2016年4月発売
高校教師の南慎一郎は、妻子がありながら同僚である藤島の妻美枝子に心惹かれている。美術教師の藤島から手ほどきを受け、美枝子をモデルに描いた絵が日展初出品で入選。同時に美枝子を描いて出品した藤島は落選していた。一年後、共に訪れた峡谷で藤島が謎の死を遂げる。不慮の事故か、他殺か、自殺か。嫌疑をかけられる慎一郎。やがて、美枝子や慎一郎の妻由紀らの人生が絡み合い、思わぬ方向へと動き出していく。果して人は人を真に愛することができるのか。嫉妬、疑念、欲、エゴイズム。人間の本質を鋭く浮かび上がらせた問題作。
時は一九〇六年、魔都・上海。あの「猫」は生きていたー「吾輩」の主人・苦沙弥先生殺害事件の謎を解くために、英吉利猫のホームズ、ワトソンも加わり、猫たちの冒険が始まる。夏目漱石『吾輩は猫である』でおなじみの寒月、迷亭、東風、そして三毛子、さらには宿敵・バスカビル家の狗も登場。謎が謎を呼ぶ超弩級の猫ミステリー。
アナナスとイーイーは“鐶の星”の巨大なビルディングで同室に暮らしている。二人は、父と母が住むという碧い惑星に憧れ、帰還を夢みている。出口を求めて迷路をひた走る二人に脱出の道はあるのか。そして、碧い惑星はまだ存在しているのか?…SF巨篇を一冊で待望の復刊!
7体の文学クローンの身体に溜まる謎の物質「青脂」。スターリンとヒトラーがヨーロッパを二分する一九五四年のモスクワに、その物体が送りこまれる。巨頭たちによる大争奪戦の後、エロ・グロ・ナンセンスな造語に満ちた驚異の物語は、究極の大団円を迎える。20世紀末に誕生した世界文学の新たな金字塔!!
最悪の星、地球に住みついたデュランティ一家だが、大人たちはみな地球アレルギーに病んでいた。この世界を住みよいものにするために、悪ガキ六人(と幽霊一人)は全人類抹殺を決意、二度と降ろさぬ帆をあげて旅立ちをするときが来たー大冒険ミステリSF活劇、開幕。SF界で最も独創的な孤高の天才がおくる初期代表作。
ある夜、自宅近くのたばこ屋でウィリングが見かけた男は、「私はベイジル・ウィリング博士だ」と名乗ると、タクシーで走り去った。驚いたウィリングは男の後を追ってパーティー開催中の家に乗り込むが、その目の前で殺人事件が…。被害者は死に際に「鳴く鳥がいなかった」という謎の言葉を残していた。発端の意外性と謎解きの興味、サスペンス横溢の本格ミステリ。
会社倒産で職を失った六助と千鶴子。他人に使われるのはもう懲り懲り。そこで思いついたのが、美味しいカレーライスの店。若い二人は、開業の夢を実現できるのやら?そして恋の行方は?邪魔する奴もいれば、助けてくれる人もいる。夢と希望のスパイスがたっぷり詰まった、極上エンタメ小説!食通で知られた、文豪・阿川弘之が腕を振るった傑作!
「なぜ、どんなふうに死んだのー?」幼い頃から幽霊が視える赤茨耕一は、彼らの死に様に異常なほど強い関心を寄せていた。耕一は「幽歴探偵」と名乗り、コンビニや病院跡、元ホテルの廃墟などで遭遇した幽霊の来歴を探っていく。6つのエピソードに隠されたリンクが、耕一自身に秘められた謎を解き明かす。新鋭の意欲作!
懲戒免職処分になった元警視庁の敏腕刑事が作成した“完全犯罪完全指南”という裏ファイルを入手し、完全犯罪を目論む4人の殺人者。「春は縊殺」「夏は溺殺」「秋は刺殺」「冬は氷密室で中毒殺」。心証は真っ黒でも物証さえ掴ませなければ逃げ切れる、と考えた犯人たちの練りに練った偽装工作を警視庁捜査一課の海埜刑事はどう切り崩すのか?一体彼らはどんなミスをしたのか。
第二次世界大戦下のフロリダ州タンパ。抗争のさなかで愛する妻を失って以来、元ボスのジョー・コグリンは、表向きはギャング稼業から足を洗い、一人息子を育ててきた。だが、そんな彼を狙う暗殺計画の情報がもたらされる。いったい誰が、何の目的で?組織を託した旧友のディオンや、子飼いのリコらが探っても、その真偽すらつかめない。時を同じくして新たな抗争が勃発し、平和を保ってきたタンパの町は揺れ動く…変わりゆく社会の裏で必死に生き残ろうと足掻く男たちの熾烈な攻防を力強く描く、巨匠の最新作。
ハロウィーンの夜、妻への不信と愛への渇望に引き裂かれた男の惨劇を描く「十月のゲーム」、ある夜、火星に暮らす人びとが天空に浮かぶ地球に見たものは…「休日」、所有者の願望をどんなことでもかなえてしまう不思議な機械を手にした男の驚くべき顛末「ドゥーダット」など、SF界きっての目利き伊藤典夫が、ブラッドベリの初期作品群から珠玉の10篇を厳選!甘美で冷たい詩情漂う名品の数々を、どうぞご堪能あれ!
卑猥な宝石に恋する少女趣味ファッション店員、美少年の生徒に慕われる幼児体型の養護教諭、アイドルの夫の帰りを待つ幼妻、可愛い恋人がありながら不倫するSM女子、優しく賢く美しい叔父様に引き取られた少女、「眠り姫」と綽名される女子大生…薄い胸、華奢な四肢、可憐な顔立ちで周囲の欲望を絡めとる少女たち。その刹那のきらめきを閉じ込めた異端にして背徳の恋愛短篇集。R-18文学賞受賞作家が描く愛の毒6篇。
一人の元スパイが心臓発作で死んだ。その死に疑惑を抱く者はいない…ジャクソン・ラム以外は。スパイは死ぬまでスパイだ。スパイが死んだなら、そこには必ず何かがあるはずなのだ。はたせるかな男はメッセージを遺していた。ただ一語“蝉”-それは旧ソ連の幻のスパイにかかわる暗号名だった!ラム率いる“泥沼の家”の落第スパイたちが、動き出す。『窓際のスパイ』に続く会心の痛快作。英国推理作家規会賞ゴールドダガー賞受賞!
私立探偵リュウ・アーチャーは怪しげな人物からの依頼で、失踪した女を捜しはじめた。ほどなくその女が喉を切り裂かれて殺されているのを発見する。現場には富豪の青年が消息を絶ったことを報じる新聞記事が残されていた。二つの事件に関連はあるのか?全容を解明すべく立ち上がったアーチャーの行く先には恐ろしい暗黒が待ち受けていた…。錯綜する人間の愛憎から浮かび上がる衝撃の結末。巨匠の初期代表作、新訳版。
ひとと上手くつきあえない15歳のクリストファーは、近所の犬が殺されているところに出くわす。シャーロック・ホームズが大好きな彼は、探偵となって犯人を探しだすまでを、一冊の本にまとめようと決める。勇気を出して聞きこみをつづけ、得意の物理と数学、そしてたぐいまれな記憶力で事件の核心へと迫っていくクリストファーだが…冒険を通じて成長する少年の姿が多くの共感を呼び、全世界で舞台化された感動の物語。
時は江戸時代中期。大坂の生國魂神社の境内には、芝居小屋や見世物小屋が軒を連ね、多種多様な芸能が行われていた。笑話の道を志した米沢彦八は、役者の身振りや声色を真似る「仕方物真似」、滑稽話の「軽口噺」などが評判となり、天下一の笑話の名人と呼ばれ、笑いを大衆のものとした。彦八は何故、笑いを志し、極めようとしたのか?そこには幼き頃から心に秘めた、ある少女への思いがあったー。
花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。
武田家滅亡前夜、甲州をかろうじて逃れた美貌の姫君は、凛然と生きた。信玄の五女として生まれた松姫は、若き日に織田信忠と婚約。長じてはその織田軍に追われて八王子へ移り、将軍家の若君の出産に立ち会う。その数奇な運命を描いた傑作歴史小説。