2016年9月5日発売
東京のベッドタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登と校正者の妻・貴代美。二人は、高一の息子・規士と中三の娘・雅と共に、家族四人平和に暮らしていた。規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになったが、二人は特別な注意を払っていなかった。そんな夏休みが明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、連絡する途絶えてしまった。心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、二人は胸騒ぎを覚える。行方不明は三人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は二人。息子は犯人なのか、それとも…。息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。揺れ動く父と母の思いー。
昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲いー。山あり谷あり涙あり。昭和〜平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編!
事故物件に住み部屋をロンダリング(浄化)する人材を斡旋する相場不動産。ある時から、なぜかその関係者が次々と相場不動産を離れていく。背後に妨害工作の動きを察知し、調査を始めた仙道は、とある事実を突き止める。相場と共に、巨大勢力と戦おうと立ち上がった仙道が決断したこととは…。
辣腕実業家サントスのオフィスを訪ねたジョージナは、開口一番に言った。「ビジネスとして私と結婚してほしいの」初対面の相手にこんな大胆な提案をするなんて、人生初の快挙だ。サントスの弟と結婚の約束をしているジョージナの妹の話では、彼ら兄弟の亡父の遺言で、家業を継承するのは先に結婚した者のみ。サントスが弟の結婚に猛反対しているのは、そのせいだという。大切な妹のため、姉として便宜結婚を申し出るのは自然なことよ。思いつめた様子のジョージナを品定めするように眺めていた彼が、不敵な笑みを返した。「僕に必要なのは偽ではない“真の妻”だ」
父は行方不明、貯金も底をつき、さらに火事に見舞われて、サブリナはついに代々受け継いできた屋敷の売却を決意した。そんな折、意外な人物が屋敷を訪ねてきた。クルス・デルガド!かつて父に雇われていた貧しい青年は、その後仕事で成功を収め、今では大富豪として名を馳せている。10年前、二人は恋人同士だった。だがサブリナが妊娠し、その後流産したことがきっかけで、いつしか心は離れていった。いまサブリナの窮状を聞き、クルスはすぐに資金援助を申し出た。彼女が半年間の愛人契約に従うなら、という非情な条件つきで。
ジュリアス・レーヴェンズデールは堅実な人生を歩んできた。世間の耳目を集める名門一族の御曹司で会社経営もこなす傍ら、本来の天体物理学者としての研究にも余念がない。だがそんな多忙ながらも優雅な生活は、ある日を境に一変する。家政婦見習いのホリーが来てからだ。いや、見習いと呼べるのか?彼女は「家事は大嫌い」と言い放ってジュリアスを唖然とさせ、家政婦の手伝いもせずに、勝手に庭のプールで泳ぐ始末なのだ。このまま見過ごしてはホリーのためにもならない。怒った彼は彼女に迫るが、それが予想外の反応を引き起こし…。
ジュリアは目覚めると病院にいた。事故に遭い昏睡していたのだ。ベッドの傍らには、見覚えのないハンサムな男性が立っている。彼はロスと名乗り、君の夫だと告げる。ようやくわかったのは、彼と出会って恋に落ち、結婚したこの3カ月の記憶を失ったこと。結婚するほど深く愛していたはずの人を、なぜ思い出せないの?記憶から消したいほどつらい出来事でもあったのかしら…。肝心なことを何も語らないロスに、ジュリアは苦悩を深めていく。ある日、偶然話に出たルーという女性の名に動揺する彼を見て、彼女は心を決めた。記憶も人生も、すべてかならず取り戻すわ。
家事や雑用を代行するクララの前に、ある日、顧客の兄ラフが現れた。ろくに手がかりも残さずに姿を消した妹を捜す彼は、「妹の居場所を教えれば1万ポンド払う」と傲慢に言い放った。大手老舗百貨店の副社長であるラフは容姿端麗でセクシーだが、この手の男性にひどい目に遭わされたことがあるクララには、絶対に避けるべき存在だとわかっていた。しかしラフは彼女が家事を請け負う彼の妹の家に滞在するだけでなく、耳を疑うような契約を持ちかけてきたー心労で倒れた祖父を安心させるために、クララに彼の恋人役を演じる“恋人代行”をしてほしいというのだ!
富める者と貧しき者ー線路を境に、マーゴの住む町は二分されていた。貧しい地区に生まれたマーゴは少女のころから裕福な一族出身のジョーダン・メリックに心ひそかに憧れていた。けれども17歳のとき、その淡い恋心は無残にも打ち砕かれた。仕立ての仕事をする母の使いでメリック邸に注文の品を届けに行くと、応対に出たジョーダンの口から、ひどく侮辱的な言葉が放たれたのだ。「町の向こう側の子か。御用聞き用の出入口を使うべきだ」以来、マーゴは町の富裕層を嫌悪し、かかわり合いを避けてきた。ところがそれから7年後、彼女が看護師として働く病院に、上級外科医としてジョーダンが新たに着任することになるとは!
上流階級の生まれのルーシーは極貧生活を強いられている。母が亡くなる前から賭博に手を出した父があちこちで借金を作り、そのたびに夜逃げを繰り返してきたから。父が突然姿を消した今、路上でバイオリンを弾いて恵んでもらうお金だけが唯一の収入だ。ある日、ルーシーの住まいに背の高いハンサムな紳士が現れた。わたしをこんな生活から連れ出してくれる、夢の人…?だがルーシーの期待も空しく、その紳士ーキャンボーン伯爵は険しい顔で彼女の父親を出せと言った。莫大な借金があるというのだ。父の居所にまったく心当たりがないとルーシーが震えながら告げると、伯爵は灰色の目を細めて、残酷な提案をした。
伯爵令嬢スザンナは、世間知らずが災いしてロンドン社交界から締め出された。もはや良縁に恵まれる可能性は絶望的だと激怒する父に連れられ、スコットランドに滞在していたある日のことー颯爽とした逞しい体つきのジェームズと名乗る男爵が訪ねてくる。近隣の領主だという彼が、伯爵の暗殺を企てる輩の存在を忠告すると、彼に惚れ込んだ伯爵は、初対面の彼に娘と結婚してくれと申し出た。驚くことに男爵はあっさり承諾。怖じ気づいたスザンナはある条件を出す。“夫婦がベッドを共にするのは3年に1度だけ”こうして二人の白い結婚は幕を開けたが…?!
少女時代に、母が石油王の屋敷で住み込みのメイドに雇われて以来、カタリーナはセクシーでハンサムな御曹司ウィルに夢中。だが、願いがかなってデートをするまでになったのもつかのま、ウィルの残酷な言葉とともに、幸福な時間は終わりを告げた。「きみとのことはすべて間違いだった」ばかな私。大富豪の彼とは身分が違うのに…。それから4年。傷心を抱え働く彼女の前にCEOとなったウィルが現れた。官能的な笑みを向けられた瞬間、忘れたはずの想いはあふれだし、強引にキスされただけで彼にすべてを委ねたくなってしまう。雇い主に恋心を抱くなどもってのほかー母の忠告を忘れてはだめよ…。
政略結婚を目前に控え、シェルダーナを訪れたオリヴィアは不安だった。父の決めた未来の花婿がどんな人か、ほとんど知らないのだ。プリンス・ガブリエル・アレッサンドロー礼儀正しく親切な婚約者だけど、私を愛してはくれないわよね。しかし、ガブリエルは気高く麗しい金色の瞳でオリヴィアを見つめると、宮殿の庭へ連れ出し、優しく情熱的なキスをしてきた。この胸の高鳴りが、恋なのかしら。やがてオリヴィアは彼に純潔を捧げ、情熱の甘い波に身を任せる。ところが、突然の腹痛が彼女を襲った。まさか、過去の病気が再発したの?どうしよう。世継ぎを産めなければ、彼に見放されてしまうのに…。
ローラがトムと出会ったのは、ロンドンの雑踏に立つ、古ぼけた骨董品店の前だった。ウインドーの中の、銀の小箱に見とれていた彼女に、トムが声をかけたのだ。以来、共通の友人を通して顔を合わせるたび、トムが向けてくるまなざしに、ローラの胸は甘く高鳴る。だが彼は、お金と時間と女性をもてあました15歳も年上の放蕩者。長年別居している妻がいるのにフランス人の美しい恋人を連れている。周りが囁くそんな噂に苦しんだローラは、彼への想いを断とうとした。それなのに、トムはあの小箱を彼女に贈り、激しく唇を奪った。噂を盾にこの愛を拒むことなどできないと、刻印するかのように。
列車で向かいに座った女性を見て、セシリーは、似ていると思った。高級な毛皮のコートを着て、身なりこそ違うけれど、目鼻立ちも、すみれ色の瞳も、ライトブラウンの髪も、わたしと同じ。-とその時、列車が轟音とともに急ブレーキをかけ、激しく揺れた。病院で目を覚ました彼女は、記憶を失っていた。彼女の名前は“ジェシカ”といい、亡くなった父親の遺産相続のため、町に向かう途中の事故だったと、亡父の従弟ジェイムズが教えてくれた。ジェイムズの屋敷で静養することになったが、なにか腑に落ちない。スーツケースにあった服はどれも派手な高級品で好みではないし、ジェイムズがわたしを訝しむようなまなざしで見るのは、なぜ…?
ロウィーナは恋愛を避け、仕事ひとすじに生きてきた。そんな彼女が、予期せぬ妊娠をした。相手はクイン・タイラー。著名な形成外科医としてその名を世界に轟かせている彼は、ロウィーナの大学時代の友人だった。3カ月前、偶然再会するまでは。クインがあまりにもゴージャスな大人の男性に変貌していて、ふだんは男性を避けているのに、つい一夜の情熱に溺れてしまった。いかにもプレイボーイな彼にとっては何でもないことに違いない。とぼとぼとオフィスに向かうロウィーナは、はっと顔を上げた。クインが目の前に立ちはだかっている。どうして彼がここに?彼は怒りに燃えた目で、まっすぐ彼女を睨みつけていたー。