2016年8月31日発売
その里は地図に載っていないという。里のお屋敷には燃えるような躑躅の花が植えられており、どんな病でも治してしまうという“蟲宿しの一族”の末裔で強大な力を得た御先が住んでいた。御先は心から慕ってくる雅親を突き放し、里を出て夜の店で働いていた四と出会う。そして“事件”は起こった…。現代の都会の闇に紛れ込み、不老不死の一族が、時を超えて愛しい人を求める、禍々しくも哀しい現代奇譚。
大阪の工場ですべてを技術開発に捧げた音三郎は、製品化という大きなチャンスを手にする。だが、それは無惨にも打ち砕かれてしまう。これだけ努力しているのに、自分はまだ何も成し遂げていない。自分に学があれば違ったのか。日に日に強くなる音三郎の焦り。新たな可能性を求めて東京へ移った彼は、無線機関発の分野でめきめきと頭角をあらわしていく。そんなある日、かつてのライバルの成功を耳にしてしまいー!?
とある弁護士事務所に勤める花織は、先生に寄せられる依頼を盗み聞きしては、“おしゃべりする猫”のスコティと噂話に花を咲かせていた。ある日、愛らしく気高くちょっと生意気なスコティが、推理合戦を仕掛けてくる。「もしいま先生が殺されて、金庫の中身が盗まれたら、犯人は誰だと思う?」。金庫に入っているのは、5カラットのダイヤ、資産家の遺言書、失踪人の詫び状、12通の不渡り手形。怪しい依頼人たちを容疑者に、あれこれと妄想を膨らますふたり(1人と1匹)だったが、なぜか事件が本当に起きてしまいー。現実の事件と、謎解きに興じる“しゃべる猫”の真実は?ミステリ界注目の気鋭による、猫愛あふれる本格推理。
時は明治。徳島の貧しい葉煙草農家に生まれた少年・音三郎の運命を変えたのは、電気との出会いだった。朝から晩まで一家総出で働けども、食べられるのは麦飯だけ。暮らし向きがよくなる兆しはいっこうにない。機械の力を借りれば、この重労働が軽減されるはず。みなの暮らしを楽にしたいー。「電気は必ず世を変える」という確信を胸に、少年は大阪へ渡る決心をする。
日々野は世界初となる人工蜘蛛糸の量産化研究に邁進していた。しかしある日、大学時代の友人・片桐が量産化に成功する。片桐は大学在学中、サイバーアタックにより研究データを消失した過去をもっていた。現代、ハッカーの魔の手が再び彼らに伸びる。乱歩賞作家会心のハッキングサスペンス!
高校三年生の春、草薙出雲は、周囲から「猛獣」と恐れられる新入生・周防尊と出会う。二人の前に姿を現すようになった中学生の十束多々良を加え、三人は草薙の叔父が経営する鎮目町のバーHOMRAに集まるようになる。次第にHOMRAは、彼らと彼らを慕う若者たちの拠点となっていった。だが、“赤の王”に憧れる闇山光葉の登場によって、鎮目町の状況は一変する。仲間が次々と危害を加えられ、周防はついに闇山の挑戦を受けるー。「猛獣ミコト」が檻を突き破ったとき、頭上に大剣が出現する!
誰にも書けない言葉を、書いてきた。絶唱「骨餓身峠死人葛」、最後の小説「戦争童話集沖縄篇 石のラジオ」、「火垂るの墓」の原点「プレイボーイの子守唄」、さらに田中角栄への追悼文や、坪内祐三との対談等を附す。かくもうさんくさく、かくも優しき反逆者が遺した逸品集。
J・Jの奇妙な挑戦/二代目フゴゥ刑事/皇帝の新しい服/ヒルベルト・ホテルの殺人…。パロディありクイズあり迷路あり。レーモン・クノーに触発されて、古今東西の名作エッセンスに彩られたミステリ万華鏡。
天文学者ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開いていた。それほど天文に興味はないものの、家庭訪問医の加藤盤も参加の申し込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり抜け招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎回驚くべき倍率になるのには、ある理由があった。滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ。犯人は、この六人のなかにいる!
書簡体形式などを用いた独自の文体で読者を幻惑する、怪奇探偵小説の巨匠・夢野久作。その入門にふさわしい四編を精選した、傑作集を贈る。ロシア革命直後の浦塩で語られる数奇な話「死後の恋」。虚言癖の少女、命懸けの恋に落ちた少女、復讐に身を焦がす少女の三人を主人公にした「少女地獄」ほか。不朽の大作『ドグラ・マグラ』の著者の真骨頂を示す、ベスト・オブ・ベスト!
うぶめに気に入られ、正式に妖怪の子預かり屋の代理となった弥助。養い親の千弥の助けも借り、次々と持ちこまれる妖怪たちの問題を解決していく。そんな折、妖怪の子供達が行方不明になるという事件が発生。いなくなった子妖怪を捜しに浅草に行った弥助は、そこで同じ年頃の娘に出会った。少年と妖怪との交流を描いた、ちょっと怖くて心温まる、お江戸妖怪ファンタジー第二弾。