2015年発売
金沢で生まれ育ち、もと芸者の母と二人暮らしの希和子二十四歳。新進の友禅作家・瀬尾との穏やかな恋が始まったかに思えた東京出張の夜、思いがけない事実に打ちのめされた希和子は最終の新幹線に飛び乗ったー。純粋な恋がもたらす歓びと哀しみ、親子の情愛が雪の古都を舞台に美しく描かれる長編恋愛小説。
昭和17年、財閥令嬢にして人気画家の多江子は、中日文化協会から上海に招かれた。ところが協会に潜入中だった憲兵の槇に、政府転覆を企んでいる中国人実業家・夏に接近するよう強要される。断れば、多江子が絡んだスキャンダルの真相を公表するという。謀略に巻き込まれた多江子の運命は…。松本清張賞受賞。
NHKアニメ『烏は主を選ばない』原作! 優秀な兄宮を退け日嗣の御子の座に就いた若宮に仕えることになった雪哉。だが周囲は敵だらけ、若宮の命を狙う輩も次々に現れ……。 第一章 ぼんくら次男 第二章 うつけの若宮 第三章 谷間 第四章 桜花宮 第五章 七夕 第六章 回答
変化自在の語りで魅せる平安一大スペクタクル 帝の御病平癒を願い京に上った少年安倍晴明。彼と蘆屋道満そして妖狐の化身の三つ巴の闘いを現代の講釈師・夢枕獏秀斎が語り下ろす。
手妻と太神楽。寄席・神楽坂倶楽部には謎がいっぱい 華麗な手妻を披露する美貌の母娘。超難度の技を繰り出す太神楽界のサラブレッド青年。彼らをめぐる謎に新米席亭代理・希美子が挑む。
「今日から、あなたたちは鈴木さんです」。巨額の借金を抱えた男女四人が豪邸に集められた。彼らの責務は、ここで一年間、家族として暮らすこと。見知らぬ者同士が「家族ごっこ」に慣れてきたある日、貸主から次なる命令が下った。失敗したら四人に未来はないー。貸主の企みの全貌が見えた瞬間、想像を超えた“二重の恐怖”がつきつけられる!
出奔した道楽者の兄が拵えた大借金。その取り立てに現れた男を見て、骨董店『萬屋』の一人娘・お伊馬はたじろいだ。単なる商家の次男坊というが、白狐の化身と見紛う優男。本当に人間なのか、と疑いたくなるほど異様な雰囲気をまとっている。なぜ兄はこんな男から金を借りたのか?真相を追うお伊馬はやがて途方もない事件に巻き込まれるー。
居酒屋の名物女将・お夏の許に、髪結の鶴吉から思わぬ報せが届いた。二十年前、お夏の母を許し難き理由で無礼討ちにした才次が名を変えて船宿の主に納まっているという。凄まじい殺人剣の遣い手を用心棒に雇い、温和な仮面を被る才次を討つため、お夏は料理人の清次らと共に策を巡らした大勝負に挑む。無念と憤怒を晴らすシリーズ待望の第三弾!
久留米藩の懐はまだまだ火の車。そこで藩主・虎之助は“馬鹿につける薬”という大儲け間違いなしの商いを思いつき、薬作りに自ら奔走する。そんな折、丑蔵一家を束ねる母・辰の行方が知れなくなった。江戸最大のやくざ・万五郎一家の仕業と睨んだ虎之助は、怒り心頭で殴り込んでゆき…。腕っ節と機転が武器の破天荒大名、痛快シリーズ第五弾!
菊太郎の恋人・お信が娘のお清を連れ、神妙な面持ちで「鯉屋」へやってきた。源十郎を筆頭に店の者たちは、すわ別れ話かと気を回すが、お清の進路の相談だった。女だてらに公事師になりたいのだという。その申し出を源十郎は受け入れたが…。大人への階段を上る娘の姿を心温まる筆致で描く表題作ほか全六編。人気シリーズ、待望の第二十一集!
「実兄を見殺しにした男」と周囲から疎まれている武田の家臣・智之介。ある日、幼馴染みが殺害され、その嫌疑が智之介にかけられる。汚名をそそぐ為、そしてある罪の意識から一人調べを進めるうちに、負け知らずの武田家を揺るがす密約に辿りつく。接見することなく、一通の手紙で繋がった一介の武士と信長。誰も知らなかった長篠の戦いが今幕を開ける。
上州の水呑百姓の家に生まれた藤吉は、下男奉公先で米作りや馬の世話、雑用など何でもこなす毎日を送っていた。そんな彼には、いつか農民の身分から脱し、侍になるという大それた夢があった。生まれ持った運と知恵を味方に、藤吉は立派な武士へと出世できるのか!?身分の壁にぶつかりながらも、孤軍奮闘する若者の成長を描いた、痛快時代小説。
剣は一流だが道場には閑古鳥の鳴く弥市。武士の身分を捨て商家に婿入りした喜平次。十六年前に故郷を追われ江戸で暮らす二人の元に初恋の女が逃れてくる。だが、変わらぬ美しさの裏には危うい事情があった。一方、国許では化け物と恐れられた男が返り咲き、藩を二分する政争が起きていた。再会は宿命か策略か?侭ならぬ人生を描く傑作時代小説。
出産直後に殺された若い女の骸が発見される。赤子が消えているにもかかわらず自死と片付ける奉行所に不審を抱く蘭方医・里永克生。玉の輿を狙った娘達が足繋く通う甘酒屋をつきとめるが、女将はすでに殺され、訪れていた町娘達は行方知れずとなっていた。解明に乗り出す克生の前に立ちはだかったのは、名門武家が糸を引く非道な稼業だった。
清楚で可憐な良家の令嬢エリカは、夜になると、秘密クラブのオーナー・田ノ倉好みの小さな下着で男たちの前に立たされ、終業後にはしゃぶりつくされる。これを弟の春樹は許せなかった。ある晩、エリカに目隠しをして縛り上げる。いいぞ姉さん、もっと濡らすんだ。弟は姉の足首を強く掴むと、左右に思い切り広げた。悪魔の嬲り責めが始まるー。
ジェームズを追いかけ、地中海の島へ向かったアガサ。 皮肉にもそこは、新婚旅行で行くはずの場所だった。 執念で彼の居場所を突き止めたものの、今度は殺人事件に巻き込まれてしまった二人。 愛と事件に悩むアガサの前に現れたのは……!?
暖簾も看板もない「菜飯屋」。街の片隅に佇む店は、過去との訣別をした女店主を象徴するかのように温かく、少し寂しい。「菜飯屋」の春秋を人との出会いと別れ、孤立と自立になぞらえたように描いている。こころの錘を静かにそっと呑み込みながら、揺れ動く自己と他者を見つめた作品。弱さが人を包み込む優しさに変わる時、人は人を慈しむ心を知るのだろう。ここに綴られているのは人との出会いと縁を育むたましいの処方箋。 離婚を機に自立していく女性を淡々と、そして時に激情する胸の内を、静かに描いた『菜飯屋春秋』。初出は魚住陽子個人誌『花眼』(2006年〜2011年)にて連載した作品。それを加筆修正し、再編集した単行本。見えているものだけがすべてではなく、ある一つの側面であることに気づかされる。気づく時には瞬時にして気づかされてしまう人の思いやその関係性、誰のもとにもある日常を魚住陽子は流れる映像のように描き出す。
大学の芸術学部で学ぶ作家志望の「私」と、二歳年下の画家志望の「彼」。書く訓練として「私」が何年も続けた「MH式カード」、二人が住む杉並界隈の風景、印象派の画家たちの群像……。創作をめぐる諸断片とともに織り上げられていく、夢を追う若者たちの名もなき時代……。自らの作家になるまでの日々を批評的に描いた、批評的半自叙伝。 匿名芸術家 四十日と四十夜のメルヘン