2017年5月11日発売
十二歳の忠次たち四人は、長屋の祠をお参りしてから「幽霊が分かる」ように。空き家となったお店で、彼らがかくれんぼをしていると幽霊が「おとじろう」と告げる。するとその店の娘と縁談のあった乙次郎が行方不明に。幽霊の正体は?告げた名にどんな意味が?
売り上げ減少で閉店のピンチにあった堀内百貨店はどうにか危機を脱したものの、依然、低迷が続いていた。事業部長の高橋伝治はデパ地下テコ入れのため、名古屋で大人気のおにぎり屋を出店させようとするが、店主はとことん頑固者。「類友」の高島マーケティング部長、「マドンナ」瑠衣などの協力を得た伝治に秘策はあるのか?
「猫の皿」「品川心中」「時そば」「あたま山」「花見の仇討」「そば清」「粗忽の使者」「らくだ」「田能久」…などなど。名作古典落語をベースに当代一の謎(リドル)マスター山口雅也が描く、愉快痛快奇天烈な江戸噺七篇!
急激に変貌していく戦後日本を背景に新しい感性による現代文学の興隆を牽引し、短い作家活動のうちに数多くの鮮烈な作品を残した山川方夫。その早熟ぶりが同世代の仲間を震撼させた学生時代の作品から、時代を先取りしたモチーフや研ぎ澄まされた文体によってジャンルの枠を超えた才能を開花させた後期作品まで、不慮の事故による早逝が惜しまれる著者の多彩な魅力が凝縮された傑作選。
雨の音、町工場の金属音、窓外を歩く人の足音。無防禦な耳から身内に入り込む音が過去と像を結び、夜半の蜩の声で戦争の恐怖、破壊と解体が噴出する表題作他、男女の濃密なエロスが漂う「除夜」から、空襲に逃げ惑う少年の姿に震災後の今と未来を予感させる「子供の行方」まで。時空の継ぎ目なく現れる心象、全官能で入念に彫琢した文章。齢を重ね、なお革新と深化を続ける古井文学の連作短篇集。
二〇一一年三月一一日、東日本大震災が起きた。余震の続く中、地震の被害は原発の方へも拡がっていく。作家は言葉を失い、そして言葉の力で立ち上がる。戦後の米軍占領期に生まれた混血の孤児たちの人生。隠された暴力と恐怖の記憶。しかし作品は、多くの色彩が交錯し妖しくも美しい…。「世界の終わり」へ向かう現実に引き戻される長篇小説。
演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会ったー。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまにもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。
1984年。13歳だった。夏休みが終わる2日前、ぼくたちの人生はここから大きく狂いはじめたんだ。少年時代は儚く、切なく、きらめいている。台湾が舞台の青春小説
江戸末期の京都。北近江の十一面観音に魅せられた青年、烏は、僧になるため京の都にやってきたが、観音像を彫るために仏の道を捨てる。食うために彼が始めたのは、生身の女のあられもない姿を彫り出すことだった…。
かつて鳥だったころのことが忘れられず、母親と別れてケンジントン公園に住むことになった赤ん坊のピーター。葦笛で音楽を奏でたり、公園内の小さい家での一夜の出来事など、妖精たちや少女メイミーとの出会いと悲しい別れを描いたファンタジーの傑作。挿し絵アーサー・ラッカム。
なんて、きれいでおいしいんだろう。江戸の菓子に魅せられた小萩は、遠戚の日本橋の菓子屋で働き始める。二十一屋ー通称「牡丹堂」は家族と職人二人で営む小さな見世だが、菓子の味は折り紙付きだ。不器用だけれど一生懸命な小萩も次第に仕事を覚えていって…。仕事に恋に、ひたむきに生きる少女の一年を描く、切なくて温かい江戸人情小説。シリーズ第一弾!
中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていたーー。
俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子に顛末を話すうち、その悔しさを晴らすため、俳句甲子園出場を目指すことに。ふたりのもとには、鋭い音感の持ち主の理香や、論理的な弁舌に長けた夏樹らの個性的な生徒が集う。そして、大会の日はやって来た!少女たちのひたむきな情熱と、十七音で多彩な表現を創り出す俳句の魅力に満ちた青春エンタテインメント!
茉祐子は火山の麓で百年以上続く温泉旅館を営んできた。三十代半ばだが、年より若く美しい彼女が深い仲になったのは、新聞の支局員、火山の研究者、新任の教師。時が来れば、彼女の元から去って行く男たちばかりだった。旅先のNYで出会った初老の夫婦の言葉に彼女の凍りついていた心が解きほぐされる表題作など男女の深淵を描く傑作揃いの短編集!
ついにペシャワール城に魔軍が襲いかかる!クバードらの善戦むなしく、魔将軍イルテリシュ率いる数万の魔物たちの猛攻に城は陥落寸前に。そのときー。一方、客将軍としてミスル国に滞在するヒルメスには、国を乗っ取る千載一遇のチャンスが訪れていた。さらに、王都エクバターナの地底では、蛇王ザッハークの眷属が暗躍する!激動のシリーズ第十二弾。
ミステリー文学資料館は、日本の探偵・推理小説の書籍や雑誌を収集保存し、研究者や一般読者の利用に供するために一九九九年四月に開館した。“遺産”ともいえるその膨大なコレクションより、戦前から人気作家として活躍した大下宇陀児と、トリックに執着し続けた楠田匡介のレアな長編二作を選りすぐり、さらには二人の共作も加えた傑作アンソロジー!!
汐崎藩の御刀番頭・左京之介は、対立している水戸藩江戸家老から、京之介の友である水戸藩御刀番頭・神尾兵部の行方がわからなくなったと告げられる。頼みを受け友の行方と水戸藩から奪われた「九字兼定」を捜す京之介の眼前に謎の集団が立ちはだかる。闇同心、影目付…「九字兼定」を狙う者たちとの壮絶な闘いが始まったー。手に汗握る渾身のシリーズ第七弾。
駆け込み寺「慶光寺」の主・万寿院の知人の娘・お結を、京から連れ帰ってきた「橘屋」の用心棒・塙十四郎。お結は目の前で父親が殺され口が利けなくなっていた。江戸でやっと静かな日々が訪れたころ、突然、お結は命を狙われる。それをきっかけに判明した衝撃の過去とはー。(「さくら道」)表題作をはじめ、ひとの温もりに癒される四編を収録。著者の代表シリーズ第十三弾。