2016年発売
十代の終わりに、ストーカーと化した元恋人に刺された過去を持つカナ。29歳のいま、裕福な年上の夫と幼い息子、仕事での充足も手にし、満たされた日々を送っていた。そこに、アメリカから姉一家が帰国。未成年の甥から、烈しい思いを寄せられる。危うさを秘めた甥との破滅的な関係は、彼らと、彼らを取り巻く人々をどこに運ぶのか。-空虚への抗いと、その果てにある一筋の希望を描く渾身の長篇小説。
安住の地を求めて旅に出たアマガエルのソクラテスとロベルトは、平和で豊かな国「ナパージュ」にたどり着く。そこでは心優しいツチガエルたちが、奇妙な戒律を守り穏やかに暮らしていた。ある事件が起こるまではー。平和とは何か。愚かなのは誰か。大衆社会の本質を衝いた、寓話的「警世の書」。
一流私大の法学部に在籍する田嶋春は、曲がったことが大嫌いで、ルールを守らない人間のことは許せない。そのうえ空気も、まったく読まず、もちろん、学内に友達はひとりもいない。嫌われているともいえるし、避けられているともいえるしー。だけど、彼女はすごいんです。まったくめげない!ゴーイングマイウェイ!恋にサークル、観覧車ー大学生活の断片で芽生えた謎の答えは、どれも清冽で切なくてー田嶋春が贈る青春ミステリは、癖になること間違いなし!
舞台は1991年夏、猛暑のニューヨーク。亡命ロシア人で画家のアーリクの重病の床に集まる五人の女たちと友人たち。妻として、元恋人として、愛人として、友だちとして、彼らはアーリクとともに歩んだ、喜びと悲しみに満ち、決して平坦ではなかった人生の道のりを追想する。ウォッカを飲み、テレビで報道される祖国のクーデターの様子を観ながら。そして、皆に渡されたアーリクの最期の贈り物が、生きることに疲れた皆の虚無感を埋めていく…。不思議な祝祭感と幸福感に包まれる中篇小説。
80年代ー僕も時代も思春期だった。アメリカとソビエトは冷戦状態にあり、ドイツには壁があった。僕も時代も緊張していたし、成熟には程遠かった。そんな時に出逢ったのが、君だった。君から教えてもらったのは、僕になにが欠けているのかということだった。君が求めているものをさしだすために、僕がなにをすべきか、僕はようやく考えることができたんだ。その時、世界が僕をふりむいた。青い春が散り、僕は君の手をとって歩きはじめる。遠い記憶をたどりながら語られる、昨日みた夢のような甘く切ない恋愛小説。
震災後の苦難に満ちた日々の中で、珠玉の小説が生まれた…地震・津波の記憶が鮮烈に蘇る「蟋蟀」「小太郎の義憤」、原発事故後の放射能や除染を背景にした「アメンボ」「拝み虫」、深い情感にみちた「東天紅」、厳粛さとユーモア、不思議な輝きに包まれる表題作「光の山」。福島在住の僧侶作家が、生と死の現実を凝視しながら描いた祈りと鎮魂の作品集。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
静岡の寸又峡で、地元テレビ局の記者・久保が殺された。彼は記者仲間の伴島に謎の言葉を残していた。次の被害者は、秋田の大曲で資産家老女を殺し指名手配中だった。かつて大曲の通信部にいた伴島は、事件の手掛かりを掴み、秋田へと急行するが、やがて姿を消した。その報せを受け、浅見光彦も現地へ向かった。事件の鍵を握るのは大曲の資産家一族。光彦は事件の謎に迫れるのか。
父親らしき男とともに、なにかを探し求めて鳴子温泉を訪ね歩いていた若い女性。その死体が、一つの川の流れを日本海と太平洋に分かつ分水嶺の傍らで発見された。東京下町の名曲喫茶に勤める彼女には、六年前に殺人事件を起こし、逮捕されるという暗い過去があった。そして、喫茶店の同僚にも魔の手がー十津川警部が分水嶺に見た運命の分かれ道とは?迫真のトラベルミステリー。
虫けら同然の人生で、初めて落ちた本気の恋。それは俺に心からの幸福と、地獄を招いたー。大手外食企業役員と店長が誘拐された。練馬署強行犯係の魚住久江は、一課時代の腐れ縁・金本らと捜査に召集される。だが身代金受渡しは失敗、切断された体の一部が送りつけられる。やがて捜査線上に浮かんだのは、一人の中国人女性。一課復帰を拒み所轄を生きる女刑事が事件の真相を追う!
ふとしたきっかけでメンバー不足の自転車部に入部した正樹。たちまちロードレースの楽しさに目覚め、頭角を現す。しかし、チームの勝利を意識しはじめ、エース櫻井と衝突、中学時代の辛い記憶が蘇る。二度と誰かを傷つけるスポーツはしたくなかったのにー走る喜びに突き動かされ、祈りをペダルにこめる。自分のため、そして、助けられなかったアイツのために。感動の青春長編。
衆議院議員が行方不明になっている伊丹刑事部長にそう告げられた。牛丸真造は与党の実力者である。やがて、大森署管内で運転手の他殺体が発見され、牛丸を誘拐したと警察に入電が。発信地が神奈川県内という理由で、警視庁・神奈川県警に合同捜査が決定。指揮を命じられたのは一介の署長に過ぎぬ竜崎伸也だった。反目する二組織、難航する筋読み。解決の成否は竜崎に委ねられた!
昭和9年春、函館の潜水夫・泊敬介は、時化る海と吹き荒れる風に妙な胸騒ぎを感じていた。予感は的中し猛火が街を襲う。妻子と母を探し歩く敬介だったが。さらに昭和20年の空襲、昭和29年の洞爺丸沈没。立ち直ろうともがく敬介に、運命は非情な仕打ちを繰り返す…。仙台在住の著者が震災から半年後、悩み迷いながら筆をとった、再生と希望の長編小説。
「帝国政府は爾後国民政府を対手とせず」。日本は中国との交渉の道を自ら鎖した。徐州、武漢での作戦を成功させたものの、「事変」は泥沼化の一途を辿るー。敷島太郎は愛人の身体に溺れ、次郎は柳絮のごとく彷徨い続ける。三郎は復讐に身を焦がし、四郎は陰謀の犠牲者を茫然と見つめた。そして、満蒙国家ノモンハンで旧ソ両軍が激突する。大陸に凱歌と悲鳴が轟く。混沌の第六巻。
「お父さんの子どもの頃って、どんな時代だったの?」15歳の娘の問いを機に、父は自分が育ってきた時代の「歴史」を振り返ることに。あの頃、テレビが家庭の中心だった。親たちは「勉強すれば幸せになれる」と教えていた。宇宙や科学に憧れ、明るい未来を信じて全力疾走していた…。そして、父が出した答えとは。明日へ歩み出す子どもたちへ、切なる願いが込められた希望の物語。
かつての恋人の故郷でその不在を想うキャリア・ウーマン。寒い土地への転居を境に狂い出す「じゃぱゆきさん」。整形して若い男と結婚し、離別した娘を従妹として引き取ろうとする母。夫の子を産むと決めた女のもとを訪ねる妻。次々と夫が死ぬ魔性の女。彼女たちはさまざまに熟れていく。女性の心理描写が際立つ短編を精選し、単行本未収録作品を追加したベスト・オブ・ベスト第二弾。
鷹司高校で起きたカンニング事件。剣峰成と太刀杜からんは、疑惑をかけられた少女、時巻暦の調査を開始する。だが、事件を解決したと思ったのも束の間、カンニングの新たな証拠が見つかり、真偽は生徒会裁判“将覧仕合”へと委ねられることに。激突する論理と論理。反転し、眼前で姿を変える真実。そして、伝説の名探偵・金田一が参戦し…。青春×本格ミステリの新機軸、第2弾。
北朝鮮が何の前触れもなく、最新鋭のICBM・銀河3号を日本海に向けて発射し、世界に衝撃が走った。核弾頭の開発が、いよいよ最終段階に達したのかー。折しも、元CIA工作担当官がベトナムのホーチミン市で何者かに殺害され、北朝鮮に関する極秘書類が奪われた。ジャック・ライアン大統領と“ザ・キャンパス”の工作員らが捜査を開始。新たなアジアの危機を回避できるか。
アメリカ海軍艦船“フリーダム”は韓国沖を北進している不審な中型貨物船を発見した。間もなく北朝鮮海域に入ろうとするこの船を、無線で呼び出すも応答はない。停船命令も無視したため、特殊部隊が急襲し、船内から響くべき物を押収したー。一方、米国家情報長官府は、さらなる情報収集のため、極秘作戦を練っていた。その遂行に大統領は、意を決してゴー・サインを出すが…。