだったのだ。犯人は本気なのか、いたずらなのか?投函場所が東京だったことから、警視庁・十津川警部も捜査に加わることになった。翌日、トワイライトエクスプレスは何事もなく終着の札幌に到着したのだが…。会心の長篇旅情推理!
異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような“高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで、世界中に冷たい熱狂を引き起こした伝説的名作。
美しきハクスタブル家の長女メグは、弟妹たちを立派に成人させてようやく自分の幸せに目を向ける。かつての恋人に「婚約者がいる」と言ってしまい紹介することになったメグは、以前から自分に求婚していた男性の元へ。するとその人は知らぬ間に、別の女性と婚約していた。困り果てたメグの前に、花嫁探しのため舞踏会へやってきた伯爵ダンカンが現れる。突然ダンスと結婚を申し込まれたメグは、踊りながら正直に境遇を打ち明け、彼に婚約者のふりをしてもらうことに。ところが、ダンカンはスキャンダルで社交界から半ば追放された人物だった。たちまちゴシップの的になる二人。そのうえ、彼は2週間以内に結婚しないと財産と爵位を失うという窮地に陥っていた。そこで二人は、2週間で自分たちが恋におちることができたら結婚するという取り決めを交わし…
雨降りの薄暗い朝、スザンヌは記念式典に必要な花を届けるため、急いで墓地へ向かっていた。彼女の営むカフェの開店時間まであとわずか。一刻も早く厨房に房って、卵とコーヒーの美味しい朝食を準備したいところ。なのに、墓地で死体を発見してしまうなんて!被害者は町のみんなに嫌われていた元刑務所長で、警察が真っ先にマークしたのはスザンヌの友人ミッシーだった。けれど彼女が行方をくらましてしまい、捜査は難航。これにはいつも頼もしい保安官も頭を抱えるばかり。スザンヌは、彼の大好物のスイートロールやパイで励ましながら、友人の無実を信じてみずからも捜査に乗り出した。そんなとき、保安官が重傷を負って意識不明という悪い報せが入り!?
わたし、誘拐されたの。でも警察にも誰にも言わないでー。突然、姿を消した姉からの謎の電話。姉が何者かに監禁されている!犯人の目星をつけた妹は…。(『美獣を狩れ』)穢れなき令嬢を、清楚な若妻を、知性的な美姉妹を…引き裂き、蹂躙してゆく、獣欲の悪魔たち。-1980年代、カルト的な人気を集め、“レイプの帝王”の名をほしいままにした孤高の官能作家・蘭光生。没後24年、ついにその禁悦の作品群が甦る。レジェンドシリーズ第一弾。
大阪府警の新米刑事・神木恭子は、担当した殺人事件を、別件で関わった老人の供述から解決へと導く。しかし時を同じくして、老人の自宅の床下から嬰児を含む死体七体が発見された。二つの事件の背後には、府警上層部が内に宿す闇が広がっていたー。体面重視の違法捜査、キャリアとノンキャリアの暗闘ー知られざる警察の真実に、淀んだ街に狂い咲いた情愛が絡まりつく。現場を知り尽くした元本職の刑事だから書きえた、究極の警察小説!第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト受賞作。
名作『夕べの雲』から三十五年。時は流れ、丘の上の家は、夫婦二人だけになった。静かで何の変哲もない日常の風景。そこに、小さな楽しみと穏やかな時が繰り返される。暮らしは、陽だまりのような「小さな物語」だ。庄野文学の終点に向かう確かな眼差しが、ふっと心を温める。読者待望の、美しくもすがすがしい長篇小説。
笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。第153回芥川賞受賞。 売れない芸人徳永は、熱海の花火大会で、師として仰ぐべき先輩神谷に電撃的に出会った。そのお笑い哲学に心酔して行動を共にしながら議論を続けるのだが、やがて二人は別の道を歩んでいくことになる。運命は二人をどこへ連れていくのか。
鬼隼人、許すまじー財政難に喘ぐ豊後・羽根藩には、怨嗟の声が渦巻いていた。十五年前に仕官、やがて御勝手方総元締に任じられた多聞隼人が、藩主・三浦兼清を名君と成すために、領民家中に激烈な痛みを伴う改革を断行したためであった。そんな中、誰も成し得なかった黒菱沼の干拓の命が下る。一揆さえ招きかねない難題であった。それにも拘わらず、隼人は家老に就くことを条件に受諾。工事の名手で“人食い”と呼ばれる大庄屋・佐野七右衛門、獄中にあった“大蛇”と忌み嫌われる学者・千々岩臥雲を召集、難工事に着手する。だが、城中では、反隼人派の策謀が蠢き始めていた…。『蜩ノ記』『潮鳴り』に続く羽根藩シリーズ、待望の第三弾!
連邦機関に属する警護官、コルティ。命を狙われた者たちを守り抜くプロのボディーガード。つねに敵の手を読み、綿密な戦略を立てて任務を遂行する。対するは凄腕の“調べ屋”ラヴィング。ターゲットを拉致し、情報を引き出して殺すエキスパート。緻密な計略で警護の手を巧みにかいくぐり、標的を殺す。二人のプロが知力を尽くして戦う死のゲームが幕を開ける!知的スリラーの旗手の真骨頂、熾烈なるノンストップ・サスペンス。
「くらがりに落ちた」。解決できなかった事件を奉行所ではそう言う。それらの事件を書き留めておくのが、南町奉行所永尋書留役である角野忠兵衛の役目。奉行所の角に忘れ去られた事件を地道な探索でくらがりから引きずりだす忠兵衛を、仲間の同心はいつしか“くらがり同心”と呼ぶー。窓際同心の人情味溢れる活躍を描いた人気シリーズから、著者自ら厳選した「精選版」!
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!
大手企業に就職したものの、うだつの上がらない日々に塞ぐ井上雅也。ある日、南青山骨董通り探偵社の社長・金城から突然話しかけられた。「探偵になる気はありませんか?」。雅也は訝しみながらも体験入社をするが、厄介な事件に関わることになり…。個性的なメンバーの活躍が、軽快なテンポと極上のサスペンスで繰り広げられる、ベストセラー作家の新シリーズ始動!
シングルマザーの新聞記者・久平可南子は心に決めていた。息子のために仕事は辞めない。父親の名は誰にも明かさない。取材の折、彼女を見つめる戦力外通告を受けたプロ野球選手・深澤翔介。ふと気にかかり、インタビューを試みると、彼には可南子の秘密を知る素振りがあって…。仕事、育児、生きがい。今、前を向くことのリアルを、ひたむきな再起の物語に込める。