2015年発売
戦争末期の東京ー空襲に怯え、明日をもしれぬ不安な日々を過ごす十九歳の里子。母と伯母と杉並の家に暮らす彼女の前に、妻子を疎開させた隣人・市毛が現れる。切迫する時代の空の下、身の回りの世話をするうち、里子と市毛はやがて密やかに結ばれるが…。戦時を生きる市井の人々の日常と一人の女性の成長を、端正な筆致で描き上げた長編文学作品。谷崎潤一郎賞受賞作。
土井利勝の讒言により父家康の怒りを買い、諏訪に流された松平忠輝。奸計を隠蔽するため、利勝は忠輝を亡きものにしようと、柳生十兵衛を刺客として諏訪に送る。一方、幕府転覆を企む海賊一味も、忠輝の附家老だった大久保長安の隠し金を狙い、諏訪へ。はたして難敵相手に、天海の命を受けた大道寺菊千代率いる大江戸七人衆は、忠輝の身を守ることができるのか?書下ろし時代小説。
腕っぷしは弱いが、見た目は役者と見紛うばかりのいい男。柳亭種彦は二百俵取りのお殿様で、暇を持て余す趣味人だ。その読み手を楽しませる才能を見込んだ版元の山青堂は、彼の戯作で一山当てようと目論む。渋々ながらも書き始めた種彦。すぐに戯作の虜になるが、世に出した作品がその身を危うくする…。実在した流行作家の若き姿と、本を愛おしむ仲間たちとの痛快な活躍を描く。
「兄を探してください」と、一人の少女が訪れた。行方不明や素行調査の類は引き受けない探偵社だが、その青年の周辺で、エネルギー開発に携わる人物が相次いで失踪したことが判明。国家を巻き込む事件と予測した大神チームは、調査に乗り出す。そんななか、鏡市の最愛の弟・辰爾に危険が迫っていた。特異能力を誇る4人の探偵を絶体絶命に陥れる闇組織、その驚愕の正体と目的とは!?
両親を事故で亡くした女子大生・笹木唯は高額の報酬と引き換えに記憶消去薬「レーテ」の新薬実験に参加する。完全に閉鎖された施設で、天才科学者の監視のもと過ごす7日間。毎日記憶をリセットされる唯と5人の被験者たちだが、ある日目覚めると流血死体を発見してー。どうしてこの手は血塗れなの…まさか私が、殺したの?驚愕のエンディングに戦慄必至の記憶喪失ミステリ。
命からがら故郷“タラ”農園に帰還したスカーレットだったが、母は病死し、父はショックで自失していた。残された人々を率いて、私が故郷を再建するほかない。この土地だけは誰の手にも渡さない!-しかし南部の住民には苛酷な重税が課せられ、農園を売らなければならない危機の瀬戸際に。スカーレットは金策のため、自らの身をレット・バトラーに差し出す決意を固めたのだが…。
星がきれいなある夜、突然ウェンディの部屋に現れたピーター・パン。彼らは妖精ティンカー・ベルの魔法の粉を身体にふりかけ、ネバーランドへと飛び立ちます。行き方は、二つ目を右に曲がったら、そのまま朝までまっすぐ!さあ、海賊のフック船長、人魚、人食いワニが待つ大冒険の始まりです。永遠に年を取らない少年と、やがて大人になってしまう少女の、切なくも楽しい物語。
アクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため長年暮らした村を後にする。若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士…さまざまな人々に出会いながら雨が降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとはー。失われた記憶や愛、戦いと復讐のこだまを静謐に描くブッカー賞作家の傑作。
悪漢に屋敷を荒らされた深室家は目付に不始末を厳しく追及される。将軍家綱のお髷番にして寵臣深室賢治郎は窮地に陥るが、老中阿部忠秋の計らいで難を逃れた。これに業を煮やしたのは賢治郎失墜を謀る異母兄松平主馬。冷酷無比な刺客を差し向け、魔手は許婚の三弥にも伸びる。進退窮まった賢治郎。そのとき家綱がついに動いた。権益を巡る傑物たちの攻防。大好評シリーズ、圧巻の完結!
愛知県犬山市の明治村にある品川灯台で、大京物産の社長・高桑雅文の遺体が発見された。死因は刃物で刺された失血死。遺留品の中に血のついた京王電鉄の回数券が見つかる。その血液は被害者とは別のものだった。美濃和紙の取材をしていた浅見光彦は、ニュースで事件を知る。見覚えのある高桑の顔ー。好奇心がとめられずに現場へ!凶器が包まれていた和紙が語る、旅情ミステリー。
悪評高い焼き物問屋の彦市郎と、町中で一触即発の状態にあった明珠。彼は大寺の医僧を務めていたが、看病していた高僧が死んだため、更に蘭方をもって接していたという理不尽な理由で寺を追い出されたというのだ。「尾張屋」の主・宗因らの勧めで町医となったが、彦市郎に薬草の煎じ薬を飲ませたことから事態は思わぬ展開を…。高瀬川に集う人々の歓びと哀しみを綴る傑作シリーズ!
表沙汰にできない揉め事の内済を生業にする九十九九十郎。元御小人目付で剣の達人でもある。若い旗本、大城鏡之助が御家人の女房を寝取り、訴えられていた。交渉は難航したが、九十郎の誠意あるとりなしで和解が成立した。だが鏡之助は九十郎への手間賃を払おうとしない。数日後、牛込の薮下で鏡之助の死体が発見された。御家人とともに九十郎にも嫌疑がかかった…。書下し長篇剣戟小説。
菅原徳介・里子夫婦は、思い出の地・津和野を訪れた。一人息子が借金を苦に東尋坊で自殺、絶望の果て老夫婦は死出の旅に出たのだ。秋芳洞を見物中、夫婦は何者かに襲われ、妻が死体で発見された!自殺をほのめかして失踪する老夫婦が増えていることに不審を覚えていた十津川警部が捜査に乗り出した。やがて、謎の組織が事件の背後に浮かび上がる…。長篇旅情推理。
「無いものはない」貸し物屋・湊屋を切り盛りするお庸。男勝りな言葉づかいが玉に疵だが、人情と行動力で、持ち込まれる無理難題を解決する。大店の若旦那が借りに来た三味線の銘器を巡る大騒動「紙三味線」。幼い頃に自分を捨てた母親の代わりを貸して欲しい。そんな頼みにお庸が機転をきかす「貸し母」など、不思議だがほろりとなる書き下ろし四編。
江戸日本橋の小児医者・宇田川三哲は、いつも昼過ぎまで寝ているので「ねぼけ医者」と呼ばれ、身分違いの恋に悩む男。また、無眼流の遣い手であり、夜になると御庭番の助っ人として非情の剣を振るう。御庭番と、幕政の混乱を狙う尾張藩が江戸に送り込んだ御土居下同心との壮絶な闘いの行方は!?無眼流の奥義に潜む妖魔とは!?
植木奉行同心とは幕府ゆかりの地や寺社領の植木を見廻るのが務めだが、直心影流の達人・斎藤作左衛門は、その垣根を越えて江戸の悪と戦う。不器用な性格ゆえ、上役の姪・初音に好意を打ち明けられずにいたが、僚友・駿馬も恋心を抱いていた。彼ら三人に迫る波乱の予感!恋・友情・勇気!耐える男の切なくも愛に満ちた物語。
代三郎は、日がな一日好きな三味線ばかり弾いているぐうたら大家。しかし、その一方で、江戸に蔓延る魔物を退治できる特殊能力を持っていた。ある日、江戸で流行りの断食療法について、妙な噂を聞いた彼は、そこに“座敷わらし”が絡んでいることを突き止める。その裏にある真相を探るべく、飼い猫・栗坊と奔走するのだが…。
自殺志願者を見分けることが出来る特殊な能力を持つ小説家の剣持とその友人の漆原。いつも何の実もない会話を繰り返し、しょぼい中華屋で飯を喰いながら、日常を生きるふたり。ある日、祖父が昔隠した宝の地図を探しに図書館に本を盗みに行くことになるが、そこで出会った連中はなんとも風変わりな奴らだった…。REPLAY & DESTROY、深夜ドラマの姉妹作が小説化!
小学校四年生のさよが図書館でみつけた『七夜物語』は、読んだはしから内容をすっかり忘れてしまうふしぎな本。さよは、物語にみちびかれるように、同級生の仄田くんと「夜の世界」へ迷いこみ、グリクレルという料理上手の大ねずみから皿洗いを命じられることになる。