2016年6月5日発売
父の経営する小さな会社で事務員として働くライラは、会社がギリシア人の大富豪に買収されたと聞いて驚いた。バスティエン・ジコス!まさかこんな形で再会するなんて。2年前、ライラはプレイボーイと噂の彼から誘惑されたが、きっぱりと拒絶した。愛のない相手と遊びで関係を持つなど、ライラには考えられなかったのだ。ところが今、復讐心に燃えるバスティエンは、会社の再建と引き替えに彼女に愛人になるよう迫ってきた。父を救うにはこの身を差しだすしかない…ライラは心を決めた。
婚約式の翌日、アマヤは婚約者の前から黙って姿を消した。兄の決めた政略結婚に一旦は同意したが、やはり間違いだった。婚約者であるシーク、カヴィアンはハーレムを持ち、そこに大勢の女性を囲っているとの噂を耳にしてしまったのだ。そんな人と結婚したら、わたしも母のようになってしまうわ。父の愛を得られず、心を病んだ母のように。半年後、居場所を突きとめられたアマヤは強引に連れ戻され、待ち受けていたカヴィアンから耳を疑うような言葉を投げられる。「さて、まずは服を脱いでもらおうか」
光溢れるギリシアのサントリーニ島で休暇を過ごしたセリーナは、イギリスに帰って間もなく、妊娠に気づいた。子供の父親は、島で出会ってすぐに恋に落ちた漁師のニコスだ。ところが、彼に真実を告げようとふたたび島を訪れたとき、セリーナは驚くべき事実を知るー嘘でしょう?彼がギリシア屈指の海運王だったなんて!しかも再会したニコスはまるで別人のように冷たく、自分の後継者を婚外子にはさせないと厳しく言い放つ。まるで取引のように結婚を提案する彼に、セリーナは凍りついた。
ロクサーヌは母親を早くに亡くし、父親と乳母に育てられた。しつけは厳格で、ふたりの意に背くことは決して許されなかった。ある日、パーティに出かけたロクサーヌは視線を感じておののく。漆黒の髪に輝く黒い瞳。鷲を思わせるような威圧感。それがメキシコ人の大富豪フアンとの出会いだった。彼からディナーの誘いを受け、屋敷を訪れたロクサーヌは、すぐに後悔した。フアンは彼女を屋敷に閉じこめてしまったのだ。一夜を過ごした既成事実を作りあげてから、ロクサーヌの父に結婚を願い出るという彼の企みを聞かされた彼女は…。
メルボルンの小児病院で働くことになった医師のルシンダは、周囲になかなか打ち解けられずにいた。そんな中、ただ一人、彼女の目と心を奪ったのは麻酔医のセブだった。男らしく魅力的な彼は病を患う5歳の息子を独りで育てていて、ルシンダが彼の息子を手術により救ったことで、二人は急接近する。やがて出張先で一線を越えて恋人関係になるが、ほどなくセブの心に迷いが生じているのを察した彼女は、わたしは継母には向かないと嘘をつき、さよならを告げた。その後に、予期せぬ奇跡がわが身におこるとも知らず…。
女手ひとつで3歳の息子を育てているアリソンは、息子の病気が少しでもよくなればと、都会を離れることに決めた。だが療養先では思うような仕事が見つからず途方に暮れる。そんなとき、4年前に別れた夫のダークが目の前に現れた!出会って1カ月で結婚したものの、彼は一度も愛情を示してくれず、片思いに苦しんだアリソンはとうとう家を飛び出したのだったーおなかに彼の子を宿していることを告げないまま。今、息子の存在を知り、ダークは猛然と彼女を脅しにかかった。「我が館に住みこんで女主人として働け。さもなければ…この場で息子を奪い取り、きみを地獄送りにしてやる!」
ある日、ロザラム公爵グリフィンは馬車で領地へ帰る道中、突然飛び出してきたネグリジェ姿の娘をはねてしまった。泥だらけで地面に倒れた彼女は意識を失っていたため、やむなく公爵邸に連れ帰って介抱することにする。一方、眠りから覚めた娘はいっさいの記憶がないことに戸惑った。このたくましくて美しい男性は誰…いいえ、それより私は誰?「君の名は?」そう尋ねられて答えに窮していると、公爵と名乗る彼に、美しき女性を意味する“ベラ”と名づけられた。思わず胸を高鳴らせるベラだったが、鏡を見てすぐに自戒したーこんなみすぼらしい私を、公爵様が本気で美しいと思うはずがないわ!
愛なき結婚ーこれがわたしの宿命なのだろうか。反旗を翻したスコットランド王の軍により、ローンの城は陥落。父は城を追われ、ララと弟妹は敵の捕虜となった。スコットランド王の腹心の部下セバスチャンが、眼光鋭くララに迫る。花嫁になれ、さもなくば死を選べ、と。敵に身を捧げるのは屈辱だが、結婚を拒めば弟妹の命まで奪われてしまう。ララは敵の支配する城で、囚われの花嫁となるほかなかった。その夜、従順な新妻を演ずるべく、ララはベッドに身を横たえ、そして、待った。夫を欺こうという企みなどおくびにも出さず。
エミリーは体の震えを抑え、紺碧の海を臨むペントハウスの主を訪ねた。新しい命を授かったと、セクシーな一夜の恋人レイフに伝えるために。父親の名前も知らずに育つ寂しさを、お腹の子には味わわせたくない。富豪一族の長男である彼のもう一つの名は、ラファエル・モントロ四世。彼は、美しい地中海の島国アルマの王位継承者なのだ。そんな彼としがないバーテンダーの私に未来があるはずもないけれど…。妊娠を告げたエミリーの耳に、レイフの言葉が虚ろに響くー「王位を捨てることはできない」だが、気づくと彼女はレイフに求められるまま激しく情熱を交わしていた。なんて愚かな私。逃げるように部屋を出たエミリーだったが…?!
エレナが働くPR会社に、前例のない大きな仕事が舞いこんだ。依頼人はー大手航空会社のCEO、アレックス・ラッシュ!その名を聞いた瞬間、彼女の心は不安と高揚に襲われた。かつてエレナは、彼の魅惑的な青い瞳に惹かれる気持ちに蓋をしたのだ。アレックスには、亡き妹が想いを寄せていたから。たった一度情熱に身を任せてしまった、あの夜のことは忘れたいのに…。いっぽう、彼は不敵な微笑を浮かべ、自信たっぷりに言い放った。「きみが担当にならないなら、この取引はなしだ」エレナはやむなく、彼の待つリゾート行きの自家用ジェットに乗りこんだ。高鳴る胸を必死で抑え、最愛の赤ん坊を抱いて。
あと5年。それがマリに残された時間だった。宣告を受けた彼女は喧噪のニューヨークを離れ、“その日”を待ちながら、一人静かに暮らしていた。そんな6月のある朝、彼女の庭を奇妙な影が横切る。気球だわ、すごい!息を切らして追いついたマリの前に、サングラスの似合う、身なりのよい紳士が降り立った。彼はアンガス・オニール。ニューヨークの実業家だ。裏手の土地を買ったという彼は、マリの新しい隣人になった。孤独を求めて都会を離れたはずなのに、二人は急速に惹かれ合う。だがマリは彼のプロポーズを拒み続けるー絶望の想いで。
2年前の恐ろしい事故で、サラは婚約者を、兄は妻を亡くした。車椅子になった兄と、兄夫婦の幼い娘の世話をすることだけが、以来サラにとってただひとつの生き甲斐になっている。それなのに、兄が再婚するという。事故後転居した先の隣人と。その女性はたしかにすばらしい。だが彼女の兄ジョナスは…。彼はハンサムで、尊大で、サラへの興味を隠しもしない。サラは初めて会ったときから反感を覚えていたが、そんな彼にどうしようもなく惹かれてしまう自分もいやだった。ついにジョナスの誘惑に屈したとき、初めてだったサラは、屈辱と甘い悦びに引き裂かれ、叫んだ。亡き婚約者の名前を。
ジュリーは仕事の依頼を受け、ローマの地に降り立った。ここは8年前、想いを残したまま別れた恋人リコ・フォルツァの故郷。あの、めくるめくような幸せな日々を忘れたことはない。彼との唯一の絆であるかわいい息子、ゲイリーがいるから。貧しかったジュリーは、大富豪であるリコの祖父に脅され、別れの手紙だけを置いて彼の前から姿を消したのだった。その祖父亡き今、愛しいリコと再会することもあるかもしれない…はかない望みはしかし、予想だにしないかたちで叶えられた。ジュリーを雇ったのは、ほかならぬリコ本人だったのだ!彼はまるで別人のように、憎しみを込めてジュリーを見つめ…。