2016年6月発売
明治五年初冬、ざんぎり頭で妻を伴い、浅草蔵前の裏長屋に身を寄せた男がいた。新選組最後の隊長・相馬主殿が、流刑から赦免されてやってきたのだ。しかし文明開化の東京には、相馬に復讐を企む男が待っていたー。(表題作)その他、龍馬を斬ったとされる今井信郎のその後と暗殺の謎に迫る「近江屋に来た男」等、歴史の闇に埋もれた男たちに光を当てた珠玉の七編。
「昭和大衆文壇の父」と呼ばれる長谷川伸が主宰した小説勉強会「新鷹会」。会での恩師・長谷川との対話はまさに一期一会の真剣勝負。そこから村上元三、池波正太郎など数多くの人気作家が生まれてきた。平岩弓枝の監修による本書には同会作家による九篇を収録。武士や職人、料理屋の娘など、出会いと別れの一瞬を生きる者たちの一途な想いが胸に沁みる傑作時代小説集!
自らの藩が取り潰しとなり浪人となった塙十四郎。生計を立てるのに苦労する十四郎は、ある日、襲われていた元幕閣の大物を助けたことをきっかけに、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に雇われる。さまざまな悩みや問題を抱えて駆けこんでくる哀しき女たちを救うため、十四郎と橘屋の女将・お登勢たちが奔走する。著者の代表シリーズが光文社文庫に初登場!
縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」に雇われた元築山藩藩士の塙十四郎。ある日、斬られようとしていた浪人を救うが、浪人は十四郎のかつての許嫁雪乃の夫だった。仇を討たんと藩を出て江戸に出てきたかつての許嫁とその夫。しかし、生活苦から身を落とした雪乃に悪の手が迫る。はたして十四郎は許嫁を救えるのか。悲喜こもごものドラマが詰まったシリーズ第二弾。
ある二人の居場所を突き止めるよう命じられたマリエル。その二人さえ見つけられれば、弟のジャックを返してもらえるうえ、自分たちは自由の身になれる。マリエルとジャックは両親亡きあと、スパイ、暗殺者、売春婦の元締めであるアーロンのもとに身を寄せざるを得なかった。そこでマリエルは、身分の高い者たちから秘密を聞き出すためのスパイとして教育されたのだ。彼女が最後の仕事を遂行するには、スコットランドから来た族長に取り入り、彼とともにスコットランドへと行く必要があってー。
ジャングルで、オオカミに育てられた人間の少年モーグリ。クマや黒ヒョウ、大蛇らと交流し、ジャングルの掟を教えられる一方で、人間を敵視する大トラや、獰猛な赤犬の群れとのはげしい対決をくりひろげていく。人間社会の縮図のような動物社会の中で、少年がさまざまな冒険を経て成長していく姿を描く名作が新訳で蘇る。
この頃都で評判の「蝦蟇法師」がいた。犬ほどの大きさの蝦蟇をそばにおき、それが念仏を唱えて失せ物の在りかを当てる。ところが藤原景之の仏間から消えた黄金の観音菩薩の行方は分からないという。不審に思った晴明と博雅は(「蝦蟇念仏」)。秋に花咲く桜の木、天空で笛吹く博雅などいよいよ冴えわたる美しさ、面白さ、至福の十篇。
安倍晴明と源博雅のコンビが平安の闇を祓い続けて夢枕作品は百を越えた。映画、歌舞伎、ドラマ、音楽、漫画と越境を繰り返し「陰陽師もの」という一大ジャンルを築く元となった小説・陰陽師シリーズの磁力の源と謎に、インタビュー、対談、座談会、エッセイ、登場人物紹介、全話解説等あらゆる角度から迫ったファン必携の一冊。
91歳の耕造は妻に先立たれ、69歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日耕造が倒れ、小夜子は結婚相談所の柏木と結託して早々に耕造の預金を引き出す。さらに公正証書遺言を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると耕造の娘たちに宣言したー。高齢の資産家男性を狙う“後妻業”を描き、世間を震撼させた超問題作。
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。その行方を追って旅に出た日嗣の御子たる若宮と、彼に仕える雪哉は、最北の地で村人たちを襲い、喰らい尽くした大猿を発見する。生存者は、小梅と名乗る少女ただ一人ー。八咫烏シリーズの第三弾。
スクランブル飛行中の自衛隊機TF-1が墜落。原因はパイロットの操縦ミスとされたが、この機を開発した四星工業の技術者たちは腑に落ちないものを感じ、独自に調査を始める。そして半年後、TF-1が再び墜落した。日本の国防を揺るがす真の脅威とはなにか?松本清張賞受賞の傑作航空サスペンス!
御鑓拝借に始まった騒動から年が明け、文化十五年。赤目小籐次と、肥前鍋島本藩を含む四家が組織した追腹組の死闘は続いていた。それに追い打ちをかけるように、江戸の分限者たちが小籐次の首に千両の褒賞をだし、剣客を選んで順に小籐次を襲わせるという噂が流れる。事の真偽は如何に?小籐次の危難が続くシリーズ第4弾!
夫に先立たれた女の胸に去来する、若き日に泣く泣く別れた男の面影(表題作)。凶作続きで餓死者も出ている甲州の村。百姓代の決断は(「犬目の兵助」)。異国船の来襲に、愛するものを残し長崎警護へと向かう下級武士の悲話(「捨足軽」)。晩年の五篇と幻の直木賞受賞第一作。全作書籍未収録の文庫オリジナル。
時は幕末。何をやってもうまくいかない南町奉行所の若手同心・澤村文吾は幼馴染の静馬と再会する。静馬は剣術道場を始めると語るが、その支援者は任侠の顔役・鶴の伊右衛門だったー。文吾の身を案じる親分猫・マサムネも登場してますます賑やかな書き下ろしシリーズの第四弾。おネエ同心・中村様が主役のおまけも収録。
「秋色」とは、「心の中にある秋景色のこと」である。世界的に著名な建築家をめぐる三人の女性。京都の名家出身で二廻り年下の妻、三十年来の愛人である銀座の高級クラブのママと大学生になるその娘。シドニー、麻布、銀座、奈良、京都、伊豆山と舞台を移し、華やかにそして哀しく展開される、三人三様の愛のかたちと駆け引き。
有名建築家・今野良衛は、京都の名家出身の菊子と結婚、上流階級の仲間入りを果たすも、家では暴君であった。今野にはすべてを打ち明けている三十年来の愛人・寺田奈津江がいた。貞淑な妻・菊子だが、シドニー行きの機内で出会った女子大講師・椿井新八郎の人柄に惹かれていく。その椿井を慕うのが、奈津江の娘・世紀であった。
出目で太鼓腹、そして人をつつみこむ明るい磊落ー。乱世において争いを好まず、あえて負けを選ぶことで真の勝ちを得ようともした小国・宋の名宰相、華元。詐術と無縁のまま名君・文公を助け、ついには大国・晋と楚の和睦を実現させた男の奇蹟の生涯をさわやかに描いた中国古代王朝譚。司馬遼太郎賞受賞作。
徳弥は父の急逝で若くして住職となった合コン好きの不良坊主。彼の元に、小六のとき一瞬だけ同級生だったフリーターの一時が訪ねてきた。父の遺骨を引き取るためだ。再会した二人は、かつてのマドンナ・美和の自殺にある男が絡んでいたことを知り、仕返しを企てるが…。爽快でちょっと泣ける男の純情物語。
ルポライターの私は、取材のために全国を訪ね歩いていた。どこへも辿り着かない通勤用の観覧車、ただひたすらに玉を磨く伝統産業、すでに海底に沈んだ町の商店街組合…。そこで私が出会ったのは、忘れ去られる運命にあるものを、次に受け継ぐために生きる人人だった。今、この瞬間にも、日常から消えつつある風景を描いた、6つの記憶の物語。